清掃作業従事者のダイオキシン暴露による健康影響に係る調査研究

文献情報

文献番号
199900674A
報告書区分
総括
研究課題名
清掃作業従事者のダイオキシン暴露による健康影響に係る調査研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
高田 勗(中災防 労働衛生調査分析センター)
研究分担者(所属機関)
  • 牧野茂徳(中災防 労働衛生調査分析センター)
  • 工藤光弘(中災防 労働衛生調査分析センター)
  • 山田憲一(中災防 労働衛生調査分析センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
85,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国数カ所程度の焼却方式の異なる施設の従業員の血液中ダイオキシン類濃度を測定し、現状のばく露実態を把握すると共に、健康影響との関係を検討し、量一反応関係及び量一影響関係の評価、研究を行う。
研究方法
調査対象施設:調査対象施設は1997年9月末現在の厚生省への報告値を参考に、煤煙中に高濃度のダイオキシン類が検出された施設のうち処理能力50トン/日程度以上のものとした。なお、煤煙中に低濃度のダイオキシン類が検出された施設も対象とした。調査対象者:調査対象者は焼却施設内で作業に従事する者及び対照群として一部事務作業従事者を含め、一施設あたり20名程度を上限として調査対象者を募った。調査対象者は4群に分類して検討した。即ち、Ⅰ群は焼却施設棟内に立入らない者、Ⅱ群は時に焼却施設内に立入るが作業に従事しない者、Ⅲ群は焼却施設内での支援作業等に従事する者、Ⅳ群は焼却施設内の関連設備の作業を行う者である。調査内容:調査内容は医師による問診、作業歴調査、アンケートによる健康調査、皮膚科医師による皮膚視診、血液検査である。
結果と考察
アンケート、健康調査を終了した調査対象者数は197名、作業歴調査を終了した者は196名、血液中ダイオキシン類濃度の測定可能であった者は194名であった。調査対象者の合計人数197名の平均年齢は45.1歳(男性45.3歳、女性40.0歳)であった。職歴調査と血液中ダイオキシン類濃度の両方が可能であった12施設の労働者(193名)の血液中ダイオキシン類濃度をみると全体の血液中ダイオキシン類濃度は25.5±12.6pg-TEQ/g-fat(最小5.2~最大71.1)であった。これは日本人のバックグラウンド値とほぼ同じであり、従来の報告によると何らかの健康影響が生じるレベルにはないものである。また、血液中ダイオキシン類の異性体別濃度についても検討した。焼却施設内作業をⅠ群、Ⅱ群、Ⅲ群及びⅣ群に分類した血液中ダイオキシン類濃度はⅠ群(14名)が19.99±7.88pg-TEQ/g-fat、Ⅱ群(3名)が26.72±9.92 pg-TEQ/g-fat、Ⅲ群(20名)が25.51±14.04 pg-TEQ/g-fat)、Ⅳ群(156名)が25.99±12.74 pg-TEQ/g-fatであり、Ⅳ群が他の3群よりも高いという傾向は認められなかった。対象となった調査対象者の皮膚視診の結果は、通常の同年齢の一般人対照群でもみられるような疾患は認められたが、ダイオキシン類へのばく露によると疑われる所見は認められなかった。対象となった労働者の血液中ダイオキシン類濃度は、日本人のバックグラウンド値とほぼ同じであり、何らかの健康影響が生じるレベルにはないものであるが、統計解析を行ったところ次のような結果が得られた。①血液中ダイオキシン類濃度と血液中鉛濃度(r=0.155)及び血液中水銀濃度(r=0.153)間に有意な相関(p<0.05)が認められた。②年令と血液中ダイオキシン類(DF+Co-PCB)濃度(r=0.252)、血液中ダイオキシン濃度(DF)(r=0.204)及び血液中Co-PCB濃度(r=0.248)はすべて正の相関(p<0.01)が認められた。③生化学検査と血液中ダイオキシン類濃度の相関は、血液中ダイオキシン類濃度とグリコHbA1c間(r=0.276, p<0.01)、血液中Co-PCB濃度とγ-GTP(r=0.242, p<0.01)、ロイシンアミノペプチターゼ(r=0.175, p<0.05)及びアミラーゼ(r=0.152, p<0.05)との間に弱いながら有意な相関を認めた。④生活習慣との関係では、食生活、喫煙、及び飲酒と血液中ダイオキシン類濃度の間に一定の傾向は認められなかった。これらの結果については対象人数も少なく統計誤差も考慮されることから、今後継続的に検討を行っていく必要がある。
結論
199
9年度調査対象施設は、1997年9月末現在の厚生省への報告値を参考に、煤煙中に高濃度のダイオキシン類が検出された施設のうち処理能力50トン/日程度以上のものとしたが、対象となった12施設作業者の血液中ダイオキシン類濃度と健康状態に関する調査結果をみると全体の血液中ダイオキシン類は25.5±12.6 pg-TEQ/g-fat(最小5.2~最大71.3)であった。これは日本人のバックグラウンド値とほぼ同じであり、従来の報告によると何らかの健康影響を生じるレベルにはないものである。
謝辞=本調査研究は櫻井治彦(産医研所長)、旭正一(産医大教授)、有藤平八郎(産医研部長)、飯田隆雄(福岡県保健研究所部長)、内山巌雄(国立公衆衛生院部長)、大菅俊明(東京労災病院長)、川本俊弘(産医大教授)、田中勇武(産医大産業生態研所長)、福井次矢(京大教授)、渡邊昌(東京農大教授)並びに労働省、労働福祉事業団、産医研の各機関の協力の下に行われた研究である。関係各位に深謝を申し上げる。

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