医療用具関係の国際ハーモナイゼーションに関する研究

文献情報

文献番号
199900734A
報告書区分
総括
研究課題名
医療用具関係の国際ハーモナイゼーションに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
中村 晃忠(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 飯沼 武(日本医療機器関係団体協議会)
  • 佐々木次雄(国立感染症研究所)
  • 佐藤道夫(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 土屋利江(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 田中憲穂(食品薬品安全センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経済のグローバリゼーションの結果、規制制度や規則・基準の国際調和が強く求められるようになった。医療用具分野も例外ではない。本研究は、医療用具規制の国際調和の促進と国内制度や基準の改訂、あるいは国内基準を国際基準に反映させるための活動を支援することを目的とする。主に、医療用具規制国際整合化会合(GHTF)および国際標準化機構(ISO)の特に横断的基準に関する技術委員会(TCs)に関連したものである。
研究方法
GHTFおよびISO/TCsにおける各分担研究者および協力研究者の活動と調査を支援し、その結果をまとめた。また、これらの活動に必要な基礎的データつくりを行う一方、国際調和に関する諸情報の流通を促進するために、インターネット・ホームページの維持、アップデートを行った。
結果と考察
GHTFおよびISO/TC210について: 医療用具に関する規制の国際的整合は、GHTFで検討が進められている。GHTF/SG1が担当している主な課題は、①医療用具の基本的要件としてのグローバルな共通要求事項(エッセンシャルプリンシプル)、②医療用具の認証のための技術的資料(テクニカルファイル)、である。これらの課題は長年の議論のすえに、ようやくコンセンサスドキュメントとして成案が得られた。また、エッセンシャルプリンシプルの一環として、情報の提供によって製品の安全性および性能を確保する観点から、SG1において「ラベリング要求事項」の最終案が作成された。一方、医療用具規制の国際整合化と国際規格との関係が重要であることから、「国際規格の役割」を示したドキュメントが最終案となった。これらの主要文書を翻訳した。また、ISO/TC210で出版済みのISO 14971-1 医療用具のリスク分析は更に発展し、「医療用具のリスク管理」に統合されつつある。これらを翻訳した。医療用具の承認や市販後調査の国際的な情報流通のためには、統一的な分類と命名が必要になる。そのための国際的システム(GMDM:Global Medical Devices Nomenclature)に協力し、日本の分類などもインプットした。 細胞毒性試験標準材料について: 1997年の英国ヨークにおけるISO/TC194での合意にそって、日本のガイドラインで用いている陽性・陰性標準材料を各国の試験機関で評価実験を行った。日本はそのプロトコールを提示し、標準材料を配布し、データをとりまとめて報告書を作成し、TC194/WG5において報告した。参加国は、日本、アメリカ、ドイツ、フランス、オーストラリア、イギリス、オーストリア、スウェーデンで、参加機関は15機関であった。その結果、日本の細胞毒性試験用標準材料の妥当性が確認された。本年は、標準材料の検定結果をまとめた。 感作性試験の国際ラウンドロビンテスト: 医療用具の生物学的評価試験はISO/TC194で国際調和作業が進められているが、特に感作性試験へのサンプル適用方法(前処理方法)で摩擦が起こっている。この論争に決着をつけるために、日本から強・中・弱感作性の3種類の標準材料によるラウンドロビンテストを提案し、賛同を得たので、そのプロトコルを決定し、サンプルを配布し、現在各国で実験が進行中である。日本の実験室の中間報告によれば、日本のガイドラインの方法の優位性は明らかのようである。 滅菌バリデーションに関するアンケート調査: ISO/TC198で作成した滅菌法および滅菌保証に関する国際規格を日本薬局方の「培地充填試験法」、「最終滅菌法および滅菌指標体」、「最終滅菌医薬品の無菌性保証」に反映し、また、医療用具の「滅菌バリデーション基準
」に反映した。これらに関する医療用具業界の現状をアンケートにより調査した結果、一部に未達成や問題があるものの、概ね良好に実行される方向にあることが分かった。 コンタクトレンズ等:ISO/TC172の現状とコンタクトレンズ、眼内レンズ、コンタクトレンズ・ケアー用品の国際基準づくりの現状を理解した。その結果は、承認基準作りに生かされている。 インプラント用具の国際調和:ISO/TC150における議論を通じて、インプラント用具のトラッキングの基本的な要素である埋植・摘出時に記録すべき最少限の事項に関する国際基準案の作成に関与した。また、摘出物の分析法に関する基準も整備されつつあることがわかった。さらに、摘出物に関しては、米国NIHで技術会議が開催され、今後の動向について活発な議論が展開されたが、そこに参加して日本の方向について紹介した。 組織工学製品の規制の国際調和:組織工学技術は人工臓器および臓器移植の基本的な弱点を補う医療を提供するものとして期待されているものである。しかし、その技術の根幹は、ヒトあるいは遺伝子導入異種動物の組織または細胞を加工することであるので、さまざまな倫理的・技術的な課題がある。また、この新しい技術に対応した規制体制は整えられていない。日本ではいくつかの研究班による報告書に基づいて、規制に関する基本概念が整理され始めた。1999年10月に米国で開催されたRegulatory Affairs Professionals Society(RAPS)の特別ワークショップにおいて、現在の日本の規制に関する状況を説明すると同時に、米国およびEUの規制に関する情報を収集した。その結果をまとめた。
結論
日本発の情報と基準を国際的な場に反映するには、国際的な場における日本のプレゼンスが見えるような、そして、日本の姿勢とその科学的背景をしっかり示した、地道で継続的な活動が必要である。同時に、現実的な妥協点を見据えて、日本の基準を整合させることも必要である。この研究が息長く継続されることが、必ず日本の医療用具の国際的地位の向上に寄与すると考える。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-