廃棄物処理における燃焼制御によるダイオキシン類の抑制技術に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900683A
報告書区分
総括
研究課題名
廃棄物処理における燃焼制御によるダイオキシン類の抑制技術に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
小豆畑 茂(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 武田信生(京都大学大学院 工学研究科)
  • 藤原健史(京都大学大学院 工学研究科)
  • 本田穣慈(株式会社日立製作所 計測器グループ)
  • 武川茂樹(株式会社日立製作所 計測器グループ)
  • 佐藤美雄(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
  • 松本弘(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
  • 野村政英(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
  • 斎藤忠良(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
  • 堀嘉成(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
  • 水本守(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
  • 谷口正行(株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ごみ焼却炉において、ダイオキシン前駆物質をオンラインリアルタイムで連続計測し、それに基づいた燃焼最適化制御によりダイオキシン類の発生をさらに低いレベルに抑制することを最終目的としている。本研究では次の2つを目的とした。(1)ダイオキシン前駆物質としてクロロフェノールを選択し、ごみ焼却炉におけるクロロフェノールの挙動を解析するとともに、クロロフェノールを指標とした燃焼制御によるダイオキシン抑制の可能性を評価すること。(2)焼却炉の燃焼制御方式として提案しているモデルベース制御技術を開発するため、その基本技術となるクロロフェノール発生量予測モデルを構築し、シミュレーションによりその動作の妥当性を評価すること。
研究方法
(1)ごみ焼却プラントの電気集塵機(EP)出口において排ガスをサンプリングし、従来法によりダイオキシンとクロロフェノールの濃度を分析し、その相関関係を解析する。また、文献調査によって得られた相関関係と比較する。
(2)ごみ焼却プラントの電気集塵機(EP)出口にクロロフェノールの連続分析装置を設置し、実際のごみ焼却炉におけるクロロフェノール濃度をオンラインリアルタイムで計測し、クロロフェノールの挙動とCOの挙動を比較する。
(3)上記(2)で計測したクロロフェノールの濃度とごみ焼却炉の運転操作条件(燃焼空気ダンパの開度等)との関係を解析する。また、焼却炉内温度等の状態量との関係についても解析する。
(4)焼却炉出口におけるクロロフェノールの濃度を予測するモデルを物理式ベースで構築し、予測モデルにいくつかの入力条件を与えてシミュレーションし、その挙動の妥当性を評価する。
結果と考察
(1)排ガス中のダイオキシン類及びクロロフェノールの濃度を従来法により分析し、両者の濃度相関を調べた。その結果、ダイオキシン類の濃度で約1桁の濃度幅のバラツキはあるものの、両者の間には相関は認められ、文献に報告された結果とも合致した。約1桁のバラツキは再合成ダイオキシンに起因すると推測された。
(2)オンラインでトリクロロフェノールを連続計測し、その挙動とCOの挙動を比較した結果、燃焼状態が悪化し、CO濃度が高くなった場合は、クロロフェノール濃度も同様に高くなった。また、一般に安定燃焼と言われているCO濃度が低い状態では、CO濃度とクロロフェノール濃度において変化に差異が認められた。ダイオキシン類との相関においてはCOよりもクロロフェノールの方が相関が高いことを考えると、ダイオキシンの低減にはクロロフェノールを指標とすることがより有効な手段であると考えられる。
(3)ごみ焼却炉の運転操作条件として二次燃焼空気の吹き込み量を選択し、操作条件とトリクロロフェノールとの関係について解析した。二次空気の吹き込み方を変化させることでクロロフェノールの濃度、CO濃度ともに変化したが、その変化のパターンはクロロフェノールとCOで異なった。また、二次空気吹き込み量を段階的に変更した場合においても、二次空気吹き込み量とクロロフェノール濃度、CO濃度との関係には差異が見られた。操作条件とクロロフェノールの濃度の関係はごみ質等の条件によって異なることが予想されるため、オンラインでクロロフェノールの濃度を計測しながら、操作条件を変更する制御方式は有効であると思われる。
(4)制御用のモデルとしてクロロフェノールの濃度を推定する予測モデルを構築した。本モデルにより焼却炉内のガス温度や酸素濃度分布等を計算し、排ガス中のクロロフェノールの濃度を推定した。操作条件が一定の状態では、モデルパラメータを調整することで、モデルで計算したクロロフェノール濃度を実測したクロロフェノール濃度に一致させることができた。
結論
オンラインでダイオキシン前駆物質のひとつであるトリクロロフェノールを連続計測し、その挙動とCOの挙動を比較した。その結果、炉内の燃焼状態が悪化し、CO濃度が高くなった場合は、クロロフェノール濃度も同様に高くなった。しかし、安定燃焼と言われているCO濃度が低い状態では、CO濃度とクロロフェノールの挙動に差異が認められた。また、ごみ焼却炉の操作条件のひとつである二次燃焼空気の吹き込み方法を変更して、クロロフェノールの濃度及びCO濃度の変化を比較したところ、両者の変化のパターンには差異が認められた。ダイオキシンとの相関においてはCOよりもクロロフェノールの方が相関が高いことを考えると、本研究で提案している、クロロフェノールの濃度を計測しながら、操作条件を変更する制御方式は有効であると思われる。ただし、クロロフェノールと運転操作条件との関係はごみ質や焼却炉の構造等によっても異なると考えられる。したがって、今後は十分なデータを解析し、操作条件とクロロフェノールの関係を焼却炉毎に明確にしていくことが必要である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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