血液製剤の安全性向上に必要な試験法、評価法の開発と改良(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900721A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤の安全性向上に必要な試験法、評価法の開発と改良(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
小室 勝利(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 吉原なみ子(国立感染症研究所)
  • 水澤左衛子(国立感染症研究所)
  • 福武勝幸(東京医科大学)
  • 柴田洋一(東京大学医学部)
  • 池田久實(北海道赤十字血液センタ-)
  • 脇坂明美(日本赤十字血液センタ-)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤の有効性と安全性をより高めることに応用する目的で、製剤使用時の臨床的現状分析、安全性評価のための試験法の開発、改良、標準化、及び細菌、ウイルス不活化法に関する研究を行う。
研究方法
血友病患者の1998年度時点での臨床的分析、血小板輸血の有効性と副作用についての臨床的分析、HIV,HBV,HCV検出法評価のための標準品の作製、検査キットの評価、分画製剤製造工程中のウイルスの挙動、ウイルス不活化法の検討を行った。
結果と考察
血液製剤の有効性と安全性を高めるための試験法の開発と改良、必要な標準品の設定、血液成分製剤の安全性調査と対策につき検討し、以下の結果を得た。
1)血液安全技術調査会に設けられた小委員会を中心に核酸増幅法(NAT法)評価用のHCV-RNA国内標準品を作成した。又NAT法に関する国際研究集会を後援した。
2)HIV抗体、HCV抗体、HBs抗原検出用キット評価に使用するWHO標準品作成作業に参加し、現在、継続中である。
3)NAT法の評価に使用するHBV-DNA国際標準品作成作業に参加し、その設定を終了した。
4)国内市販HIV抗体スクリーニングキットの感度、特異性の再点検を行った。感度に優劣の差が著しく認められ、定期的な再評価の必要性が示唆された。
5)血友病患者の1998年5月時点でのHIV,HCV感染状況、重症度との関連、非加熱製剤使用の有無と臨床検査との関係等の現状分析を実施した。
6)血液疾患、固形癌患者における血小板輸血の有効性と副作用、血小板抗体の出現状況等の臨床的分析を行った。無効症例(14%)があり、有効性の検討を行う必要性が示唆された。
7)モノクロ精製凝固第Ⅷ因子製剤の製造工程におけるTTVの挙動の検討を行った。原料では100%陽性であるが、最終製品では全て陰性であることが確認できた。
8)血液凝固第Ⅷ因子製剤中のB19パルボウイルス不活化法を検討した。UV照射をルチン存在下で行うと、凝固活性を残しつつ、ウイルス不活化がおこることを確認した。本法は応用可能性であることが示唆された。
血液製剤の安全性向上のため、HCV-RNAを検出するNAT法がすでに導入され、分画製剤原料血漿を中心に、国内ではHIV-RNA, HBV-DNA検出するNAT法が実施されている。これらNAT法は、血液成分製剤にも利用されつつあり、近い将来には、血小板製剤にも適用されると聞く。国際標準品の作製及び国内標準品の設定は、これらNAT法をはじめ、通常の血液スクリーニング法の機能評価に必須のものとなる。その作業は着々と進められており、日本の検査法レベルの改良、維持に有用な手段を提供することと考えられる。一方、市販検査キットについては、再評価するシステムがなく、その優劣を決定する事は、今まで実施されてこなかった。HIV検出スクリーニングキットの感度比較を行った今年度の報告によれば、明らかな優劣があり、この様な診断薬の機能評価の重要性を示唆させる。HCV抗体、HBS抗原検査用試薬についても、同様の評価実施をスタートさせる予定である。国として、再評価システムを具体化する時期にきていると考える。現在、使用されている分画製剤、成分製剤の有効性と安全性強化法の検討、臨床への影響の現状分析も実施した。血液製剤の有効性と安全性向上のためには、一時のブームに流されることなく、この様な地道な研究が続けられることが大切ではないかと考える。
結論
血液製剤の有効性、安全性向上に貢献することを目的に、その手段として必要な標準品の作製、検査キットの評価、製剤を必要としている患者の臨床的分析、安全強化策等につき検討し、各々結果と今後検討して行かなければならない項目についての示唆が得られた。白血球除去フィルターの応用、血液成分製剤のウイルス不活化法の導入等と併せて本研究班で検討した結果が役立てられるよう願っている。

公開日・更新日

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