超臨界二酸化炭素によるダイオキシン類分析技術の研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900684A
報告書区分
総括
研究課題名
超臨界二酸化炭素によるダイオキシン類分析技術の研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
川尻 聡(長崎菱電テクニカ株式会社)
研究分担者(所属機関)
  • 中村良(長崎菱電テクニカ株式会社)
  • 廣瀬勉(熊本大学工学部)
  • 後藤元信(熊本大学工学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類の定量は超微量領域で行わねばならないため、測定、分析が行える施設が限定される。また限定された施設においてもダイオキシン類の分析は細かい作業の積み重ねが必要となるため、他の分析に比べ膨大な時間とコストを必要となる。コストと時間の問題に関して、その原因とされるのは、煩雑な前処理工程である。これは、この前処理工程の成否がそのままダイオキシン類の定性・定量測定結果に影響を及ぼすためであるが、その操作の殆どが分析作業員の手に委ねられているのが現状である。中でも、試料からダイオキシン類を抽出する工程と抽出物を分離する工程には時間と手間を要し、分析に要する時間の約半分がここで消費される。
そこで本研究では、抽出と分離の操作が同一雰囲気かつ同一時間軸上で処理が可能と考えられる超臨界流体抽出及び吸脱着分離技術の技術を確立し、連続式の前処理プロセスの構築を行って、ダイオキシン類分析の迅速化に資することを目標としている。
研究方法
超臨界二酸化炭素を用いたダイオキシン類の抽出とその抽出物の分離・分画によるダイオキシン類分析における前処理負荷の軽減を目的とする研究開発の中で今年度は超臨界二酸化炭素による抽出技術の確立に重点を置いた。抽出率に影響を及ぼすパラメーターの影響から最適抽出条件の検討を行った。
まず固体廃棄物中のダイオキシン類分布状況の確認と物性と抽出現象との相関を調査するために試料である焼却飛灰の均一性についての確認を行った。
次に酸処理負荷軽減のため、試料をそのまま抽出容器に投入して、超臨界二酸化炭素で抽出を行った。比較のためにトルエン-ソックスレー抽出法による非酸処理飛灰中のダイオキシン類抽出も行った。
従来通り、塩酸による酸処理を行った飛灰について、抽出圧力を10、20、30Mpaと変化させた状態での抽出率の変化を確認した。抽出温度については、50、100、150、200℃の状態で確認を行った。抽出時間は、1、2、4、8、16時間について確認を行った。抽出容器内における溶媒と溶質の接触効率を向上させるために、不活性なガラスビーズを添加して二酸化炭素の分散性と抽出率の関係について検討を行った。
結果と考察
試料である焼却飛灰の均一性についての確認の結果、同一地域から同日に採取された焼却飛灰中のダイオキシン類の分布幅は極めて小さく、ほぼ均一に分布していることが確認された。また、日内及び日間における誤差も僅少であった。非酸処理飛灰を用いた超臨界二酸化炭素抽出では、抽出時間、抽出圧力を変化させたが、低い抽出率のうえ、パラメーターの影響も観察されなかった。比較のためにトルエン-ソックスレー抽出法による非酸処理飛灰中のダイオキシン類抽出を行ったが、結果は同様に低かった。そこで、予め塩酸により表面のアルカリ成分を除去した飛灰について、抽出時間1時間、抽出圧力:30MPa、抽出温度:323K(50℃)、二酸化炭素流量:5ml/min(液)の条件で抽出を行ったところ、PCDDs(塩素化ジベンゾジオキシン)、PCDFs(塩素化ジベンゾフラン)、コプラナーPCBsの全ての異性体についてほぼ80%以上抽出できた。最大抽出率は、85~90%程度で、高塩素化合物になるほど抽出率は向上した。これは、飛灰表面に付着しているアルカリ成分が溶媒の分散及び溶解を阻害したためと考えられる。
酸処理飛灰について行った試験結果から、抽出圧力は、高いほど抽出率が向上し、抽出温度は臨界温度(≒31℃)に近い超臨界状態が有効であった。抽出時間は、1時間から16時間まで複数の点について確認したが、大きな変化は得られなかった。つまり、1時間程度の短い時間でで高いレベルまで抽出が行われるからと考えられる。
結論
超臨界二酸化炭素を抽出溶媒に用いることで、前処理操作に要する時間を80~90%程度短縮することが可能である。安定性やコンタミネーション等の影響について検討を行えばソックスレー抽出の代替法として利用できる可能性は高い。

公開日・更新日

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更新日
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