先天異常モニタリング等に関する研究

文献情報

文献番号
199900318A
報告書区分
総括
研究課題名
先天異常モニタリング等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
住吉 好雄(横浜市立大学客員教授、横浜市愛児センター所長)
研究分担者(所属機関)
  • 竹下研三(鳥取大学脳研脳神経小児科)
  • 中川秀昭(金沢医科大学公衆衛生学教室)
  • 黒木良和(神奈川県立こども医療センター)
  • 平原史樹(横浜市立大学医学部産婦人科)
  • 夏目長門(愛知学院大学歯学部口腔外科学第二講座)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦において、様々な催奇形因子にたいし継続的監視を行う事はわが国に於ける国民の健康の維持、向上のために重要なことである。本研究はこの目的のため、全国レベルでの先天異常の継続的モニタリングを行うことにより有害な環境因子をはじめとする種々の催奇形因子を早期に特定し、さらに疫学的検討を行いわが国におけるサーベイランス・システムを確立し、維持することである。
研究方法
1972年より実施されてきた全国270病院を対象とした日本母性保護産婦人科医会(日母と略す)の先天異常モニタリング・システムと1981年より心身障害研究として実施されてきた先天異常モニタリングのうち現在まで継続されてきた4つの先天異常モニタリング・システム(鳥取県、石川県、神奈川県、ならびに東海3県を対象とした口唇・口蓋裂だけのモニタリング)から共通のマーカー奇形を経時的に集計し、わが国における先天異常の発生状況の監視を続ける。本年度は各モニタリングシステムで従来実施してきた方法でモニタリングを続けると同時に四半期毎のデータの集計が可能かどうかを検討し、新しい方法によるデータの収集は平成12年1月から開始することとした。また日母のモニタリングシステムで最近増加傾向の見られる奇形について他のモニタリング・システムでの動向を比較し又日母のデータの地域別発生動向についても検討を加えた。
結果と考察
日母のモニタリングにおける1972年から1998年迄の27年間の年次推移をみると、1997年1.24%、1998年1.59%と急増がみられたが、これは1997年より8種類の心奇形を新たにマーカー奇形に加え、その全心奇形の割合が1997年、25.8/1万出生、1998年、43.8/1万出生と高値を示しそれによる増加と考えられ、心奇形が加わる以前の成績とは別に統計処理をする必要があると考えられる。
日母の成績で増加傾向の見られる奇形には、ダウン症候群、水頭症、尿道下裂、二分脊椎症があり、これらについて、他のモニタリング・システムとの比較をみると、
a)ダウン症候群:日母の成績では1993年頃から、徐々に増加の傾向がみられ、1998年には有意の増加がみられている。神奈川県、鳥取県、石川県すべてに同様の増加傾向が見られている。
b)水頭症:日母の成績では1990年頃から有意の増加が見られている。鳥取県、石川県では1998年急増がみられている。
c)尿道下裂:日母の成績では、1998年に有意の増加が見られ、石川県でも同様に1998年増加がみられている。
d)二分脊椎症:日母の成績では1985年、1993年、1995年に有意の増加がみられ、鳥取県、石川県では1998年に急増がみられている。
結論
この先天異常モニタリングの究極の目的は、環境にとりこまれた催奇形物質を早期に発見し、それ以上同じ原因による先天異常児が出生しないよう予防することにあり、一つの監視機構である。わが国において現在活動中のモニタリングは、日母が27年、鳥取県が24年、石川県、神奈川県、東海3県がいずれも19年と長期にわたり継続されており、十分その役割を果たしている。本年度は、日母の成績で増加傾向のある4つの疾患について、日母の成績の地域別の発生状況、ならびに他のモニタリングの1998年の成績との比較を行った。その結果、ダウン症候群では全てのモニタリングで増加傾向が認められ、その原因としては、高齢出産の増加、ならびに診断・治療技術(心臓外科、一般外科等)の著しい進歩により、ダウン症児の生存率が著しく改善されたためであろうと考えられる。水頭症については鳥取県、石川県で1998年急増が見られ、これも出生前診断・治療技術の進歩によるものが大きいと考えられる。尿道下裂については、日母、石川県で1998年に有意の増加がみられている。二分脊椎症に関しては、鳥取県、石川県で1998年急増がみられている。心奇形に関しては日母の2年間の成績では、かなり多くの症例がみられており、これら疾患と環境汚染化学物質、内分泌攪乱物質との関連に関して関係があるとする文献もみられ今後検討することが必要である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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