ダイオキシンの毒性発現機構に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900676A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシンの毒性発現機構に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
山下 敬介(広島大学)
研究分担者(所属機関)
  • 横崎恭之(国立療養所広島病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類は肝臓酵素誘導作用、生殖発生毒性、免疫毒性などさまざまな 毒性を有する。近年、ヒトの精子数減少とダイオキシンによる環境汚染との関連性につ いて議論がされている。本研究は、ダイオキシン類の肝臓への影響、精巣毒性に焦点を 絞り、これらの毒性発現機序について明らかにしようとするものである。ダイオキシン はダイオキシン受容体(別名:アリール炭化水素受容体、以下AhRと略)を介して毒性を発現すると考えられている。ダイオキシン類の肝臓への影響、精巣毒性に対するAhRの関与の有無について検討することも本研究の目的である。
研究方法
マウスの系統はダイオキシンに対する感受性が最も高いC57BL/6Jを用いた。Ah Rの関与を見るため、AhR遺伝子欠損マウス(AhR-/-)マウスも使用した。ダイオキシンは 、ダイオキシン類のうち最も毒性が強いとされる、2,3,7,8四塩化ジベンンゾパラジオキ シン(以下、TCDDと略)をコーン油を溶媒として溶解した。溶媒投与を対照群とした。
1)肝臓の変化発現機序:8週齢の雄マウスを用いて、実験を行った。肝臓への影響を みるため、C57BL/6JマウスにTCDDを40μg/kg体重の割合で1回強制経口投与した。
投与後1・3・7・14・28日でマウスを頚椎脱臼により屠殺した。AhR遺伝子欠損マ ウスにも同量のTCDDを投与して7日後に屠殺し、AhRの関与を見た。
2)精巣毒性発現機序:C57BL/6Jマウスの雄・雌を終夜交配する。膣栓発見日を妊娠0 日(胎齢0日)とする。妊娠14.5日にTCDDを母体体重kg当たり0.625・2.5・10μgの割合 で強制経口投与する。妊娠14.5日投与では、胎仔に口蓋裂は生じない。出生後、仔をそ のままダイオキシン投与母マウスに飼育させる。仔は胎生期にダイオキシンに暴露され る他、母乳を通じても暴露される。10週齢(出生日を0週0日齢とする。)に仔を屠 殺した。
結果と考察
1)肝臓の変化:C57BL/6Jマウスの肝臓はTCDD投与1週後に腫張が認められ た。組織像を見ると、肝小葉の中心静脈周辺に空胞が多数出現していた。空胞はズダン 黒染色に染まることから、その本体は脂肪であることが確認された。AhR遺伝子欠損マウ スでは、TCDD投与によっても腫張は認められず、組織像で、脂肪沈着も見られなかった 。この結果より、TCDDによる肝臓への脂肪沈着はAhRを介すると言える。
2)精巣毒性発現の有無:TCDD10μg投与群では、妊娠は継続し出産にいたるが、仔は出 生後死亡した。死亡の原因については明らかにできなかった。TCDD2.5μg投与群では、 仔は出生し、10週まで成熟した。これを最高用量群とした。この精巣・精巣上体を取 りだし、組織切片を作製し、投与群と対照群を比較した。精巣にはTCDD投与による明瞭 な変化を認めなかった。精巣上体をすりつぶし、精子数を血球計算盤で算出した。これ もTCDD投与による精子数の変化を認めなかった。さらに、精巣上体の精子についてHamil ton-Thorneによる精子運動能検査による検討を加えた。しかし、運動能に与えるTCDD投 与の影響を捉えることができなかった。
結論
肝臓の変化発現機序については、基礎的データをとることができたといえる。精巣 毒性発現機序の項目については、初年度の結果では、うまくエンドポイントを捉えるこ とができなかった。

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