ミトコンドリア脳筋症の発症予防と治療法開発の研究

文献情報

文献番号
199900377A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリア脳筋症の発症予防と治療法開発の研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 雄一(国立精神・神経センター神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 林純一(筑波大学生物科学系)
  • 埜中征哉(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア脳筋症患者の約70%は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)に変異をもつ。患者の細胞の中では、変異mtDNAと正常mtDNAがそれぞれのミトコンドリアのなかで共存して存在している。そして、何らかの要因で変異mtDNAの比率が高いミトコンドリアが増加し、一定の値(閾値)を越えると細胞の機能が障害され、病気が発症する。本研究の目的は、細胞の中の変異mtDNAを多く含むミトコンドリアを減少させ、変異mtDNAの少ないミトコンドリアを増加させる方法を見出して、発症予防や治療法を開発することにある。
研究方法
(1)自然経過で改善する乳児良性型チトクローム酸化酵素欠損症や変異mtDNA比率が改善した症例などの特殊例の患者細胞株を樹立する。(2)細胞から1度ミトコンドリア分画を分離し、そこに外からDNAを導入した後、ミトコンドリアを細胞にもどす方法(2段階導入法)を開発する。(3)欠失を有する細胞と点変異を有する細胞を融合させることで、両方の変異mtDNAの動態から、変異mtDNA/正常mtDNA比率の変動に関わる内因性因子の研究を行った。核DNAに対するmtDNA量の相対量、すなわち一細胞におけるmtDNA絶対量を測定する新しい方法を開発する。(4)モデル動物を用いた病態・治療研究を行う。
結果と考察
(1)自然に改善する乳児良性型チトクロームc酸化酵素欠損症の培養細胞株を確立し(後藤)、また、血液1mlから得たミトコンドリア分画を培養細胞に導入する方法を確立した(林)。(2)新鮮で純度の高いミトコンドリア分画を得る方法、ミトコンドリアにエレクトロポレーション法にてDNAを導入する条件、ミトコンドリアをマイクロインジェクションで細胞に戻す方法を確立し、ミトコンドリアへの2段階DNA導入法が実用段階に入った(後藤)。(3)変異mtDNAの比率を変化させる内因性因子の研究として、異なる変異を有する細胞株を融合させる実験を行い、互いに他の障害を補いあう(代償作用)ことが明らかになった(林)。またTaqTan PCR法を用いて、核DNA対するmtDNA量を測定する方法をあたらに開発した(埜中)。(4)欠失mtDNAを有するマウスを作製し、その骨格病理等を検討した(林、後藤、埜中)。現在Nature Geneticsに投稿中である。
結論
変異mtDNA/正常mtDNAの比率を変化させて、細胞を正常な機能に保ち(予防)、または機能を回復させる(治療)ことをめざして進めている今回の研究において、この2年間の成果は最終年度の研究につながる成果となった。とくに、欠失mtDNAマウスの成功は、病態研究、治療研究に応用できる。また、2段階DNA導入法による任意な変異導入が可能になれば、さらに新しいモデル動物の作製が可能になる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-