前庭機能異常に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900568A
報告書区分
総括
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
八木 聰明(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤壽一(京都大学)
  • 久保 武(大阪大学)
  • 高橋正紘(東海大学)
  • 工田昌也(広島大学)
  • 室伏利久(東京大学)
  • 渡辺行雄(富山医科薬科大学)
  • 北原糺(大阪労災病院)
  • 重野浩一郎(長崎大学)
  • 鈴木衞(東京医科大学)
  • 竹田泰三(高知医科大学)
  • 富山俊一(日本医科大学)
  • 中村正(山形大学)
  • 朴沢孝治(東北大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
前庭機能異常を引き起こす疾患の中でもその原因が不明であり難治性疾患でもあるメニエール病及び遅発性内リンパ水腫の病因、診断基準、治療方針、予防法、を明らかにし、患者実態の把握と疫学的解析を合わせて行うことを目的としている。
研究方法
病因解明として液性免疫によるモデル動物の完成に向けた研究を行う。また、モデルの確立を1年目に行い、残りの2年でそれらを検証すると同時に臨床例との橋渡しを行う。患者血清を用い、内耳自己抗体を2次元電気泳動マッピングにより特定する研究を軌道に乗せる。遺伝子レベルの問題として、メニエール病患者の遺伝子解析を行う。診断基準と治療指針の策定に関しては、本年度にワーキンググループを作り、基準の構築に関する研究を開始する。2-3年度目には、実際にこれを用いて診断や治療を行い評価し修正する。自己抗体が特定できれば、これを診断基準に入れることにより、確定診断が可能になる。治療に関しては、予防(免疫抑制剤やフリーラジカル抑制剤の使用)に関する治験を多施設で行うための準備を進める。本年度は治験の準備期間であり、2年度目から実際の治験を、3年度目に評価を行う。この際、患者には十分なインホームドコンセントを得る。疫学分析に関しては、3年間を通して特定地域でのメニエール病と遅発性内リンパ水腫症例の有病率と罹患率(対10万人)の調査を行う。また、過去の同地域での結果との比較を行う。各研究者の施設における患者数やその動態を観察し、多地域、多施設の結果として特定地域での結果と比較検討する準備をする。
結果と考察
病因解明に関しては、遺伝子解析や内耳抗原の二次元泳動実験等が始まり、今後他覚的診断や治療に結びつくものと期待されている。一方、病因解明のための他方向からのアプローチとして、メニエール病動物モデルを用いた実験も進行中である。また、臨床的には遅発性内リンパ水腫患者の血清の自己抗体の蛋白同定を進めている。メニエール病の診断基準見直しを行い、同時に明瞭な診断基準のない遅発性内リンパ水腫の診断基準の確立のためのワーキンググループによる検討を始めた。両疾患の治療について基礎的研究を通して一部明らかになった分子レベルでの結果を生かし、多施設でその治療法を従来のものと比較する計画が軌道に乗りつつある。また、それが発作反復の予防につながるか否かについても検討することになっている。過去に行ってきた、メニエール病の疫学的調査(定点観測)を継続し、有病率、罹患率の推移について解析しつつある。遅発性内リンパ水腫については昨年分科会内で疫学調査を行ったが、今回はその範囲を広げ全国的レベルでの調査を行う。本疾患については、信頼できる資料がないのが現状である。昨年作成した重症度分類について検討しつつこれを確立し、疫学調査等に利用できるようにする。また、ここに上げた研究結果が得られた場合、全国どの施設でもこれらの結果を活用できるようになる。また、新たな方向として内耳の神経系再生に関する先端的研究も始まり、新しい知見が得られてきている。
結論
平成11年度は本研究期間の初年度にあたるが、目的で述べたメニエール病及び遅発性内リンパ水腫の病因、診断基準、治療方針、予防法、を明らかにし、患者実態の把握と疫学的解析を行うことに関し、一部はその結果が出ている。また、その他の大部分については3年間計画の初年度の結果として、概
ね予定通りの進行状態である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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