諸外国におけるHACCP等に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900643A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国におけるHACCP等に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 省二(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮城島一明(京都大学大学院)
  • 佐藤勝也(日本輸入食品安全推進協会)
  • 藤原真一郎(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
11,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1995年の世界貿易機関(WTO)発足により、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス)において審議勧告される食品衛生関連の各種規格等が各国の食品衛生規制に実質的な影響を与えることとなった。食品安全に関連する各国の規制は、法規制の基本的考え方、生活文化等を背景として、それぞれ独自の体系を持ち、各種コーデックス規格を自国の食品衛生規制に取り入れていくには様々な困難が予想される。また、既存の食品衛生規制とコーデックス規格の差異が、食品の安全性や貿易上の問題として、具体的にどのような影響があるのか明確にされていない。特に我が国は、多種大量の食品を輸入しており、国際的に流通する食品に対して有効な食品衛生規制を講じる方策を検討する必要がある。本研究においては、HACCPシステムと食品衛生規制に関連する事項、衛生規制や食品表示の方法論、遺伝子組換え食品、行政組織等を対象とし、国際機関、諸外国における現状を調査して我が国における望ましい食品衛生規制の方向性を明らかにすることを目的とする。
研究方法
諸外国におけるHACCP関連事項については、第3回国際食品安全及びHACCP会議において、HACCP導入における実務上の諸問題、食品安全における要求事項、HACCPにおいて管理すべき重要な危害因子、HACCPの前提となる一般的衛生管理プログラムの各事項について情報を収集するとともにこれらに関連する国際的な動向も調査した。また、第32回コーデックス食品衛生部会において討議された「小規模及び低開発営業におけるHACCP実行」に関連する諸問題について情報を収集した。
諸外国等における食品衛生及び食品表示に関する慎重原則の適用に関する事項については、食品衛生の分野で近年提唱されている慎重原則の概念の理解が日本において十分でないことから、国際機関、諸外国政府等が公表した文献を調査分析し、慎重原則に係る用語と概念、現在までの経緯、WTO及びコーデックスにおける論議の現状を明らかにして将来の展望について考察した。
諸外国における食品規制方法に関する事項については、ニュージーランド及びカナダを調査対象とし、主に食品衛生規制のための制度、関連する行政機関の組織と役割、食品等の輸入手続きに関する事項についてとりまとめた。
さらに、食品衛生規制手法としてのHACCP適用に関する事項として、コーデックスにおいて1997年採択された「食品衛生の一般原則」改定及びHACCPガイドライン修正に関連するHACCP導入と実務上の問題点、HACCPを行政上ないし実務上どのように活用すべきかHACCP適用における政府機関及び食品産業の役割についての国際的検討が継続されている。これらの動向に関する文献を調査し、我が国の現状を踏まえて考察した。
結果と考察
HACCP実行における諸問題に関連して以下に示す事項についてとりまとめた。HACCP活用における実務上の問題点としては、企業の姿勢と経営管理、前提となる衛生管理プログラム、教育訓練、専門家チーム、HACCPの構築・維持・監査・評価等があげられる。食品安全における要求事項については、新開発食品における食品安全のデザインへの活用及び食品製造等の現場における衛生管理プログラムにどのように要求事項を統合するのか二つの側面から考慮すべきとされた。HACCPにおいて管理すべき重要な危害因子については、危害因子を確定する方法論及びリスクアナリシスと危害分析の異同の理解に基づく情報の交換と共有によって、製品の安全性を担保する衛生管理システムを構築する必要性が強調された。HACCPの前提となる一般的衛生管理プログラムとHACCPによる衛生管理の効果的な結合については、一般的衛生管理プログラムの位置付けと必要性の理解、検証と教育訓練の重要性が強調され、食品衛生管理手法に応じた段階的な移行(一般的衛生管理を実行するが文書なし→一般的衛生管理の実行と文書化→HACCPと一般的衛生管理の実行と文書化)モデルが提示された。小規模又は低開発営業における食品の安全性確保のための方法論については、1999年6月にオランダで開催された専門家会議の報告書を基にコーデックス食品衛生部会において討議された。ここでは、小規模営業等においてHACCPを実行するための戦略として、その利益と障害の分析を通じた障害の克服方法を勧告し、HACCP適用のためのガイドラインの修正を検討することとされた。以上の事項は、いずれも我が国におけるHACCPの普及促進と衛生規制の再構築のために不可欠の事項であり、引き続きこれらの国際的動向を注視しながら我が国の事情に応じた具体的方策について検討する必要がある。
食品衛生及び食品表示に係る慎重原則の適用についてその動向を調査した結果、米国と欧州における政策上の差異の経緯を踏まえ、今後、WTO、コーデックスにおける議論と国際協定(WTOのSPS協定)やコーデックスの食品規格とそれらに対応する国内法との関係の両側面での検討が進行すると考えられた。諸外国における食品規制方法について、ニュージーランド及びカナダを調査対象とし、主に食品衛生規制の制度、行政機関の組織と役割、食品等の輸入手続きに関する事項を明らかにした。食品衛生規制手法としてのHACCP適用について、1997年以降のWHO、コーデックスにおける関連する会議の報告書、勧告等を調査し、我が国の食品衛生規制を再構築する観点から検討した。このほか、我が国の衛生規制とコーデックス「食品衛生の一般原則」における基本的考え方の差異、規制機関等による衛生管理の評価(規制評価)の必要性、HACCP実行の制度として任意と強制の差異、規制評価の要素と活動内容等について調査した。
結論
国際機関、諸外国等における食品の安全性確保の現状を把握し、我が国の食品衛生規制の方向性を明らかにすることを目的として、HACCP関連の国際会議の動向、諸外国における食品規制制度、輸入手続き、HACCP評価の方法論等についてとりまとめた。食品衛生管理の基盤が脆弱な食品の製造施設や小規模営業においてHACCP導入を促進するために必要な問題解決手法に関連する国際動向に留意しつつ、我が国における食品衛生規制の再構築について検討した。また、食品の衛生、表示における慎重原則の適用について、今後とも国際機関等における議論の動向を注視する必要がある。諸外国の食品衛生規制方法については、将来の二国間又は多国間での相互認証が現実的な課題になると予想されることから、その同等性評価に必要な情報を蓄積し、適宜フォローアップする必要がある。

公開日・更新日

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