文献情報
文献番号
199900430A
報告書区分
総括
研究課題名
人工抗体ライブラリーの作製とその利用法の開発(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
黒澤 良和(藤田保健衛生大学総合医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(人工血液開発研究分野)
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
57,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は「臨床に役立つヒト抗体を単離し、大量調製する」ことを目標に実施している。研究は2段階に分かれており、最初はそれをスクリーニングするだけで様々な抗原に対する抗体が必ず単離できる理想的なヒト抗体ライブラリーを作製すること、第2段階は抗ウイルス中和抗体、抗毒素中和抗体を単離することである。平成9,10年度の研究で第1段階を終了し、平成11年度は第2段階に関して2種の対象(ジフテリア毒素、水痘帯状疱疹ウイルス)を選び、パイロット的に中和抗体単離を試みる。
研究方法
平成10年度までの研究で、数10名のヒト臨床材料を用いた1,000億種の独立したクローンからなる抗体ライブラリーの作製を完了していた。更に精製した抗原が利用可能な状態で、その抗原に結合する抗体を単離する方法も確立していた。そこで平成11年度は具体的にヒト抗体が存在すれば治療薬として使用されることの期待される疾患を選び、パイロット的に抗体単離を試みることにした。方法として国立感染研高橋元秀博士と共同研究でジフテリア毒素を中和する能力のあるヒト抗体単離を行うことにした。具体的には3種混合ワクチンとして用いられているジフテリア毒素のトキソイドを抗原として最初その抗原に結合するという性質を示す抗体をファージ抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって多数単離する。次に単離した抗体について各々ジフテリア毒素中和活性を測定する。中和活性を示した抗体については、ファージ抗体から完全なヒト抗体(IgG1)へと遺伝子レベルで変換し、その遺伝子を動物細胞へ導入してヒト抗体を分泌する形質転換株を得る。そのヒト抗体について毒素中和活性を正確に測定して治療に必要な量を見積もる。研究として疾患(対象)ごとにこの段階まで進行させることにした。同様のことを富山医科薬科大学白木公康教授との共同研究で水痘帯状疱疹ウイルスについても行うことにした。抗原の調製と抗体の中和活性の測定は白木グループが担当し、抗体ライブラリーのスクリーニング、抗体の調製とヒト抗体への変換は我々が行う。
結果と考察
我々の抗体ライブラリー(AIMS-4)は数10名のヒト臨床材料を基にそこで発現されている抗体遺伝子を試験管内で再構築したものである。そこで既にヒトの中でワクチン接種やウイルス感染などにより優れた中和能を示す抗体がつくられている可能性の高い抗原を対象とすると、比較的容易にそのような抗体が単離できると予想された。結果は予想通りであった。
ジフテリア毒素中和抗体単離 最初、高橋博士より現在3種混合ワクチンとして用いられているジフテリア毒素のトキソイド型抗原を供与して貰った。それに対して抗体ライブラリーをスクリーニングして抗原に結合する数10種の抗体が含まれていることが判明した。その詳細な解析では、相互に変異の導入によってできている関係にある抗体が多くあり、大きく分類すると4種の抗体を基にその派生物と考えられた。各々の抗体を一価抗体の状態(Fab-cp3融合型抗体)で調製して、ジフテリア毒素の中和活性を測定した。その結果、1種類の抗体が2つの異なるアッセイ系を用いて再現性よく強い毒素中和活性を示すことが判明した。そこでその抗体遺伝子を取りだして完全なヒトのIgGI型抗体をコードできる遺伝子に変換した後、動物細胞に導入した。現在確立した形質転換株が分泌するこのヒト抗体の中和活性を採取的に正確に測定しており、その後大量生産系に移す予定である。
水痘帯状疱疹ウイルス中和抗体単離 富山薬科大学白木教授が水痘ウイルスのタンパクgB、gH、gEを精製し、我々に供与した。それを用いてファージ抗体ライブラリーをスクリーニングしたところ、各々様々な結合力で抗原に結合する抗体が得られた。それを分類後、抗体を白木教授に送付し、ウイルス中和活性を測定してもらった。その結果gHに結合する抗体の中で数種類が強いウイルス中和活性を示した。
ジフテリア毒素中和抗体単離 最初、高橋博士より現在3種混合ワクチンとして用いられているジフテリア毒素のトキソイド型抗原を供与して貰った。それに対して抗体ライブラリーをスクリーニングして抗原に結合する数10種の抗体が含まれていることが判明した。その詳細な解析では、相互に変異の導入によってできている関係にある抗体が多くあり、大きく分類すると4種の抗体を基にその派生物と考えられた。各々の抗体を一価抗体の状態(Fab-cp3融合型抗体)で調製して、ジフテリア毒素の中和活性を測定した。その結果、1種類の抗体が2つの異なるアッセイ系を用いて再現性よく強い毒素中和活性を示すことが判明した。そこでその抗体遺伝子を取りだして完全なヒトのIgGI型抗体をコードできる遺伝子に変換した後、動物細胞に導入した。現在確立した形質転換株が分泌するこのヒト抗体の中和活性を採取的に正確に測定しており、その後大量生産系に移す予定である。
水痘帯状疱疹ウイルス中和抗体単離 富山薬科大学白木教授が水痘ウイルスのタンパクgB、gH、gEを精製し、我々に供与した。それを用いてファージ抗体ライブラリーをスクリーニングしたところ、各々様々な結合力で抗原に結合する抗体が得られた。それを分類後、抗体を白木教授に送付し、ウイルス中和活性を測定してもらった。その結果gHに結合する抗体の中で数種類が強いウイルス中和活性を示した。
結論
我々の作製したヒト抗体ライブラリーは臨床に役立つヒト抗体単離に、少なくともその対象が既にヒトの中でワクチン接種が行われている疾患やウイルス感染したヒトが多い疾患については極めて有効であることが示唆された。今後更にB型肝炎ウイルス等についても中和活性を示す抗体単離ーその改良を行う予定である。
公開日・更新日
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更新日
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