居住環境における電磁界安全対策研究

文献情報

文献番号
199900662A
報告書区分
総括
研究課題名
居住環境における電磁界安全対策研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 千代次(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 多氣昌生(都立大学)
  • 伊坂勝生(徳島大学)
  • 中川祥正(山梨県大月保健所)
  • 牛山 明(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
14,326,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物内における超低周波電磁界の曝露状況を把握すると共に電磁界曝露とがん増殖との関連の有無を含めて、電磁界の健康影響を追究する。
研究方法
研究班を目的に応じて3課題に分けて調査研究を行った。第一の課題は、建築物内における50Hzあるいは60Hzの商用周波数を含む超低周波(300Hz以下)の電磁界曝露状況の把握である。これを伊坂および多氣が担当した。第二の課題は、電磁界安全性を評価として最も注目されているがんとの因果関係を実験的に明らかにすることである。そこで超低周波電磁界曝露とがん増殖作用の追究を、大久保および牛山が担当した。第三の課題は、電磁界の健康影響に関する国際的な研究状況の把握にある。米国が1992年から1998年まで行っていたラピッド計画の国立環境科学研究所長報告書に対する米国科学アカデミーの評価報告書に関する調査は大久保および中川が担当した。
結果と考察
第一課題の電磁界曝露評価に関する研究について述べる。居住環境における電磁界暴露評価を行うために、個人曝露量の測定を行った。その結果から個人曝露量を大きく押し上げる電気こたつ、テレビモニターおよび電車などの乗り物を取り上げ、それらの発生する磁界の分布について考察した。また、高周波トランジェント電磁界に関する研究結果をレビューし、検討を加えた。その結果、平均曝露磁界は、1mGであるが、冬場の電気こたつ使用により約2倍、電気毛布使用時では約9倍、新幹線に乗車すると約7倍に増加し、低磁界曝露環境内で生活する人にとって暖房器具や新幹線などの乗り物はかなり電磁界発生源となることが判明した。また、テレビモニターなどブラウン管からの電界測定を行った結果、ブラウン管からの電界による誘導電流は三端子電源を接地することにより、70~80%低減されることが分かった。更に、高周波トランジェント電磁界に関しては、トランジェント磁界の実測内容の検討には波形観察が必要であり、低周波領域の磁界成分にも十分留意しなければならないことが分かった。第二課題の電磁界のがん増殖作用に関する研究について述べる。マウス乳がん由来の細胞株を培養し、この細胞塊を腹部皮下へ移植し、全身性に50 Hz、3 mTの条件で商用周波電磁界を継続的に4週間に亘り曝露して、非曝磁群とがん増殖の程度を比較した結果、両群には差が無く、電磁界のがん増殖作用は認められなかった。第三の課題は、電磁界の健康影響に関する国際的な研究状況の把握である。電磁界曝露の健康影響は世界各国の衛生行政機関にとって重大な環境衛生課題であり、アメリカ・スウェーデンを中心に多くの報告が出されている。世界的な関心の広がりとともに先進諸国はこの問題に国家規模で取り組まざるを得なくなっているので、この問題に取り組んでいる各国および国際機関の主なものの紹介として、今年度は米国のラピッド計画の最終報告として、国立環境衛生研究所長報告が1999年に提出されたことを受けて、米国科学アカデミーはこの報告書への評価を実施した。その評価が同年報告書として米国議会に提出されたので、特に関心を集めている超低周波電磁界の発がん性について翻訳し、解説を加えた。
結論
電磁界の曝露量評価に関しては、居住環境内では、電気毛布やこたつの使用、電子レンジの使用が、磁界曝露量を押し上げる要因となっていることが分かった。さらには波形が非正弦波的に変化する性質(トランジェント)に着目し、今後のトランジェント磁界評価を行うための研究レビューをし、検討を加えた。電磁界の安全性に関しては、健康影響として注目される乳がん増殖への影響評価モデルによるプロモーション作用
について検討した結果、電磁界にはその作用が認められなかった。電磁界の健康影響に関する調査研究の世界的動向として、米国科学アカデミーによる米国が6年間に亘って実施したラピッド計画プロジェクトへの評価を紹介した。

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