畜水産食品中の化学物質残留防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
199900648A
報告書区分
総括
研究課題名
畜水産食品中の化学物質残留防止対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
三森 国敏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
-円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
α2アドレナリン受容体刺激剤xylazine(XZ)の代謝物である2,6-dimethylaniline(DMA)はラットの鼻腔に対して発癌性を示すことが報告されている。我々はDMAとXZについて1年間のラット鼻腔および甲状腺二段階発癌実験を行った結果、DMAは鼻腔に対して発癌プロモーション作用を示したが、XZでは甲状腺に対して発癌プロモーション作用を示す成績が得られた。ラットにおけるこれらの物質の発癌プロモーションメカニズムを解明することを目的として以下の実験を行った。
遺伝毒性発癌物質の検出に非常に感受性が高いことが示されているヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入トランスジェニックマウス(rasH2マウス) を用いてこのマウスがDMAに対して発癌感受性を示すか否かを検討した。
抗生物質のオキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン及びテトラサイクリン、抗コクシジウム剤のジクラズリル及びナイカルバジンについて残留検査法を検討した。
研究方法
実験I:DMAの発癌プロモーションメカニズムを解明するため、ジイソプロパノールニトロソアミン(DHPN)でイニシエーション後3000 ppmのDMAを52週間ラットに混餌投与した。実験II:XZの発癌プロモーションメカニズムを解明するため、ラットに1000 ppmのXZを4週間混餌投与し、血中甲状腺関連ホルモンの測定を実施した。実験III:XZの甲状腺ヨウ素取り込みないし有機化阻害の有無を検討するため、ラットに1000 ppmのXZを混餌投与し、投与7、14日目にヨウ素を腹腔内に投与した。
ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入トランスジェニックマウス(rasH2マウス)にDMAを26週間反復投与し、その発癌感受性を検討した。
抗生物質のオキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン及びテトラサイクリン、抗コクシジウム剤のジクラズリル及びナイカルバジンについて、畜水産食品中の残留検査法を検討した。
結果と考察
実験I:DMA投与初期より、高度なボウマン腺の萎縮と嗅上皮の配列不整、続いてボウマン腺の拡張および増殖、嗅上皮の変性および未分化嗅上皮細胞の増殖、さらに、嗅上皮の過形成、異形成巣、腺腫および癌が認められた。鼻腔のボウマン腺がDMAの標的組織であり、DHPNでイニシエーションされた組織にボウマン腺由来の鼻腔腫瘍が誘発されるものと推察された。実験II:XZを投与したラットにおいて血清T4の有意な減少は1、2、4週で認められており、XZの甲状腺プロモーション作用は血中T4の減少に基づくTSHの上昇に起因することが明らかとなった。実験III:XZ投与開始2週では甲状腺のヨウ素取込み量および有機化率は有意に減少したことから、XZ投与によるT4の減少は甲状腺へのヨウ素取り込みないし有機化阻害に起因することが示唆された。
rasH2マウスではDMAの投与により何等発癌性は示さなかったが、DMA投与rasH2 マウスにラット同様背鼻道部鼻腔粘膜に嗅腺の萎縮を主体とした病変が認められたことから、DMAの投与期間を延長することにより鼻腔腫瘍が誘発される可能性が推察された。
オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン及びテトラサイクリンの残留検査法を開発した。定量下限はオキシテトラサイクリン、テトラサイクリンが0.02 ppm、クロルテトラサイクリンが0.03 ppmであった。各試料に対する回収率は平均で75~100%であり、相対標準偏差はいずれの試料も5%以内であった。ジクラズリル及びナイカルバジンの残留検査法を開発した。定量下限はジクラズリル0.1 ppm、ナイカルバジン0.02 ppmであった。各試料に対する回収率は平均で80%以上であり、相対標準偏差はいずれの試料も3%以内であった。
結論
XZおよびDMAの発癌プロモーションメカニズムの解析を行った結果、DMAの標的部位は鼻腔嗅上皮粘膜のボウマン腺で、誘発される腫瘍はボウマン腺に由来することが示唆された。一方、XZの甲状腺発癌プロモーション作用は甲状腺のヨウ素取り込みならびに有機化阻害による視床下部・甲状腺系ネガティブフィードバック機構を介した甲状腺の増殖が関与していることが示唆された。
rasH2マウスを用いたDMAの鼻腔腫瘍誘発の有無を検討した結果、rasH2マウスはDMAに対して発癌性は示さないことが明らかとなった。
オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、テトラサイクリン、ジクラズリル及びナイカルバジンについて残留検査法を検討し、実用に適する検査法を確立した。

公開日・更新日

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