結核症及び非結核性抗酸菌症における生体防御機構の解明とその予防・診断・治療への応用(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900444A
報告書区分
総括
研究課題名
結核症及び非結核性抗酸菌症における生体防御機構の解明とその予防・診断・治療への応用(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
山本 三郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 光山正雄(京都大学)
  • 小林和夫(大阪市立大学)
  • 後藤義孝(宮崎大学)
  • 中田光(東京大学)
  • 菅原勇(結核予防会)
  • 本多三男(国立感染症研究所)
  • 赤川清子(国立感染症研究所)
  • 芳賀伸治(国立感染症研究所)
  • 山崎利雄(国立感染症研究所)
  • 持田恵子(国立感染症研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
① 結核菌噴霧感染によるモルモット肺結核実験モデルを用いてBCGの結核菌感染に対する防御効果を検討した。② BCGワクチンを遺伝子学的に補強し、新しいタイプのリコンビナントBCG結核ワクチンを作成する。③ rBCGワクチンLot K3を用いてrBCGの特性を観察した。④ 結核菌群からのBCGの鑑別同定法の確立に関する研究を行い、正確で、迅速なM. bovis BCGの鑑別同定法を確立する。⑤ 実験的抗酸菌感染症における抗菌化学および免疫間欠併用療法の開発 ⑥ 結核菌誘導肉芽腫におけるIL-4の役割に関する基礎的研究。⑦ 抗酸菌刺激によりマウスマクロファージから産生されるサイトカインのNRAMP-1遺伝子による調節 ⑧ マクロファージの結核菌に対する増殖及び殺菌機構の解明をめざす一端として、ヒト単球由来マクロファージのBCG及びM. aviumに対する感染感受性を検討した。⑨ 有毒結核菌病原性発現の解析を正常肺胞M?を用いて本来ヒトが示す結核菌感受性の原因を探るべく菌を取り込んだファゴソームがリソソームと融合する過程で発現するM?細胞内分子の動態を調べた。⑩ HIV感染者が肺結核を合併すると気管支肺胞洗浄液中にもまた細胞中にも著しくHIVウイルスが増加する。結核菌感染がどのようにマクロファージの抑制性の転写因子を誘導するのかを検討した。⑪ BCG由来の核酸画分(MY-1)はマウス正常脾細胞を刺激してIFN?産生を誘導できることが報告されている。細胞内寄生菌に対する感染防御の誘導において重要なIFN-?産生を積極的に誘導することは、感染抵抗性T細胞の分化誘導の亢進につながると考えられる。また、非特異的にIFN-?産生を誘導できる因子は、細胞内寄生菌に対する防御免疫誘導においてアジュバントとして機能すると考えられる。このような観点から、本研究ではMY-1の防御免疫誘導における免疫増強活性について解析した。
研究方法
モルモット当り103CFUのBCGを皮内接種し、8週後に噴霧装置内でモルモットに平均10CFUの人型結核菌H37Rv株を気道感染させた。リコンビナントBCG結核ワクチンの作成:標的遺伝子として結核菌の有する分泌型のα抗原蛋白及び類似の蛋白に着目し、その遺伝子をBCG東京株に発現させる。さらに培養液中に遊離する蛋白をWestern Blot法で確認し、リコンビナントBCGを作成した。結核防御免疫誘導を目的とした抗酸菌由来分泌型遺伝子の選択:これまでα抗原蛋白遺伝子を標的としたリコンビナントBCGワクチンを作製した。今回さらにMPB74蛋白遺伝子及び ESAT6蛋白蛋白遺伝子を増幅し、シャトルベクターに挿入した後、BCG東京株にトランスフェクションした。さらに培養液中に遊離する蛋白を特異抗体によってWestern Blot法で検出した。HIV-V3 領域と?抗原の融合たんぱく質をコードしたプラスミドを導入したrBCGを使用し、その凍結乾燥品をモルモットに接種後、in vivo における安定性と細胞性免疫の指標としてDTH反応の誘導能を測定した。結核菌群に特異的遺伝子の検索、プライマーの設計、遺伝子増幅、増幅産物の証明、プライマーの特異性を検討し、結核菌群の臨床分離株の鑑別同定可能かを調べた。また、BCGのsenX3-regX3のintergenic region(IR)のシークエンスを行い、77bpのmycobacerial interspersed repetitive unit (MIRU)の数を調べた。純系マウスに抗酸菌(非結核性抗酸菌やらい菌)を接種し、病変局所における宿主応答
を解析し、抗菌化学療法、サイトカイン免疫強化療法および間欠併用療法の有効性について探索した。IL-4欠損マウスをH37Rv結核菌株で経気道的に感染させた。感染暴露装置はGlas-Col社のを用いた。感染後7週して、マウスを解剖し、肺、脾、肝、腎組織標本を作製し、病変の程度を評価した。肺病変におけるサイトカインmRNAの変化を追跡するために肺組織を凍結保存した。脾細胞をために肺組織を凍結保存した。脾細胞をELISAで測定した。またH37Rv刺激肺胞マクロファージからのNO産生能を調べた。 近交系マウスC57BL/6N(Bcgs)と自家繁殖させた同系統のBcgコンジェニックマウス(Bcgr)を実験に用いた。M.avium Mino株とM.tuberculosis強毒株(H37Rv)を用いた。M-CSF及びGM-CSFで誘導したマクロファージは、それぞれM-Mφ及びGM-Mφと称する。ラット肺胞M?細胞株にBCGあるいはH37Rvを感染させ(MOI=1~5)経時的に細胞を回収し、抗酸染色および還元培養により菌の感染と増殖を、アガロースゲル電気泳動およびウエスタンブロッテイングにより宿主細胞のアポトーシス(DNA断片化)と細胞内分子の発現を調べた。THP-1マクロファージはPMAを添加し、1昼夜培養することにより、付着性のマクロファージへと分化させた。ヒト肺胞マクロファージは気管支肺胞洗浄法により得た洗浄液からプラスチックシャーレ付着法により精製した。IFN-?産生:マウス脾臓を無菌的に採取し、6.25x106 /mlの濃度になるように完全培地に懸濁した。48穴組織培養用プレートにこの懸濁液0.4 mlを入れ、100 ?lのMY-1で24時間刺激し、培養上清を回収した。上清中のサイトカインはEIA法で測定した。
結果と考察
モルモットにワクチン投与後低菌量の強毒結核菌を噴霧感染させ、惹起された肺結核症の程度で評価する実験系は現時点で実施可能なヒト肺結核に対するワクチン評価系として最も信頼されている。分泌型抗原遺伝子発現リコンビナント結核ワクチンの作製:α抗原及びMPB74分泌蛋白遺伝子の発現はリコンビナントBCG培養濾液を用い、その中に分泌された蛋白抗原を各々の特異抗体で結合性を見ることにより、Western Blot法で確認することができた。ESAT6遺伝子をベクターに組み込み分泌蛋白としてBCG菌から遊離できるかどうかを現在確認中である。このESAT6のBCGはさらにα抗原遺伝子が発現できるようになっており、両方の蛋白遺伝子の発現を検討中である。α抗原及びMPB74遺伝子発現リコンビナントBCGをモルモットに接種し経時的に蛋白特異的なDTHの発現を見ると抗原特異的に強い遅延型皮膚反応が誘導された。Strain 2又はStrain 13モルモットはリコンビナントBCGの抗結核免疫の評価のために有用である。結核菌DNAをコードする5組のプライマーを用いてM. tuberculosisとM. bovisの迅速鑑別が可能になった。わが国では、BCG接種後に分離された抗酸菌が、M. bovisのパターンをとれば、BCGと断定しても差し支えないと思われる。抗酸菌感染無胸腺ヌードマウスは防御性サイトカインであるIL-12の投与に反応し、宿主内から抗酸菌を排除することに成功したが、副作用として、肉芽腫炎症の増強を認めた。抗菌化学療法とサイトカイン免疫強化療法の併用療法は最大の防御と最小の病変形成を示した。IL-4欠損マウスの肺に大きな肉芽腫が認められた。野生マウスの病変より有意に大きかった。壊死性病変は認められなかった。その肺組織内の結核菌数も増加していた。6.5ヶ月後のIL-4欠損マウスの肺病変は野生マウスのそれより拡大し、悪化していた。組み換えマウスIL-4投与により肺肉芽腫病変は縮小したが、完全に治癒しなかった。これまでに開発されたマウスの結核症モデルにおいて用いられてきたヒト型結核菌はNramp-1遺伝子型にかかわらずマウス臓器内で増殖を続け、M.aviumを代表とする他の抗酸菌モデルの結果とはかなり異なっている。M.tuberculosisがNramp-1遺伝子の支配を受け付けない理由は現在のところよく分かっていない。ヒト単球由来GM-MφはM. avium の増殖の場とし作用すること, しかしM-Mφは増殖抑制活性が強いことが知られた。GM-Mφは、ヒトの肺胞マクロファージに 似た形質を示すことより、このマクロ
ファージで、M. aviumの増殖が強いことは、非定型抗酸菌や結核菌がヒトの肺で良く増殖することと関連する可能性が示唆された。NR8383細胞においてBCGは増殖できずH37Rvは増殖するという、ヒトが本来示す結核菌感受性がNR8383を用いて再現できた。M?活性化因子であるIFN-?によってもRab5が低下することが宿主の感染抵抗性とどのように関連するかは今後の検討課題である。結核菌がマクロファージに感染すると抑制性の転写因子C/EBPβが誘導されHIVの転写が抑制されるが、この反応はインターフェロンのシグナル伝達経路を介し、ISFG-3の形成と核への移行によると考えられる。単球ではこの反応が起こらず、従ってHIV産生が亢進してしまう可能性が高い。C3H/HeNマウス脾細胞をMY-1で刺激したところ、強いIFN-?産生が認められた。脾細胞よりDX5陽性のNK細胞を除去するとIFN-?産生は著しく抑制された。このとから、このNK細胞が主要なIFN-?産生細胞であることが確認された。さらに、このIFN-?産生はSephadex-G-10カラムを通過した細胞ではほとんど認められなかったことから、MY-1で誘導されるIFN-?産生にはマクロファージの関与が必要となることが示された。マクロファージが産生するサイトカインがMY-1刺激で誘導されるIFN-?産生に必須であると考えられる。そこで、各種サイトカインに対するモノクローナル抗体を加え,そのIFN-?産生を調べた。抗IL-12抗体を加えた場合のIFN-?産生は抗体を加えていない場合に比べて60 %程度に抑制された。また、抗IL-18抗体を添加した系ではその産生はコントロールの15 %程度に抑えられ、これら2種類の抗体を同時に添加するとその産生はさらに弱まることが示された。ノックアウトマウスのIFN-?の産生はいずれの場合も非常に弱いことがわかった。結核菌感染はファゴソームマーカーを減少させることが明らかにされた。結核とHIVの重感染におけるウイルス動態の検討を行った。
結論
本研究でも病理組織所見は臓器内菌数をよく反映し、またこれらの結果はヒトの結核に対するBCGの「肺結核は50%発病率が低くなり血行性の結核性髄膜炎や粟粒結核などの重症結核には高い有効性を認める」という評価とよく一致し実験系の信頼性が確認された。α抗原及びMPB74分泌蛋白遺伝子発現はリコンビナントBCGを作成した。結核菌群からのBCGの正確で、迅速な鑑別同定法を確立した。実験的抗酸菌感染症における抗菌化学および免疫間欠併用療法を開発した。結核菌誘導肉芽腫においてIL-4が役割を持つことを明らかにした。マウス結核症モデルにおいてヒト型結核菌はNramp-1遺伝子型にかかわらずマウス臓器内で増殖を続け、M.aviumを代表とする他の抗酸菌モデルの結果とはかなり異なることが明らかとなった。ヒト肺胞マクロファージに 似た形質を示すGM-MφではM. avium が増殖の場とし作用することから非定型抗酸菌や結核菌がヒトの肺で良く増殖することと関連する可能性が示唆された。BCG由来の核酸画分(MY-1)がマウス正常脾細胞中のNK細胞をを刺激してIFN?産生を誘導することが示された。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-