大規模化する食中毒原因菌の疫学的指標としてのDNA型別、ファージ型別等の応用と新しい迅速型別の開発に関する研究

文献情報

文献番号
199900471A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模化する食中毒原因菌の疫学的指標としてのDNA型別、ファージ型別等の応用と新しい迅速型別の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
田村 和満(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺治雄(国立感染症研究所)
  • 竹田多恵(国立小児病院研究所)
  • 保科定頼(慈恵医大学医学部)
  • 宮本秀樹(静岡県環境衛生研究所)
  • 山井志朗(神奈川県衛生研究所)
  • 寺島 淳(国立感染症研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年のサルモネラ、腸炎ビブリオおよび腸管出血性大腸菌等による食中毒は大規模化と同時にグロウバル化してきている。とくに平成11年度は乾燥イカ菓子によるSalmonella Oranienburugの広域な食中毒事件の発生等があり、その疫学的解析に遺伝学的およびファージ型別等が調査研究された。また、研究開発としてDNAフィンガープリント法およびキットの評価試験がなされた。
研究方法
研究方法および結果= 各研究者の研究テーマはつぎのような課題で進められた。
1)腸管出血性大腸菌(O157以外の血清型)およびサルモネラの生化学的および血清型別による疫学的研究ー田村和満:1999年度に国立感研に収集された腸管出血性大腸菌(O157以外の血清型)の総数は165株で血清型は62種類に分けられ、前年度までより血清型の増加が顕著であった。
2)腸管出血性大腸菌の疫学的解析にパルスフィールド電気泳動法(PFGE)の有用性ー渡辺治雄:過去の研究調査より立証されているが、ファージ型別法について、改めて収集菌株でその有用性について検討した。その結果ファージ型別法もPFGEと同様に疫学的解析に有用であることがあきらかになった。
3)多剤耐性S.Typhimurium DT104の実態調査ー田村和満、寺島淳:先進国で問題になっているDT104について、その実態調査をさかのぼり調査をおこなった。その結果過去の散発事例から9株および集団の4事例から本菌株が分離されていたことが判明した。
4)フィンガープリント法を用いての各種食中毒原因菌の型別ー保科定頼:わが国の流行株を用い、DNAフィンガープリント法による遺伝学的解析をおこなった。その結果、グラム陰性桿菌にはpromiscuous(雑多な)プラスミドが存在するが、Inc P αプラスミド内のRK2,RP1,RP4,R68は菌種間に伝達され、宿主のDNA複製などを調節している。特に広域宿主のRK2プラスミドのkil Cフランキング領域であって、Oriを含めdna A結合配列をはさむアイテロン(繰り返し配列)をPCRプライマーとしてTTT CAT TGACAC TTG AGG GGCを確認した。したがってこのプライマーをDNA増幅することによって、サルモネラ属の菌株をDNAフィンガープリントすることができた。
5)病院由来株の腸管出血性大腸菌の解析ー竹田多恵:患者の重症化の予防及び、汚染源の拡散の防止を目的として、病院から分離される腸管出血性大腸菌(EHEC)について疫学的研究を行った。検体中の志賀毒素(Stx)検出にはオーソVT1/VT2 検出キットを用いた。その結果、本キットは患者便検体から直截応用でき、早期診断に有用であること、また、LPS-ELISAが原因菌不明の場合などに補助的な診断手段賭して有用であることがわかった。
6)静岡県における食中毒・感染症の統計疫学的分析と微生物学的解析の応用ー宮本秀樹:近年、腸炎ビブリオ、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、小型球形ウイルスなどの食中毒および感染症が大型化、広域化、国際化してきている。そこで、それらの分子疫学的解析と、DNA型別、ファージ型別、薬剤感受性試験等の迅速型別により疫学調査・研究をおこなった。その結果、これらの手法を用いることによって腸炎ビブリオ、サルモネラ、腸管出血性大腸菌では統計学的に有意の差が得られた。
7)神奈川県内の食中毒・感染症の疫学的調査と解析ー山井志朗:平成9ー11年間、腸管感染症の発生予測および流行防止に資するために、県下流域下水道、終末処理場流入水、放流水および河川水における腸管系病原菌の汚染実態を昨年に引き続き調査した。その結果、下水道はヒトの汚染を反映する役割が高く、調査期間中Salmonella EnteritidisやS. Oranienburgの検出状況からその汚染源の存在や流行の継続期間を解析することができた。

結果と考察
結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)