平衡覚障害の発症機序と病巣局在診断法に関する研究

文献情報

文献番号
199900510A
報告書区分
総括
研究課題名
平衡覚障害の発症機序と病巣局在診断法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
八木 聰明(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 馬場俊吉(日本医科大学)
  • 相原康孝(日本医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業(感覚器障害研究分野)
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
-円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平衡感覚器である半規管と耳石器の障害は、多くの場合一括されて考えられている。しかし、半規管は両側では3対、耳石器は2対存在する。従って、実際にはそれらの部分的な障害が考えられるし、その程度も異なる可能性も少なくないと思われる。また、そのような病態を考慮に入れなければ解釈できないような検査結果にも遭遇する。本研究では、主として末梢前庭器の部分病態によって生じる平衡覚障害を解明しようとするものである。
研究方法
本研究では、眼球運動三次元解析の手段として眼球運動のビデオ画像を用いた方法を採用した。眼球運動を正確に解析するためには、明瞭な眼球運動のビデオ画像を得る必要がある。眼球画像の撮影用ビデオカメラは、被験者(健常者及びめまい患者)に装着できる軽量なものであり、明視下、暗所下どちらの状態でも撮影が可能でなくてはならな。これらの点を解決するために、明視用と暗視用の赤外線CCDカメラ付軽量ゴーグルを開発する。平成11年度は、これらカメラの開発が進み、これを使った記録と解析を行い性能の検証を行う。眼球運動三次元解析システムは、ビデオ画像を画像認識技術によって解析する方法を外部委託業者とともに進め、新しいシステムが出来上がり、これを用いた健常者と平衡覚障害者の前庭性誘発眼球運動や自発眼球運動の解析を行う。また、メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、突発性難聴、迷路瘻孔などの主として内耳疾患症例のめまい発作時の眼振を記録・解析する。
結果と考察
眼球運動三次元解析法のための新しいシステムを外部委託業者と共同して開発し、一応の完成をみた。このシステム(video image analysis system: VIAS)のソフトウエアについては、希望がありこのソフトウエアの走るハードウエアを備えている研究者には供与できるような状態にした。赤外線CCDカメラ付ゴーグル(明視下用、暗視下用)の作成を進行し、暗視用赤外線CCDカメラ付ゴーグルについては完成した。一方、明視用カメラの作成は現在も進行中である。前庭刺激に垂直軸回転や非垂直軸科回転を用いているが、回転中の眼球運動画像をノイズの混入なく回転装置外に導くための赤外線電送装置を開発し用いた。前庭刺激による眼球運動の解析がなされ、内耳刺激とくに耳石器刺激(非垂直軸回転)による眼球運動の検討が大幅に進歩した。また、病的例(迷路瘻孔症例)の圧迫眼振の解析(眼振緩徐相速度ベクトル分析)から、人の半規管座標との相関が明瞭になった。このことから、前庭性眼振(病的例)の病巣局在を診断する方法の一つが確立されたものと思われる。
結論
平成11年度は、当初計画された目的の大部分において、その研究目標を完遂することができた。即ち、眼球運動三次元システム解析(VIAS)の完成、暗視用赤外線CCDカメラ付ゴールの完成、それらを用いた健常者及びめまい患者の前庭性誘発眼振と自発眼振の解析である。また、その結果内耳性めまいの病巣局在を診断する方法の一つを確立することができた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)