特発性造血障害に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900549A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
小峰 光博(昭和大学)
研究分担者(所属機関)
  • 小峰光博(昭和大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
52,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液系疾患の難病(特定疾患) の中、再生不良性貧血(再不貧)、溶血性貧血(溶貧)、不応性貧血(不応貧)、骨髄線維症の4疾患を対象に、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などについて、これまでの研究で未解決あるいは継続中の研究課題に取り組み、その成果を日常の医療現場に還元し、これらの疾患に悩む患者の福祉に役立つよう、達成可能な目標を設定しつつ、班組織の利点を生かして具体的な研究成果を追求する。
研究方法
改変された研究組織の規定に則り、主任研究者(班長)1 、分担研究者者(班員)9 、研究協力者23 、難病特別研究員 1、事務局 1の計35人からなる班を編成した。
顧問、幹事、監事は設けず、分科会形式もとらないこととした。対象4 疾患および横断的な領域である分子遺伝学、細胞移植療法、遺伝子治療の各分野を分担研究者が担当し、研究活動の主導と調整を行うこととした。はじめに未達成の課題を整理し、研究期間中に目標とするテーマを設定した。重要事項は班員会議で検討し、また再不貧の薬物療法に関する重点研究班と緊密に連携を図ることとした。
結果と考察
1)再不貧領域では、全国からの登録症例の電子媒体入力とその活用、造血のクロナリティ解析とその解釈、患者背景の一つとなる免疫学的異常の探索、不応貧との境界に位置する病態の解析、病像移行、免疫抑制療法の評価とそれに不応あるいは再発例に対する抗胸腺リンパ球グロブリン(ATG)製剤の反復使用の評価、サイトカイン療法、小児長期観察例における薬物療法と骨髄移植療法の比較、染色体異常を示す症例の解析、Fanconi 貧血の分子病態と遺伝子治療の予備的検討などについてそれぞれ成果が得られた。2)溶血性貧血では、自己免疫性溶血性貧血の自己抗原としてのRh蛋白上のエピトープ解析、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の臨床病態と自然歴に関する日米共同比較研究、PNH 患者における遺伝子異常の詳細な解析とクローンの交代/ 拡大の分析、マウスモデルの作成によるクローン拡大の機序の解明および健常者、再不貧患者、不応貧患者においてGPI 蛋白を欠くPNH 細胞の検出とその意義、また赤血球の膜蛋白異常の中アンキリン遺伝子異常による球状赤血球症のわが国における特徴の解明などについて着実な進展がみられた。3)不応貧では、新症例の登録体制の確立、既登録1,000 余例での長期生存例の解析と予後規定因子の抽出、国際予後判定システム(IPSS)のわが国における妥当性の評価などの臨床的側面に加えて、各個研究では造血関連遺伝子、シグナル伝達異常の関与、無効造血の培養モデル、血液細胞の分化を誘導する因子とそれに関わる分子機構など広範なテーマが取り扱われた。治療に関してビタミンK2によるアポトーシス誘導療法の実態調査で有望な成績を得たので、前方視的な共同研究を開始した。また、免疫抑制療法の有用性を客観的に評価することの必要性が論議され、パイロット試験へ向けての検討が開始された。4)骨髄線維症では、対象指定から3 年間で得られた知見を踏まえて、新症例の登録が開始され、本症の病態発生における幹細胞異常の検索のための検体集中送付が合意された。薬物療法や骨髄移植の有用性についても新たに調査研究を行うこととした。5)その他の横断的領域
では、病因・誘因としてのウイルスの検索の継続、染色体転座によって生じる融合遺伝子の検討から得られる白血病発症に関与する遺伝子とその異常の解析、骨髄非破壊的前処置法を用いた造血細胞移植療法( いわゆるミニ移植) のハイリスクMDS 症例への適用、Fanconi 貧血の遺伝子治療に向けての基礎的検討などについて着実な進展がみられた。
診断・治療など臨床に密着した課題の解決には有力な臨床施設の参加が不可欠であり、本班の構成はその期待にも十分応え得る充実したものである。難治性疾患の治療面での進歩には体系的かつ理にかなった多施設共同の臨床研究の実施が必須であり、この点を考慮した研究計画が立案され、それを実施する協力体制ができたと考える。
結論
初年度の研究活動は上にあげた具体的な目標に向けて順調に開始され、その成果は次年度以降に順次まとめられる見通しである。

公開日・更新日

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更新日
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