エイズ対策研究事業の企画と評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900498A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ対策研究事業の企画と評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
永井 美之(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田毅(国立感染症研究所)
  • 我妻堯(社団法人国際厚生事業団)
  • 田中憲一(新潟大学医学部)
  • 田中洋(法政大学経営学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
127,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界で医学的にも社会的にも問題となっているエイズを克服することは現在の医学研究者の使命である。この為には、基礎研究、臨床研究、更には、社会医学的研究と巾の広い分野において、限られた研究リソースを有効に使い成果を挙げなければならない。この為、研究費配分と研究成果評価を公正に行うことが必須であり、エイズ研究の専門家からなる委員会を設け、厚生科学エイズ研究事業の適正かつ円滑な実施を図る。なお、本年度で多くの課題が最終年度を迎えるので、それらをふり返り、かつ世界の研究を見渡した上で、来年度からいかなる視点でいかなる枠組みのもとにエイズ対策研究事業を構築するかについて検討するための研究協力者から成る検討委員会も設置することとした。研究協力者として、武部豊、山田章雄、竹森利忠(以上国立感染研)、木村哲(東大医)、岡慎一(国際医療センター)、岩本愛吉、塩田達雄(以上東大医科研)、福武勝幸(東京医大)、吉崎和幸(阪大)、木原正博(神奈川県がんセンター)、南谷幹夫(駒込病院)、山本直樹(東京医歯大)を委嘱する。さらに、他省庁から支援されるエイズ関連研究と交流し、連携を図り、それぞれの省庁の使命をふまえて、わが国のエイズ研究が無駄な重複を避け、総合的かつ統一のとれた形で発展するための第一歩として、3省庁(厚生、文部、科学技術)合同研究発表会を開催する。また、「エイズ予防対策におけるNGOの役割と活用に関する研究」「妊産婦のSTD及びHIV陽性率とHIV母子感染に関する研究」「エイズ予防の啓発の方法に関する研究」の3プロジェクトを組織する。
研究方法
1.研究目的を達成するために以下の会を開催した。
1)HIV/AIDS研究合同発表会 
平成11年5月14日(金)9:40-17:40 
於 国立感染症研究所
2)「エイズ臨床研究の現状と展望」に関する検討会
平成11年5月28日(金)13:30-16:00 
於 国立感染症研究所
3)「エイズ基礎研究の現状と展望」に関する検討会
平成11年6月10日(木)16:00-18:00 
於 国立感染症研究所
4)平成11年度中間・事後評価委員会
平成12年3月6日(月)9:30-17:00 
於 国立感染症研究所
2.エイズ予防対策におけるNGOの役割と活用に関する研究として以下のことを行った。
1)NGO活動の事例研究
エイズ予防対策の分野で活躍するNGO約30団体にアンケート調査を実施し、NGOが実施している活動事例を分類整理した。感染者及び患者のケアに関する活動、エイズ予防に関する活動、普及啓発に関する活動、カウンセリングに関する活動、国際的なネットワークに関する活動等に分類された。
2)NGOデータベース作成
エイズ予防に関するNGO約300団体のデータベースを作成した。活動種別、名称、地域等で検索できるものとした。
3)海外のエイズ予防対策に関わるNGOの活動事例研究
インターネットを活用し、海外のエイズ予防対策に関わるNGO約100団体の活動について研究し、主だった活動につき分類整理し、わが国のNGOと比較検討した。
4)海外の政府機関によるNGOの活用の事例研究
米国CDCの協力を得て、米国における政府機関とNGOとの協力事業に関し、代表的な事例を題材に、政府機関とNGOが協力していくために必要な環境、条件並びに協力のメリット、デメリットを研究した。
5)NGO活動研究会の実施
ライフ・エイズ・プロジェクトが実施する1999年度ボランティア指導者研修会に併せ、平成12年3月11日(土)セミナープラザ東中野において、NGO活動研究会を実施し、各NGOが行政に要望する事項につき、意見交換を行いとりまとめた。 
6)わが国のエイズ予防対策に関わるNGOの経緯についての研究
わが国のエイズ予防対策に関わるNGOの成立の歴史及び経緯を研究し、わが国で活動するNGOの活動の実態と活動の効果を明らかにし、また、行政的手法との違いを研究することにより、行政的手法の効果が発揮される分野とNGO的手法の効果が発揮される分野が如何なる分野であるのかにつき、考察し、現存のNGOの特徴、効果、条件等を研究した。
3.妊産婦のSTD及びHIV陽性率とHIV母子感染に関する研究
本邦におけるHIVを含めた性行為感染症(STD)の増加は重大な問題であり、その対策は緊急の課題である。これらの疾患は性的接触を介して感染するという特質を有しており、当然のことながらSTDは性成熟期にある女性に多く認められる。一般に、STD感染とHIV感染は悪循環を作り感染伝播することが知られている。すなわち、STD感染がある場合局所の粘膜組織の障害が生じ、HIV感染が生じやすくなり、一方HIV感染がある場合免疫能の低下が認められ、STD感染の危険性も高くなる。このような点からHIV及びSTDの蔓延の状況を把握することは極めて重要である。
そこで、本研究においては、大都市部での妊婦におけるHIV及びSTDの蔓延の程度を明らかにすることを目的として、以下の検討を行った。研究施設は、関東圏:日本赤十字社医療センター、葛飾赤十字産院、杏林大学医学部附属病院、済生会川口総合病院、伊勢原協同病院、中京圏内:国立名古屋第二赤十字病院、聖隷浜松病院、関西圏:国立大阪病院、大阪市立総合医療センターの9施設であり、集計施設は新潟大学医学部産科婦人科学教室である。
これらの施設において、妊婦を対象として、HIV及びSTDに関する以下の検査を行った。
1)血清中HIV抗体
2)子宮頚管クラミジアDNA検査
3)子宮頚管淋菌DNA検査
4)血清中ヘルペスI型抗体
5)血清中ヘルペスII型抗体
上記の9施設において約3,200名の妊婦について、上記の検査を施行し、全施設におけるHIV及び各種STDに関する陽性率、年齢別陽性率、妊娠回数別陽性率、地区別陽性率などを集計し解析した。
4.エイズ予防の啓発の方法に関する研究 
エイズについては一般的な日本人の間では、1990年代の半ばから比較すると相当関心が薄れ、また、一方では、エイズ・HIV患者が増加し、危険な水準に達しつつある状況下で、厚生省・エイズ予防財団を通じて行われてきたエイズキャンペーンはどのような成果を挙げてきただろうか。現在の世論からしてエイズについてどのような意識がもたれ、キャンペーンはどのような成果を挙げているのか、またどのようにしたら成果を挙げることができるのか、このような問題意識をもって、この研究は実施された。
この目的を達成するために以下の調査が実施された。
1)10代若者へのグループインタビュー
2)識者への詳細インタビュー
3)エイズに対する一般の意識調査
4)青少年を対象とした詳細な態度調査
本研究の結果、エイズについてどのような意識が一般に持たれているかをはっきりとさせることができた。またそれがどのようなデモグラフィックからできている層かも明らかにできた。ここでは、一般人がエイズについてどのような意識をもっているかを探索して、今後の作業の基礎とすることができた。
結果と考察
研究結果、考察及び1.今後のわが国のエイズ対策研究の前進の為に、とくに考慮すべき新しい面として、
1)いわゆる事業的なものをどう位置づけるかを明らかにすべきである。
2)感染者、患者の協力を得てヒトサンプルを分析し、その結果から学ぶという立場を強める必要がある。
3)感染免疫の基礎を含むワクチンの基礎理論を探求し感染予防ワクチン開発を意識した研究をたちあげるべきである。
4)発症予防、発症阻止法の開発に結びつく基礎的研究を強化すべきである。
以上の4点が明らかとなった。
また、3省庁各プロジェクト間の交流と連携を強める必要が指摘された。
2.エイズ予防対策におけるわが国のNGO活動の現状の把握と海外における同趣旨のNGO活動の比較などをとおして、行政的手法に対比し、NGO的手法がより有効な分野が解明された。
3.全国9施設約3,200名の妊婦についての解析からHIV及び各種STDに関する陽性率などが明らかとなった。
4.エイズのキャンペーンの諸団体との関連、特定の対象層におけるエイズ予防意識への変容のアプローチ、エイズ予防を実行させるための意識の持ち方、などに関して知見を得ることができた。ここからエイズキャンペーンの今後のあり方について反省点と改善点をまとめた。
キャンペーンのメッセージのあり方、広告実施についてのオリエンテーションのあり方、メディアの選択などについて勧告を行った。
結論

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)