難治性炎症性腸管障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
199900573A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
下山 孝(兵庫医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 馬場忠雄(滋賀医科大学)
  • 日比紀文(慶應義塾大学)
  • 棟方昭博(弘前大学)
  • 樋渡信夫(東北大学)
  • 杉村一仁(新潟大学)
  • 味岡洋一(新潟大学)
  • 杉田 昭(横浜市立大学)
  • 畠山勝義(新潟大学)
  • 田村和朗(兵庫医科大学)
  • 櫻井俊弘(福岡大学)
  • 牧山和也(長崎大学)
  • 金城福則(琉球大学)
  • 松本譽之(大阪市立大学)
  • 高添正和(社会保険中央総合病院)
  • 福田能啓(兵庫医科大学)
  • 北洞哲治(国立大蔵病院)
  • 守田則一(大腸肛門病センター高野病院)
  • 今井浩三(札幌医科大学)
  • 坪内博仁(宮崎医科大学)
  • 八木田旭邦(近畿大学)
  • 山村武平(兵庫医科大学)
  • 佐々木 巖(東北大学)
  • 吉岡和彦(関西医科大学)
  • 中野博重(奈良県立医科大学)
  • 亀岡信悟(東京女子医科大学)
  • 名倉 宏(東北大学)
  • 岡村 登(東京医科歯科大学)
  • 古野純典(九州大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
対象を潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)に絞り、患者のQOL 向上を最大の目標にして、病因の追及、再燃・再発の予防、新治療法の開発を目指す。
研究方法
16のプロジェクト研究項目(p-1 ~p-16) を設定し、分担研究者・研究協力者全員が参加して調査研究を進めている。なお、より多くの症例を対象に検討し、従来とは異なった視点から調査・研究するために、分担研究者を28名に増員した。
結果と考察
結論
プロジェクトごとに成果を報告する。
p-1 UCとCDのデータ・ベースを拡張・充実する。UC12、541例、 CD7、793 例を集計した。また全国統一して患者の実態を調査し医療費受給資格の認定とデ-タベ-ス充実のため、新しく特定疾患個人調査表を作成した。この調査表を用い全国調査と重症認定を行いたい。
p-2 UCとCDの遺伝子異常を広い範囲で検討する。新たにUCとTNF-α遺伝子のアレル3 、CDとTNFR2 遺伝子のアレル2 との相関が得られた。ヒトゲノムの解析に当たっては、インフォームドコンセントを得て行っているが、現在共通システムを整備中である。
p-3 CDにおける食事脂肪の影響をみる研究を完遂する。脂肪を一定量負荷し、治療への影響を無作為割り付け多施設共同比較試験で検討しており、平成12年度完遂予定である。
p-4 UCとCDにおける免疫異常を検索する。IBD の病態にはNKT cell、活性化血小板、IL-7、IL-18、TNF -αの関与が知られた。治療との関係でIL-7、IL-18を重点的に検討する。
p-5 白血球除去療法の重点研究を完遂する。UCの治療効果を客観的に評価するために、シャム・カラムを用いた多施設共同無作為割り付け二重盲検試験を継続している。CDも大腸型で、白血球除去療法をパイロット的に試みている。平成12年度末には完遂したい。
p-6 UC難治例の大腸切除の適応を定める。難治例の症例検討を行った。手術適応については、重症・難治例ではステロイド量、入院期間、合併症発現を考慮して決定したい。
p-7 CDの腸管内抗原を検索する。CD患者の腸管局所にパン酵母抗原が検出された。今後、ブタ膵アミラ-ゼ含む新たな抗原蛋白の検討を継続する。
p-8 CD患者の食事の実態を調査する。基礎疫学研究班と共同でCD・UC の発病前および現在の食事内容調査のためのアンケ-トを作成している。平成12年度から調査を開始する。
p-9 CD患者の適切な食事を検討し、情報を患者に伝達する。ホームページ、IBD ニュース(JFCC発行)、公開市民講座や患者の相談会(平成11年度77回)で情報を提供している。
p-10 UC患者の癌とdysplasia を基準に癌surveillanceを確立する。UC癌化のhigh risk 群の基準を設定したので、臨床系分担研究者全員でsurveillance studyを行う事とした。
p-11 UCとCD患者のQOL を治療法による影響を含めて検討する。基礎QOL 班と共同で日語版IBDQを用いて、患者の現在のQOL を治療法による差も含めて調査することにした。
P-12 新診断基準、重症認定基準を作る。平成10年度に作成したUCとCDの重症認定基準を新しい個人調査票を参考にして作成し、医療給付の対象を決定したい。
p-13 新治療指針、重症例の治療内容を明示する。白血球除去療法を含めた新治療法を治療指針に組み込むため検討を行っている。
p-14 腸内細菌の病因論的検討を行う。UCとCD腸粘膜上の細菌の検索が進んでいる。
p-15 消化管機能改善、環境改善を考える(食品、その他)。CDでは水溶性線維が便の正常化に有効であった。UCでは腸内細菌の健全化のためprobioticsの研究を進めている。
p-16 新治療法を開発する。抗TNF-α抗体、抗IL-18 抗体、IL-7 をCDに、HGF を難治性UCやCDの難治性痔瘻や腸管狭窄に、免疫抑制剤をUCの緩解維持に用いるため検討している。
研究に際し、臨床では患者の人権を尊重し、実験では動物愛護精神に基づき行っている。
以上のまとめと今後の方針を述べる。
疫学的検討:新しく特定疾患個人調査表を作成したので、全国統一して患者の実態を調査し、適切な医療費受給資格の認定とデータ・ベースを充実することが可能となった。今後、学会など関係機関とのコンセンサスを得て実行したい。
病因・増悪因子の検索:UCとCDの病因には遺伝子、免疫異常、食事など多くの因子が関与しており、おのおのについて研究を進めてきた。
遺伝子の検討では、UC・CD患者に新たな異常が判明した。今後、これらについて多施設において症例を増加して検討するとともに、他の遺伝子異常も継続して調査する。
免疫異常の検索において、炎症性腸疾患では多数の免疫異常が観察された。また、腸内細菌や食事内蛋白抗原など腸管内環境の研究も進んでいるので、免疫異常と関連付けて検討する。
CDにおける増悪因子としての食事中脂肪の検討は本邦独自の研究であり、患者のQOL 向上のため早期に完結したい。一方、他の食事因子の検討のため、疫学班と共同で食事内容アンケ-トを作成しているので、次年度からアンケ-ト調査を開始する。
診断・治療:診断では医療の進歩に伴い診断基準を改訂している。また、新しい特定疾患個人調査表に沿った重症認定基準を検討しており、適切な医療費受給資格を決定する必要がある。関係機関と相談し実施したい。
治療では、白血球除去療法の治療効果を客観的に判定し、治療指針に組み込む。現在、治験中の治療法については、多施設において検討する。本邦独自の治療法として、CDには抗IL-18 抗体、IL-7を、UCにはHGF の有用性を動物実験、臨床試験で検討を進める。
UCとCDの手術適応と手術時期を新しい診断基準・内科的治療指針のもとに決定する。UC患者の癌surveillanceを効率よく行うためにリスクの高い対象患者の病態を決めたので、次年度から多施設において実行する。
患者への還元:患者のQOL を定量的に評価するため、QOL 班と共同で日本語版IBDQをいアンケート調査を開始することにした。
診断・治療を含め、新しい情報は継続してホームページや公開講座、患者の会などで発信を続ける。
今後、以上の調査研究を継続し、患者のQOL 向上および医療費削減に貢献したい。

公開日・更新日

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