内分泌かく乱物質のヒトへの影響評価を指向した試験系の開発(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900690A
報告書区分
総括
研究課題名
内分泌かく乱物質のヒトへの影響評価を指向した試験系の開発(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤憲一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 佐藤薫(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は内分泌かく乱物質のヒトへの影響評価を指向した試験系の開発を目的とする。3年計画の初年度にあたる本年度では、系の開発のための基礎検討を行なうことを目的とした。脳高次機能維持標本を用いた悪影響評価の研究では、脳内で記憶を司る海馬の培養スライス標本を作製し、評価系としての有用性を確認することを目的とした。分子生物学的手法によるヒト型エストロゲン受容体異種細胞発現系に関する研究では、アフリカツメガエル卵母細胞におけるヒト型エストロゲン受容体発現のための条件検索を行なうことを目的とした。
研究方法
脳高次機能維持標本を用いた悪影響評価の研究では、ラットより脳を摘出し、厚さ200μmの海馬スライスを作製し37℃にて10日間培養した。神経細胞膜電位の光学的測定では、培養した海馬スライスを膜電位感受性色素で染色した。神経細胞障害の光学的測定では、培養した海馬スライスを染色し、共焦点顕微鏡を用いた観察により細胞の障害性を検討した。生細胞・死細胞を2種類の色素で別々に染色し、両者の結果を比較して障害性を決定した。分子生物学的手法によるヒト型エストロゲン受容体異種細胞発現系に関する研究では、cDNAを哺乳動物発現型プラスミドに組み込み、そのまま、あるいは、これを鋳型としたRNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入した。エストロゲン受容体の発現を確認するためのレポーターとしては、細胞外ATPのイオン・チャネル形成型受容体であるP2X2受容体を用いた。卵母細胞は18℃で2-5日間培養し、電気生理学的手法により受容体の発現の有無を確認した。
結果と考察
脳高次機能維持標本を用いた悪影響評価の研究のうち、膜電位感受性色素を用いた実験では、神経回路に沿った膜電位変化が記録され、また、この応答を修飾する機構が機能していることも確認された。神経細胞障害性を調べる実験では、神経細胞死を誘発することが知られているグルタミン酸により生細胞の減少、死細胞の増加が観察され、この障害性はCA1領域で最も顕著であった。以上のことから、培養海馬標本が生理的な機能を保持していること、および、この標本が神経に対する悪影響を検討するのに適した系であることが示された。分子生物学的手法によるヒト型エストロゲン受容体異種細胞発現系に関する研究では、P2X2受容体のcDNAを哺乳動物発現型プラスミドに組み込んで卵母細胞に注入した場合に受容体が発現することが電気生理学的手法により確認された。SV40プロモーター・ベクターにエストロゲン受容体結合部位とP2X2受容体のcDNAを組み込んだプラスミドを作製し、エストロゲン受容体のRNAまたはcDNAとともに卵母細胞に注入した場合、エストラジオールの有無に関わらずATP誘発電流が観察された。以上のことから、P2X2受容体の遺伝子がエストロゲン受容体発現のレポーターとして利用可能であることが確認され、SV40プロモーターを含むベクターはエストロゲン受容体のレポーター・プラスミドに用いることができないことが判明した。
結論
本年度の研究により、1)培養海馬スライス標本は脳の生理的な高次機能を保持した系であることが確認され、また、この標本は神経細胞障害等の脳への悪影響を検討するのに適した系であること、2)アフリカツメガエル卵母細胞発現系においてP2X2受容体がエストロゲン受容体発現のレポーターとして利用可能であること、が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-