廃棄物処理過程におけるダイオキシン類縁化合物の挙動と制御に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900679A
報告書区分
総括
研究課題名
廃棄物処理過程におけるダイオキシン類縁化合物の挙動と制御に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
八木 美雄(財団法人 廃棄物研究財団)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現状のダイオキシン対策は塩素化ダイオキシン類(PCDDs/DFs)を対象としたものであるが、同様の構造の有機ハロゲン化合物である臭素化ダイオキシン類(PBDDs/DFs)や臭素化ジフェニルエーテル(類)(PBDEs)等のダイオキシン類縁化合物についても対策の必要性について検討する必要がある。そこで、本研究ではPBDDs/DFs,PBDEs,コプラナーPCB(類)等の廃棄物処理過程における挙動と対策技術に関する検討を主たる目的とする。
研究方法
1.「ダイオキシン類縁化合物の分析方法の検討」臭素化ダイオキシン類には臭素のみを骨格に持つ臭素化ダイオキシン類だけでなく、臭素と塩素をあわせて骨格に持つ臭素・塩素化ダイオキシン類が含まれるため、その数は塩素化ダイオキシン類よりもはるかに多く、従ってその分析もより精密に行う必要がある。分析方法の検討は塩素化ダイオキシン類に加え臭素化ダイオキシン類、臭素・塩素化ダイオキシン類、その他、臭素化ダイオキシン類生成の前駆体と考えられる物質等11種類の化合物を主たる調査対象とし、文献から分析法の調査を実施し各種実試料の分析を行う。
2.「燃焼条件等によるダイオキシン類縁化合物の生成分解挙動の検討」は臭素系難燃剤を含有する実際の廃棄物試料を使用し、ラボスケール炉で燃焼実験を実施し、廃棄物の種類や燃焼条件による燃焼排ガスや焼却残さにおけるダイオキシン類縁化合物の挙動について検討した。
3.「焼却施設からのダイオキシン類縁化合物の排出実態調査(全連炉)」は連続式都市ごみ焼却施設にてダイオキシン類と同時に臭素化ダイオキシン類、臭素・塩素化ダイオキシン類などについて排出実態を調査し、バグフィルタ及び触媒脱硝装置による高度なダイオキシン類対策によるこれらの類縁化合物の排出抑制効果や排出レベルなどについて確認した。
4.「焼却施設からのダイオキシン類縁化合物の排出実態調査(ガス化溶融炉)」はガス化溶融炉にて全連炉と同様にダイオキシン類と同時に臭素化ダイオキシン類、臭素・塩素化ダイオキシン類などについても調査し、バグフィルタ及び触媒塔による排出抑制効果や排出レベルなどについて確認した。
5.「焼却施設からのダイオキシン類縁化合物の排出実態及び周辺環境への影響把握調査」は上記の全連炉、ガス化溶融炉と同様にダイオキシン類と同時に臭素化ダイオキシン類、臭素・塩素化ダイオキシン類などの排出量について調査するとともに、その周辺環境への影響についても調査した。これらの研究は学識経験者による研究委員会を組織して実施した。
結果と考察
1.について:下記8種の化合物について実試料の分析調査を実施した。臭化ダイオキシン類、臭素化ジフェニルエーテル類、テトラブロモビスフェノールA、ポリ臭化ビフエニル類、ポリ臭化ベンゼン類、ポリ臭化フェノール類、ポリ塩化ナフタレン類、多環芳香族炭化水素。
2.について:一次燃焼条件を一定にして廃棄物試料の影響を調査した結果は、燃焼排ガスや焼却残さ中の各ダイオキシン類の濃度比率に対して、投入試料中のBr、Cl濃度に比例した関係が見られた。すなわち、二次燃焼炉出口排ガスや焼却残さにおいて、Br濃度が高い廃テレビの燃焼時にはPBDDs/DFsやMoCPXDDs/DFsの高臭素化で低塩素化のタイオキシン類の割合が大きかったのに対し、Cl濃度が高い廃パソコンの燃焼時には逆にPCDDs/DFsやMoBPXDDs/DFsの低臭素化で高塩素化のダイオキシン類の割合が大きかった。また、廃テレビや廃パソコンと比べてBrやClの濃度が低かった携帯電話の燃焼時には、廃テレビの燃焼時や廃パソコンの燃焼時と比べてPBDDs/DFs、PCDDs/DFs、PXDDs/DFsの濃度が低かった。なお、この投入試料の影響は、廃ガス処理後の活性炭吸着塔出口では低減されて、顕著ではなかった。また、一次燃焼温度600℃条件では臭素系難燃剤を含有する廃棄物の燃焼条件として適切でないと考えられる結果を得た。
3.について:塩素化ダイオキシン類に対する臭素化ダイオキシン類の値は、ごみ中では 3.4%~102.6%と、サンプルによりばらつきが見られる。排ガス中のそれは、ボイラ出口で0.6%、BF出口で 7.9%、煙突中間で 8.5%と、いずれも 10%以下であった。また、焼却灰では 1.6%、集塵灰では 0.3%となり、塩素化に対する臭素化の割合はさらに下がる。塩素化ダイオキシン類除去対策により、臭素化ダイオキシン類も塩素化と同様に除去・分解できることが示唆されるデータが得られた。また、排ガス中の塩素化ダイオキシン類は、バグフィルタ・脱硝反応塔での処理により、ボイラ出口での濃度に比較して、96~97%が除去されている。臭素化ダイオキシン類も、バグフィルタでの除去率が塩素化に比較して小さいものの、塩素化ダイオキシン類と同じように、排ガス処理により濃度が低減している。
4.について:ガス冷却室出口ガス(バグフィルタ入口ガス)でPCDDs/DFs、Co-PCBs、PCBs、PCNs、PAHsが、それぞれ0.62ng-TEQ/m3N、0.13ng-TEQ/m3N、69ng/m3N、32ng/m3N、2,400ng/m3Nであったのが、触媒塔出口ガスでは、それぞれ0.018ng-TEQ/m3N、0.000048ng-TEQ/m3N、19ng/m3N、0.40ng/m3N、240ng/m3Nとなり、除去率はそれぞれ97.10%、99.96%、72.46%、98.75%、90.00%であり、ガス化溶融炉からの排ガス中のダイオキシン類縁化合物はバグフィルタ及び触媒塔などで除去できるものと考えられる。なお、PBDDs/DFsはガス冷却室出口ガス及び触媒塔出口ガスで不検出であった。また、ダイオキシン類縁化合物のごみからの流入総量はTBBPA>>PAHs>>PBDEs>>PCBs>>PCNs>>PCDDs/DFs>>PBDDs/DFs>>Co-PCBsの順に多く、TBBPAが4,400,000μg/ごみt、Co-PCBsが0.12μg-TEQ/ごみtで物質毎に濃度差が非常に大きい。ダイオキシン類縁化合物の排出総量(触媒塔出口ガス、不燃物、溶融スラグ、ガス冷ダスト、溶融飛灰)は、PBDDs/DFs<<PCDDs/DFs<<PCNs<<PCBs<<PAHsの順に少なく、PBDDs/DFsが19μg/ごみt、PAHsが27,818μg/ごみtで、物質毎に濃度差が大きい。なお、Co-PCBsは生ごみ中の濃度が低く、流入総量よりも排出総量の方が多い。
5.について:破砕ごみは家庭ごみ中心の普通ごみに比べて塩素化ダイオキシン類及び臭素化ダイオキシン類濃度が高い。一方、コプラナーPCB類については普通ごみの方が高濃度であった。排ガス及び灰については、飛灰中のダイオキシン類縁化合物濃度が高く、臭素・塩素化ダイオキシン類については飛灰中で多く検出され、排ガス及び焼却灰中の濃度は低かった。また、周辺環境の測定結果は環境大気、降下ばいじん、土壌、松葉について、東1km地点、東2km地点、東5km地点の3地点で測定した。塩素化ダイオキシン類はいずれのサンプルにおいても施設からの距離が離れるにつれて濃度が減少する傾向があるが、コプラナーPCB類についてはその差は顕著でない。臭素化ダイオキシン類については降下ばいじん中から多く検出されたが、臭素・塩素化ダイオキシン類は環境大気、降下ばいじんにおいては定量下限値以下であり、土壌、松葉からのみ検出された。
結論
ダイオキシン類縁化合物の分析方法の検討、燃焼条件等によるダイオキシン類縁化合物の生成分解挙動の検討、焼却施設からのダイオキシン類縁化合物の排出実態調査(全連炉)(ガス化溶融炉)、焼却施設からのダイオキシン類縁化合物の排出実態及び周辺環境への影響把握調査等の研究実施によりダイオキシン類縁化合物の廃棄物処理過程における挙動と対策技術に関する知見を得た。なお、本研究は平成12年度に継続する。

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