熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究

文献情報

文献番号
199900654A
報告書区分
総括
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
金子 原二郎(長崎県知事)
研究分担者(所属機関)
  • 池邉昇(長崎県環境衛生課長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
12,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和43年に発生したPCB中毒患者(油症)が、今なお完全に治癒していない状況に鑑み、油症被害者の検診並びに追跡調査を行い、油症の有効的な治療法の解明を図ることを目的とする。
研究方法
長崎大学を中心とした油症検診班を組織し、五島(玉之浦1日、奈留1日)、長崎(1日)の両地区において油症被害者約700名を対象に一斉検診、並びにその検診結果に基づき油症被害者個々に健康管理指導を行った。なお、未認定者に対しては、認定診査も行った。また、今年度は油症発生後、昭和43~44年に長崎県が実施した疫学調査のデータ及び統計分析を行った。
結果と考察
研究結果=長崎、佐賀、熊本3県の油症被害者を対象として五島(玉之浦1日、奈留1日)、長崎(1日)の両地区において油症患者86名、未確認者21名、合計107名について一斉検診を行った。その検診結果に基づき、総合的な健康診査を行い、107名の受診者中82名に対し医療面の指導を行った。また、未認定者については、血液中PCB、PCQ濃度を含めて油症診断を行ったが、今回新たな認定したものはいなかった。今年度は、本県が油症患者に対して行った疫学調査(昭和43~44年)のデータの整理及び統計分析を行った。その結果は、次のとおりとなった。発生当時の油症患者の年齢分布においては、油症患者の男女比については大きな違いはみられないが、男女とも0~10歳の低年齢層に患者が集中していたことが目に付いた。カネミ油摂取時期は、昭和43年2月~3月に集中しており、カネミ油が五島地区及び長崎地区に流通した時期と相関性がみられた。カネミ油摂取停止時期は、昭和43年6月をピークに減少傾向を示していた。カネミ油症が新聞により報道されたのが昭和43年10月11日であるため、これ以後はほとんどの人がカネミ油を摂取していなかった。また、カネミ油症が報道され、問題となる以前にほとんどの人が摂取を止めていたことが分かった。カネミ油症摂取期間は、ほとんどの人は6ヶ月以下であり、症状発症時期は早い人で昭和43年3月であり、ピークは昭和43年7月~10月であった。カネミ油摂取量に男女間に大きな違いはみられなかったが、全体的にみると0~10歳の低年齢層では0~1.0リットル、11歳以上では0.6~2.0リットルの摂取量で発症、認定されているという結果が得られた。
結論
発生から31年を経過し、発生当時のような急性症状を示す患者は少なくなった。しかし、一斉検診を受診した107名中82名に医療面の指導を行うように、原因が年齢からくるものなのか、体内に蓄積されたPCB、PCQからくるものなのか不明だが、患者の健康状態は良くない。油症の有効的な治療法が解明されておらず、体内に蓄積されたPCB、PCQが身体に及ぼす病気との因果関係が明確になるまでの間は、一斉検診を継続していく必要があると思われる。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)