組換えDNA食品の安全性の確保に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900704A
報告書区分
総括
研究課題名
組換えDNA食品の安全性の確保に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
鎌田 博(筑波大学)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小関良宏(東京農工大学)
  • 石田寅夫(鈴鹿医療科学大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子組換え技術の進展に伴って多様な遺伝子組換え農作物が育成されるようになり、その一部については既に食品としての利用も始まっている。我が国においては、このような遺伝子組換え農作物あるいはその加工食品について、食品としての安全性評価指針を厚生省が作成し、安全性の確認を行っている。しかし、実際にどのような遺伝子組換え農作物が輸入され、どの程度市場に出回っているかについてはデータがほとんどないのが現状である。そこで、本研究では、遺伝子組換え農作物とその加工食品について、輸入時点あるいは市場流通物のモニタリングを可能とする簡便な遺伝子組換え農作物検知法を開発することを目的としている。さらに、このような食品としての安全性評価においては、導入遺伝子が後代交配種においても安定に存在・機能していることが重要である。そこで、後代交配種における導入遺伝子の安定性を調査・確認するための方法の開発も併せて行うことを目的としている。
研究方法
大量のサンプルについてモニタリングするためには、簡便なDNA抽出法の開発がまず始めに必要となることから、CTAB法の改良を行うこととした。また、導入遺伝子とその産物(タンパク質)を検出する方法のうち最も感度が高く、再現性・適用範囲の広さ等を考慮し、PCR法の改良を行いつつ、遺伝子組換え農作物の系統毎の検出を可能とするプライマーの設計を行うこととした。さらに、本研究で開発された方法を輸入ダイズやトウモロコシおよびその加工食品のモニタリングに適用できるかどうかを検討することとした。一方、後代交配種における導入遺伝子の安定性を調べるため、導入遺伝子とその挿入位置近傍の植物DNA配列を決定する方法を採用することとし、実際に後代交配種から導入遺伝子とその周辺の配列を含むDNA断片を増幅するPCR法を開発することとした。
結果と考察
3年計画の初年度である本年度は、多様な遺伝子組換え農作物のうち我が国に最も大量に輸入されているダイズとトウモロコシについて、既に厚生省が安全性の確認を行った数系統を中心に、PCR用のプライマーの設計を行うと同時に、モニタリングを実施できるような簡便なPCR法の開発に成功し、そのマニュアル化を進めた。また、これまでに一部改良してきたCTAB法をさらに改良し、ダイズとトウモロコシの両方について、種子ばかりでなく、その加工食品であるスナック菓子についてもこの簡便なDNA抽出法が適用可能であることを明らかにした。さらに、この方法を適用し、数カ所の検疫所でサンプリングを行ったトウモロコシとダイズについてモニタリング調査を行い、遺伝子組換え体のうち特定の系統についてその混入率を明らかにすることができた。したがって、今後はより多くの系統について個々の系統を個別に検知することが可能なプライマーを設計することにより、我が国に輸入され、市販されている遺伝子組換え食品のモニタリングが可能になるものと予想される。一方、導入遺伝子内のプライマーとランダムプライマーを用いるPCRを行うことで、比較的容易に導入遺伝子とその周辺の配列を増幅することが可能であり、このようにして増幅されたDNA断片を用いて塩基配列を決定することも可能であった。今後は、この方法をさまざまな後代交配種に適用することで、実際に市場に出回っている遺伝子組換え農作物における導入遺伝子の安定性を調査することが可能になるものと予想される。
結論
現在我が国に最も大量に輸入されている遺伝子組換え農作物であるダイズとトウモロコシについて、その数系統を特異的に検知するための技術をPCR法を基盤として開発することが
できた。また、実際にこの新たな検知法を用い、輸入時点でのダイズとトウモロコシの一部について遺伝子組換え体の混入率をモニタリングすることができた。さらに、後代交配種については、導入遺伝子とその周辺配列を含むDNA断片を増幅し、その塩基配列を決定する方法が確立できた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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