医療機関等における安全対策に関する研究

文献情報

文献番号
199900718A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関等における安全対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
一山 智(京都大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 宜親(国立感染症研究所)
  • 岩田 進(日本臨床衛生検査技師会)
  • 飯沼 由嗣(名古屋大学医学部附属病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は細菌検査室での薬剤感受性試験の標準化と精度管理を目的としている。さらに、厚生科学研究「新興・再興感染症研究事業:薬剤耐性菌による感染症のサーベイランスシステムの構築に関する研究」および「新興・再興感染症研究事業:薬剤耐性菌による感染症症例情報ネットワークの構築に関する研究」の目的に合致させるものである。
研究方法
検討する病原細菌はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、広域スペクトラムβラクタマーゼ産性菌(ESBL)(E. coliおよびK. pneumoniae)、多剤耐性陽性緑膿菌(MDRPA)の6菌種である。MRSAについてはMPIPC低度耐性2株と高度耐性2株、VREについてはVanAおよびVanB各々1株とVanC2株、PRSPについてはペニシリン低度耐性1株と高度耐性1株、ESBLについてはE. coliおよびK. pneumoniae各々2株、MDRPAについては4株、合計18株を選定した。
これらの菌株を日本臨床衛生検査技師会に登録されている全国主要20医療施設に配布した。各施設において米国臨床検査標準委員会(NCCLS)で定められた抗菌薬感受性試験方法で正しく判定できるか否かを検討した。具体的な試験方法はデイスク拡散法と微量液体希釈法の2法である。試験薬剤はMRSAについてはMPIPC、VCM、TEIC、およびABKの4薬剤、VREについてはVCMおよびTEICの2薬剤、PRSPについてはPCGおよびMPIPCの2薬剤、ESBLいついてはCTX、CAZ、CTX/CVA、およびCAZ/CVAの4薬剤、MDRPAについてはIPM、CAZ、AMK、およびLVFXの4薬剤とした。
実際には、抗菌薬を含まない培地で5回植え継ぎ、耐性遺伝子の脱落や耐性度の変化を調べ、変化の少ない菌株を選択した。また、凍結保存後、解凍と再凍結を5回繰り返し、菌の生育力や耐性度の変化の少ない菌株を選択した。
結果と考察
耐性遺伝子の安定性が高く耐性度の変化が少く、安定した生育力を有する菌株を選択し、以下にそれぞれの菌種について標準耐性株の候補をしぼった。
1. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌低度耐性株 MRSA 5658
2. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌高度耐性株 MRSA 4863
3. バンコマイシン耐性腸球菌VanA株 Enterococcus faecium NCB43
4. バンコマイシン耐性腸球菌VanB株 Enterococcus faecalis HKY-RV1
5. バンコマイシン耐性腸球菌VanC株 Enterococcus gallinarum 97-H73
6. 多剤耐性緑膿菌IPM高度耐性株 Pseudomonas aeruginosa MSA 137
7. 肺炎球菌PCG低度耐性株 
8. 肺炎球菌PCG高度耐性株 Streptococcus pneumoniae 1856
9. SHV-12型ESBL産生大腸菌 Escherichia coli HKY741
10. SHV-12型ESBL産生Klebsiella pneumoniae Klebsiella pneumoniae HKY525
11. Toho-1型ESBL産生大腸菌 Escherichia coli HKY-R163
12. Toho-1型ESBL産生Klebsiella pneumoniae Klebsiella pneumoniae HKY-R150
(3、4、7、および9~12については現在確認中である。)
わが国においては、薬剤耐性菌検出のための標準化と精度管理は、臨床病理学会あるいは臨床検査技師会が中心となって行っているが、これらは一般的な細菌の同定と薬剤感受性についてである。本研究は耐性菌の検出に目的を絞ったものであり、細菌検査室での薬剤感受性試験の標準化と精度管理を目的としている。
本研究で得られた「耐性標準株」を準備することにより、検査室での薬剤耐性検査の質的向上を図ることが期待でき、その結果、「新興・再興感染症研究事業:薬剤耐性菌による感染症症例情報ネットワークの構築に関する研究」で収集されるデータの信頼性の向上が期待できる。
結論
本研究で検討した耐性病原細菌のうち、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、VanCタイプのバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性陽性緑膿菌(MDRPA)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)について標準となるべき耐性菌の候補株が選定された。また、VanA、VanBタイプのVREや広域スペクトラムβラクタマーゼ産性菌(ESBL)についても標準株が設定される予定である。それらが揃えば全国の病院での精度管理菌株として提供する計画である。

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