水道におけるダイオキシン類の除去機構等に関する調査

文献情報

文献番号
199900673A
報告書区分
総括
研究課題名
水道におけるダイオキシン類の除去機構等に関する調査
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
眞柄 泰基(北海道大学大学院工学研究科 教授)
研究分担者(所属機関)
  • 国包 章一(国立公衆衛生院 水道工学部長)
  • 相澤 貴子(国立公衆衛生院 水道工学部水質管理室長)
  • 安藤 正典(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部部長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
74,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
A 研究目的
水道水水源が、ダイオキシン類が廃棄物焼却炉等の汚染源との関係やCNP等農薬の不純物として存在していたそれらによりで影響を受けていることもが考えられる。
廃棄物焼却炉等の汚染源との関係が注目され、水道事業者等が個々に測定せざるを得ない場面が増えつつあるが、これに加えて平成10年度環境庁がダイオキシン類の緊急全国一斉調査を公共用水域204箇所を対象として実施しており、水道水中のダイオキシン類についての国民の関心は極めて高くなっている。また、TDIの見直しの検討に伴い、TDIと水道の寄与の関係が変わりうること、コプラナPCBsも毒性等価換算に含めることとなる可能性があること、コプラナPCBsのTEQの寄与はダイオキシン類のそれより10倍以上となっているデータがあることから、水道水に関するダイオキシン類及びコプラナPCBsについてのデータの把握の必要性が生じている。
このように、ダイオキシンについて浄水処理過程での除去についての知見も少なく、塩素消毒によるダイオキシン類の副成する可能性もあり、浄水処理過程での除去機構及び動態を明らかにする必要がある。
研究方法
B.研究方法
ダイオキシン類の水道における存在状況等についての調査方法、調査地点等を選定した。その結果を基に全国44水道事業体の45浄水場において豊水期および低水期の2回の調査を行った。なお、本調査では浄水の調査を行うこととなっていることから、平成11年度水道水源における有害化学物質等監視情報ネットワーク整備事業」と採水日をあわせて原水データもあわせて活用することとした。また、水道の塩素処理によって生成する副生成物と浄水のダイオキシン類との関係を調査するため、消毒副生成物の生成機構についての基礎検討も行った。
結果と考察
C. 研究結果
浄水中のダイオキシン類の濃度は極微量であると考えられることから、2000リットルの浄水からダイオキシン類を自動で濃縮できる資料採取装置を開発制作した。本装置は清浄な実験室内でダイオキシン類の吸着濃縮剤を取り付け、採水場所まで輸送して試料水を通過させた後、再び実験室に持ち帰ることにより試料採取および輸送過程におけるコンタミネーションを防止することが出来るものである。
ダイオキシン類の分析は新日本気象海洋株式会社に委託しておこなった。委託に際して分析精度管理を適切に行わせるため、精度管理に関する報告も分析結果と併せて求めた。
全国45水道事業体においてダイオキシン類を測定した。測定精度管理は適切に行われており、分析結果は十分信頼に足るものであることを確認した。
全国45浄水場のダイオキシン類は0.000xpg/l-0.034TEQpg/lの濃度で広く分布していた。また、原水と浄水のダイオキシン類の異性体の構成は大きく異なっていた。
水道における塩素処理副生成物生成機構に関する基礎的な検討をおこない、ハロ酢酸類、TOX、塩素化フラン類の測定法を確立した。
これらの詳細は、別添「平成11年度水道におけるダイオキシン類の除去機構等に関する調査」報告書に記してある。
D. 考察
全国の45カ所の水道事業体においてダイオキシン類の実態調査から、浄水場浄水のダイオキシン類の平均濃度は4.3pg/lであり、2,3,7,8TCDD換算の毒性等量では0.028pg/lである。ダイオキシン類の構成の内絶対量ではCo-PCBの占める割合が高かったが、毒性等量では最も少なかった。
水道原水中のダイオキシン類は、その懸濁物質濃度との相関が高いことが明らかとなった。また、凝集沈殿砂濾過処理により、90%程度が除去されるものの、水道水中に存在するダイオキシン類は塩素数の少ない疎水性が小さなものであることが明らかとなった。その結果、浄水中には4塩素化フランの占める割合が高くなっている。水道水中に存在するダイオキシン類の発生源について、調査によって得られたダイオキシン類の異性体の構成に関して、多変量解析を行い、異性体の構成から農薬由来と思われる場合とそれ以外の発生源と思われる場合とに区分されることが明らかとなった。
また、フミンを塩素処理してダイオキシン類の生成に関する実験を行うため、フミンを塩素処理してハロ酢酸などの塩素化有機物の測定を行った。その結果、ハロゲン化有機化学物質の生成は活性化エネルギーに差が見られたことから、その生成量を物理化学的な性状から推定できるのではないかと推定される。
結論
E. 結論
水道におけるダイオキシン類についてその存在状況についてある程度明らかにすることが出来た。しかし、水道水には塩素処理によって生成すると考えられる低塩素数の塩素化フランの存在比が高まることから、次年度以降水道における実態調査とともに、その発生・存在機構についての研究を行うことが必要である。

公開日・更新日

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