ハンセン病の発生動向把握システムの開発に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900494A
報告書区分
総括
研究課題名
ハンセン病の発生動向把握システムの開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 英一(国立感染症研究所ハンセン病研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 長尾栄治(国立療養所大島青松園)
  • 牧野正直(国立療養所邑久光明園)
  • 石井則久(国立感染研ハンセン病研究センター)
  • 神 美知宏(全国ハンセン病療養所入所者協議会)
  • 吉澤浩司(広島大学医学部衛生学教室)
  • 尾崎元昭(兵庫県立尼崎病院皮膚科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
らい予防法廃止後日本ハンセン病学会有志により行われて来たハンセン病発生動向調査を強化、補完し、発生背景としてのわが国の本病の実態を明らかにし、長期に及ぶ適切な診断と治療に関する科学的根拠と目安を医療機関に提供出来るシステム構築への提言を行う事が目的である。
研究方法
ハンセン病研究センター、国立ハンセン病療養所、日本ハンセン病学会、入所者代表より成る研究班を組織し、現存のハンセン病発生動向把握調査、付加すべき必要情報と収集体制、分析方法、結果の還元方法等について現況分析、並びにより適切なハンセン病動向把握システム構築方法について検討した。倫理面への配慮を重視するため全国ハンセン病療養所入所者協議会代表が分担研究者として研究方法等について倫理面の検討及び疾病体験者としての助言を行った。
結果と考察
1997年のらい予防法廃止後、本病新患発生動向調査として日本ハンセン病学会委員がハンセン病療養所、本病を取り扱っている医療機関、施設に症例調査を依頼し、調査結果を集計してきたが症例のコンピューター入力、データーベース化には至っていない。また症例の年内総数把握は困難で1年ごとに訂正報告を出している。新患は大体年間14-5例で、4-5例位までの疎漏があった。また再発例、診断未確定症例の扱いについては検討不十分であった。以上の現行システムの改善方法として、前記のごとき既存のハンセン病学会のシステムを中心にハンセン病療養所、本病を取り扱っている医療機関、施設の各外来がネットワークを組み、新患、全国の入園者、在宅治療者、既治療者を対象とし、症例をコンピューターに登録し、データベースを作り動向把握システムの根幹として用いることが望ましいことがわかった。よってこのデータベースに新患の追加登録を行っていく。よって新患と再発患者の定義を明瞭にし、両者は登録項目も分ける。新患は現在の登録例以外に未確定症例も含めて登録する余裕を残す。登録内容には臨床的条項とともに化学療法の効果および病理検査等の結果も含ませる。以上の支援には既存のハンセン病医学啓発活動を活用する事が提言に含まれる事になった。本システムでの登録が提言される再発患者には当然従来の再発に関する定義どうり、菌陽性者と陽性とならない再発患者が含まれる。再発患者には前記のごとき従来の定義による臨床的治癒後の再発患者以外に、MDT/WHOの定義による再発者が算入されると混乱が生じる。よって再発の定義、診断基準を整理する必要がある。再発の重要な因子として用いられた化学療法剤の種類と菌陰性化後の経年数の重要な関係が今回の研究で明瞭に指摘されたので登録でもその点が重視される。また倫理面担当委員から再発の心配による服薬中止への懸念と今回の把握システムは新患並びに体験者にとって極めて重要な関心事で、そのためには略号などの最低限の個体識別方法は必要との提言を得た。
結論
ハンセン病の発生動向把握システムで扱う対象は新患、全国の入園者、在宅治療者、既治療者で、既存のハンセン病学会のシステムを中心とし、ハンセン病療養所、本病を扱っている医療機関の各外来がネットワークを組むことによって行う。そのためにハンセン病啓発活動によってネットワークが円滑に運用出来るように活動をサポートする。システム運用の根幹をなす取り扱い症例はコンピューター登録、データベース化する。これに新患を追加登録してい
く。また再発の母体となる既治療者もシステムに含まれるので、新患と再発患者の定義を明瞭にし、両者の登録項目は分ける。新患登録に関しては疑いのある人も含める余裕を残す。登録内容には臨床的条項とともに化学療法の効果、病理検査結果等も含ませる。また、登録症例の追跡調査を実施し、治癒成績の検討結果を治療指針に反映させるようにする。以上のような現状分析と改善の合意に基いた、新たなハンセン病の発生動向把握システムについて提言する。

公開日・更新日

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