食品中の有害物質等の評価に関する研究

文献情報

文献番号
199900639A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の有害物質等の評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 合田幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 米谷民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 内山貞夫((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
34,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全性及び健全性を確保するために必要な情報は、食品汚染物に関する情報と食品中の天然有害物情報である。食品中の化学物質の継続的なモニタリングとそれらに対する人間の暴露状態即ち日常の経口摂取量の把握とは、化学物質による食品汚染に関するリスクアナリシスの一環として食品衛生行政研究に不可欠な二本柱である。最近特に内分泌攪乱作用を示す環境ホルモンによる生体影響が大きくクローズアップされていることから、そのような化合物も含んだ本研究の食品汚染実態調査と暴露量調査は極めて重要な意味を持つ。好酸球増多筋肉痛症(EMS)に関し今後の同様な食中毒発生を未然に防止することを目的に、1999年に公表された関連研究論文を検索した。アフラトキシンの試験法については、新規多機能固相カラムとHPLCを利用した方法の有用性を評価した。脳卒中易発性ラットへの投与で大豆油に比べ生存期間が短縮すると報告されている菜種油について、原因物質の可能性があるとされている植物ステロール類について混餌投与ラットの心臓及び血管中濃度を調べた。
研究方法
1.日常食の汚染物摂取量及びモニタリング調査研究:1)FAO/WHO合同食品及び飼料汚染物モニタリング計画に対応して定められた項目について、食品中の含量を調査したデータの全国的な集計処理と保存を行った。更に全国10ヶ所で実施したトータルダイエットスタディーの結果につき我が国の平均的データを作成した。2)モニタリングデータ収集は誤入力をサーチするチェックプログラムを組み込んだウィンドウズ用Excelにより実施した。3)食品部にサーバを設置し、データ変換及び検索用プログラム作成を開始した。
2.必須アミノ酸製品等による健康影響に関する調査研究:主に1999年に発表されたEMS、有毒油症(TOS、toxic oil syndrome)及びメラトニンに関する論文を、データベースとしてMEDLINE、CA、SCISEARCHを用いて検索した。
3.アフラトキシン告示試験法の改良に関する研究:新規多機能固相抽出カラム(Myco Sepカラム)で精製し、分析に蛍光検出HPLCを利用した方法を検討し、多種食品への応用性を調べた。
4.菜種油中のステロール類の検索と評価に関する研究:正常血圧ラット(WKY)に26週間菜種油または大豆油を混餌投与し、菜種油、心臓血管中の6種植物ステロールをGC/MSで帰属確認しSIM法で定量した。また脳卒中易発性ラット(SHR-SP)に混餌飼料を42日まで強制経口投与し、膜標本中のステロール量及び Na+-K+ATPase活性を測定した。
結果と考察
1.日常食の汚染物摂取量及びモニタリング調査研究
国内及び輸入食品汚染物のモニタリング件数は今年度約19万件が追加され2000年初頭現在253万件に上った。これらのデータから食品汚染物の検出レベルの経年変化、全国平均値及び汚染食品の種類、汚染レベル等が明らかとなった。また重金属、農薬等の1日摂取量を明らかにした。なお各食品群に関し定量下限値の1/2を用いても、汚染物の摂取量はそのADIを超えることはなかった。統計情報部に蓄積されたデータの食品部への移管に伴う設備及びソフトの準備を開始した。
2.必須アミノ酸製品等による健康影響に関する調査研究
5-OHトリプトファン中不純物のpeak Xが4種混合物で、その主体が神経毒の4,5-tryptophan dioneであった。メラトニンからは7種不純物を検出した。TOSについては、起因汚染物質として有望視されていたオレイン酸アニリドの他に関連化合物として3-(N-penylamino)-1,2-propanediol(DPAP)の1,2-di-oleylエステルを検出した。
3.アフラトキシン告示試験法の改良に関する研究
新規多機能固相抽出カラムとHPLCを利用した方法では、毒性の高い溶媒を使用せずに現行の通知で分析が規定されたナッツ類の他、米、ソバ、唐辛子等12種の食品で分析が可能であった。また蛍光3次元検出器を用いた確認試験が可能となった。
4.菜種油中のステロール類の検索と評価に関する研究
26週間混餌投与したラット(SHR-SP)の心臓及び血管中には、大豆油投与に比べ2~3倍量の植物ステロールが蓄積されていた。菜種油及び大豆油10w%添加飼料またはコレステロール0.6%添加菜種油を投与したSHR-SPラットでは、血漿及び赤血球膜中コレステロールレベルに差はなかったが、相対的コレステロール比は低下した。菜種油投与群の脳、心膜標本のNa+-K+ATPase活性が大豆投与群と比較し上昇傾向があり、脳では本ATPase活性とウアバイン感受性の本活性の両者が、心ではデウアバイン感受性の本活性が有意に上昇したが、コレステロール添加菜種油投与群では上昇抑制傾向があった。
結論
1.日常食の汚染物摂取量及びモニタリング調査研究
全国約63自治体研究機関との緊密な協力により行われているモニタリング調査、及び10機関との協力により行われているトータルダイエットスタディーによる汚染物摂取量調査結果から、我が国における食品汚染のバックグランドレベル及び摂取量が明らかとなり、我が国の食生活の安全性を検証できた。食品部への蓄積データ移管のためサーバを設置し、データ変換及び検索に必要なプログラムを作成している。
2.必須アミノ酸製品等による健康影響に関する調査研究
EMSに関する新知見はなく、トリプトファンに代わって問題視されている5-OH Trpとメラトニン中不純物について新知見が得られていた。これら店頭で容易に入手可能である製品中不純物の多くがトリプトファン事故品中不純物のpeak Eと同族構造のものであり、長期に亘る高濃度摂取がEMS様疾患発生につながる危険性がある。3.アフラトキシン告示試験法の改良に関する研究
多機能固相抽出カラムとしては、Isolute MultimodeカラムよりMyco Sepカラムで分析時間が短縮されることが分かった。本法は34種食品試料の添加回収実験で良好な結果が得られた。本アフラトキシンの分析方法は簡便で、高毒性溶媒を利用せず、従来法とほぼ同等の精度と正確さで分析可能である。また確認試験法として3次元蛍光検出器も有用であることが分かった。
4.菜種油中のステロール類の検索と評価に関する研究
菜種油投与による短命化、昇圧あるいは赤血球の脆弱化等と相対的コレステロールレベル低下には関連性がないと推察された。コレステロール添加菜種油投与SHR-SPでは、菜種油摂取の影響を受けたと見られる赤血球機能及びNa+ポンプ機能に改善が見られた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)