食中毒菌の検出方法、食品汚染の実態とその制御に関する研究

文献情報

文献番号
199900469A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒菌の検出方法、食品汚染の実態とその制御に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 進
研究分担者(所属機関)
  • 小沼博隆(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 山本茂樹(国立公衆衛生院)
  • 安居院宣昭(国立感染症研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成7(1995)年度
研究費
28,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年我が国において、腸管出血性大腸菌やサルモネラ、腸炎ビブリオ等による食中毒が急増し、その防御策の構築が急がれている。これら食品を媒介とする感染症の発生を防止するためには、原因食品の究明、当該細菌の汚染源と汚染経路の究明、生産流通における食品中の汚染細菌の挙動の究明等が必須である。本研究の目的は、以上を遂行するために不可欠な食品からの腸管出血性大腸菌や対策が急がれている腸炎ビブリオO3K6等の食中毒細菌検出のための妥当な方法を求めること、鶏卵の保管に伴うサルモネラの増殖への影響因子を究明しその防止方法を見いだすこと、0157摂食感染ハエ類の播種能力を解明することにある。
研究方法
1.種々の食材に腸管出血性大腸菌を接種してから冷凍保存し、冷凍保存中に損傷菌が出現するか否かをまず検討し、ついで損傷菌が出現する条件下で冷凍保存した食材を用いて、検出方法を比較検討することによって、凍結損傷菌を検出できる方法を検討した。2.季節の異なる時期に入手した殻付き卵および人為的に作成したひび割れ卵を、10-30℃下で保存し、保存期間中に逐次割卵してからシャーレに無菌的に割り入れ、卵白中にサルモネラ・エンテリティディスを接種し、その後の同菌の増殖を測定することによって、卵白のサルモネラ増殖支持(抑制)能を調べた。3.検体として市販のアサリむきみその他魚介類食品を用い、増菌培地として、2%NaCl加TSB(Difco)、アルカリペプトン(日水)、食塩ポリミキシンブイヨン(日水)、アルカリペプトン(日水)を、平板培地として、TCBS (Oxoid)、TCBS (日水)、クロモアガー・ビブリオを、自然汚染腸炎ビブリオの分離率を指標に比較検討した。4.自然汚染豚挽肉と同鶏挽肉を用いて、6種類の増菌方法と2種類の選択分離培地を組み合わせた方法によって、リステリア菌の分離を試みることによって、各方法を比較検討した。5.前年度に引き続きハエによる腸管出血性大腸菌の伝播に関する研究を進めた。腸管出血性大腸菌O157をハエに摂食感染させた後に、食材を30分間摂食させた直後、または一晩保存した後、食材表面のハエ排泄物汚染部位のO157菌数を測定した。
結果と考察
1.食材によっては、長期間-20℃に保存することによって、食材中に存在する腸管出血性大腸菌O157が損傷を受け、選択培地上で増殖できない状態になることがわかった。このような食材から、選択増菌のみによる方法と比較して高率に菌が検出できる方法として、非選択培地中での回復を含む検出方法を見い出した。冷凍保存された食材については、食材によっては腸管出血性大腸菌O157の検出方法として、本研究で見い出した方法を用いることを普及することによって、食中毒原因調査や食品の汚染実態調査ヘの活用を推進していく。2.鶏卵卵白のin vitroにおけるサルモネラ・エンテリティディス増殖能に及ぼす保存条件の影響を調べることによって、卵白のサルモネラ増殖支持能に季節変動があること、卵殻のひび割れによってサルモネラ増殖支持能が高まることが判った。これらの成績から、殻付き卵の保存に関しては、ひび割れ卵および夏場の卵に対してはより厳しい保存条件が必要であるものと考えられた。3.食品からの腸炎ビブリオ検出のための選択分離培地および増菌方法について、腸炎ビブリオにより自然汚染されている魚介類を検体として比較検討し、分離の容易さにおいて比較的優れている方法を見い出した。4.挽肉からのリステリア菌検出のための方法として、分離培地にBCM培地を用いた場合には、HalfFraser培地24時間ーFraser培地48時間の2段階増菌方法が最も優れていたが、分離培地としてPALCAM培
地を用いた場合には、増菌方法間に大きな差異は認められなかった。5.腸管出血性大腸菌O157に摂食感染したハエが食材を摂食することによって、食材を汚染させること、食材の保存条件によって同菌が著しく増加することが明かとなった。これらの成績から、ハエ類の発生源対策と駆除対策および食品の調理製造過程における衛生対策の重要性が明らかとなった。
結論
損傷腸管出血性大腸菌O157を高率に検出できる方法、鶏卵卵白のサルモネラ・エンテリティディス増殖能に及ぼす保存条件の影響、食品からの腸炎ビブリオ検出のための選択分離培地および増菌方法として優れている方法、挽肉からのリステリア菌検出のための増菌方法、腸管出血性大腸菌O157に摂食感染したハエによる食材の汚染等を明らかにした。これらの成績から、腸管出血性大腸菌や腸炎ビブリオ等の食品を媒介とする感染症の発生を防止するために不可欠な知見が得られた。

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