ダイオキシン類の排泄促進に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900619A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類の排泄促進に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
森田 邦正(福岡県保健環境研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類は極めて体内に残留し易い毒物で、母親から胎児へ、母乳から乳児に移行する等人体への影響が懸念されている。また、人体への暴露は90%以上が食品を摂取することによることが明らかとなっている。本研究では、ダイオキシン類の吸収及び排泄機構の解明と排泄促進法の開発を目的として、1)ダイオキシン類の消化管吸収を抑制し、体外に排泄促進する方法を解明する。2)すでに体内に蓄積したダイオキシン類を消化管経由で効果的に体外に排除する方法を解明する。3)上記知見を総合してダイオキシン類の人体汚染を未然に防止する食生活の方法を開発提示する。これまでの研究から、クロロフィルにはダイオキシン類の消化管吸収を抑制する作用と体内から直接消化管内に排出されるダイオキシン類の再吸収を抑制する作用があることが示唆され、クロロフィルを多く含む野菜類にはダイオキシン類の排泄促進作用が期待された。このことから、平成10年度の研究では、16種類の野菜を用いてダイオキシン類の吸収抑制実験を実施した。その結果、小松菜、みつば、ほうれん草及び青じそ等の緑色野菜はダイオキシン類を体外に排泄促進する作用があることが明らかとなった。平成11年度は、クロレラから精製したクロロフィルを用いて、ダイオキシン類の排泄を促進し体内蓄積を防ぐ作用について検討した。
研究方法
1群4匹のウイスター雄ラットに、基本食と0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5%のクロロフィル食を投与した。ダイオキシン類は7種のPCDD及び10種のPCDFが混入した標準試薬をそれぞれの飼料に添加して1回与えた(10ng/body)。ダイオキシン類投与後5日間の糞を採取し、糞中のダイオキシン類をソックスレー抽出し精製した後、高分解能GC-MSで定量した。ダイオキシン類の糞中排泄量と体内蓄積量について、基本食群とクロロフィル群を比較検討した。
結果と考察
ダイオキシン類投与後5日間の糞中排泄量を測定した。その結果、ダイオキシン類の中で最も毒性が高い2,3,7,8-T4CDDの場合、0.01~0.5%クロロフィル群の糞中排泄量は基本食群と比べて1.6~14.1倍の増加が認められた。PCDFの中で最も毒性の高い2,3,4,7,8-P5CDFの場合、0.01~0.5%クロロフィル群の糞中排泄量は基本食群と比べて1.8~15.6倍の増加が認められた。7種のPCDDの排泄量の平均値は0.01~0.5%クロロフィル群が基本食群と比べて1.3~2.9倍増加した。10種のPCDFの排泄量の平均値は0.01~0.5%クロロフィル群が基本食群と比べて1.5~3.4倍増加した。投与量を0.01%から0.5%に増量するに従い、ダイオキシン類の糞中排泄量は増加した。クロロフィル投与量とダイオキシン類の排泄量との間には有意な正の相関関係が認められた(P<0.01)。ダイオキシン類投与5日後の体内蓄積量を測定した。その結果、7種のPCDD及び10種のPCDFの基本食群の体内蓄積量の平均値はそれぞれ投与量の73.9%、62.0%であった。これに対して、0.01~0.5%クロロフィル群の体内蓄積量は7種のPCDDで15.6~62.9%減少し、10種のPCDFで16.9~70.6%減少した。投与量を0.01%から0.5%に増量するに従い、ダイオキシン類の体内蓄積量は減少した。クロロフィル投与量とダイオキシン類の体内蓄積量との間には有意な負の相関関係が認められた(P<0.01)。これまでの研究結果から、クロロフィルはクロレラ、緑色野菜の約2%の投与量で、同等な効力を示した。このことから、緑色野菜等の排泄促進作用はクロロフィルが主たる食品成分であることが明らかとなった。クロロフィルによるダイオキシン類の排泄促進機構として、化学構造が平面であるクロロフィルが、同じく平面構造をもつダイオキシン類と複合体を形成することにより、ダイオキシン類の消化管吸収に影響を与えていると考
えられる。
結論
本研究結果より、クロロフィルは低用量でダイオキシン類の消化管吸収を抑制し、糞中に大幅に排泄促進する作用があることが明らかとなった。このことから、ダイオキシン類による健康影響を未然に防ぐ食生活の方法として、クロロフィルが多く含まれる小松菜、みつば、ほうれん草及び青じそ等の緑色野菜類を多くとることがが大切である。さらに、クロロフィルと食物繊維が豊富な海藻類(わかめ、ひじき、こんぶ、のり)にもダイオキシン類の排泄促進が期待される。

公開日・更新日

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