幼児のライフスタイルに対応し「食事」を指標とする食教育の枠組みに関する研究

文献情報

文献番号
199900306A
報告書区分
総括
研究課題名
幼児のライフスタイルに対応し「食事」を指標とする食教育の枠組みに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
足立 己幸(女子栄養大学)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井治子(山梨県立女子短期大学)
  • 高橋千恵子(国際学院埼玉短期大学)
  • 長谷川智子(大正大学)
  • 針谷順子(高知大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
幼児のライフスタイルに対応し,心身の健康づくりや健全な食習慣の形成に貢献できる「食教育の枠組」を日常の食事や発育・発達の実態をふまえて構築し,その必要性と有効性を明らかにすることである。具体的には幼児期の特殊性をふまえた「主食・主菜・副菜を基本とする料理選択型食教育の枠組」を構築し、実践性の高い食教育マニュアルを作成する。平成10年度は1日を単位とし,エネルギー・栄養素選択の指標となる「給与エネルギー・栄養素の質と量」,並びに食品(食材料)選択の指標となる「食品構成」の適正値の検討を行い,具体的な数値を提示した。加えて、1食を単位とし,料理選択の指標として活用できる「食事を構成する主な100料理」を抽出し、家庭における摂食量を基に、各料理のポーションサイズの第1案(以下、第1案)を作成した。平成11年度は,第1案をベースに各料理のポーションサイズについて、①児の体格、1日のエネルギー・栄養素摂取量の適否、料理の盛り付けスタイル等による標準化の検討、②保育所での各料理の摂食量、③外食堂での子供向けメニューの供食量との整合性の検討,④絵を用いた食物嗜好把握の可能性の検討等により、第1案の100料理が課題に対して妥当であるかについて検討する。その上で⑤100料理の、食文化・調理の文化性や作業合理性等を加えて総合的に検討し、幼児にとって身近で、料理選択型食教育の指標として活用できる「食事を構成する主な料理第2案」を作成する。 ⑥第2案として抽出した各料理のエネルギー・栄養素構成、食材料構成等を算出し、ポーションサイズを示すと共に各料理を実物大写真とデジタル画像で記録する。⑦全プロセスをふまえ、「幼児のライフスタイル、食事パタン等をふまえた料理の体系図」を構築する。
以上のプロセスをふんで、次年度に行う介入研究による本指標の有効性に関する検討の準備を完了する。
研究方法
全体討議と分担研究の繰り返しを密に行った。各分担研究の課題と結果については次のとおりである。
①幼児の体格、1日のエネルギー摂取量及び料理の盛り合わせからみた身近な料理のポーションサイズの標準化(足立、高橋、酒井):肥満群と普通群間で,夕食の摂食重量,エネルギー量に差がみられたが,各料理の摂食量には特に差がみられなかった。肥満傾向群で,1つの食器に複数の料理を盛りあわせた朝食を摂取する傾向のあることが明らかとなった。ポーションサイズの標準化にあたり,若干検討すべき料理がみられたものの,概ね平成10年度に示したポーションサイズを標準値として扱ってよいものとした。
②保育所給食におけるポーションサイズの検討(酒井):家庭での摂食量と保育所給食での摂食量を比較すると,保育所での料理別摂食量が家庭より多い料理タイプ,少ない料理タイプ,違いがみられない料理タイプに分かれ、幼児自身が盛りつけるバイキング給食などの供食形態により、摂食量がかなり差があることが明らかになった。
③幼児用外食メニューのポーションサイズ(高橋):食環境面にけるポーションサイズの検討の一つとして,外食堂における幼児用メニュー(以下,「幼児用メニュー」)は,家庭の食事に比して全体的にエネルギー量が高く,かつ副菜料理の出現が極端に少ない等の問題点が確認された。
④食物嗜好の発達に関する検討(長谷川ら):幼稚園児と大学生について42種の食物の絵カードを用いた食嗜好評価を行った。幼児は大学生よりも、“健康に必要な食べ物"を嫌い、“おやつとなる食べ物"を好んだ。学童期から思春期へ変化がみられ、特に“健康に必要な食べ物"で顕著であった。絵を用いた食物嗜好評価の可能性が明らかになった。
⑤料理の食文化、調理面の検討及び料理製作(針谷ら):第1案の100料理を料理選択型栄養教育の枠組みである「主食、主菜、副菜の組み合わせ」を用い、料理の文化面と、加熱方法などの調理面から検討した。第1案について飲み物、塩乾物や漬物等を整理統合して17種を削除し、文化圏、季節性、主材料、調理時間等を加味して23種加え合計115料理とした。総括討議の結果、130料理を抽出し、第2案とし、各料理を試作し、実物大写真とデジタル映像で記録した。第2案の130料理について幼児が摂取した料理の重量やエネルギー・栄養素構成を踏まえてレシピを作成した。料理のポーションサイズは、エネルギーから見た場合、大人のそれの約60%となった。
結果と考察
以上の結果、幼児にとって身近で、料理選択型食教育の指標として活用できる「食事を構成する主な料理130種類」が抽出された。130料理は本研究成果の一つである「幼児のライフスタイル・食事パタン等を踏まえた料理の体系図(主食・主菜・副菜群別主材料別に、調理法をクロスさせたマトリックス)」にのせて提示された。抽出された主な料理は、次のとおりである。<主食群>は、白飯、おにぎり、五目ご飯、雑炊、オムライス、チキンライス、炒飯、親子丼、カレーライス、いなりずし、ちらしずし、まきずし、サンドイッチ、あんパン、ぶどうパン、うどん、焼きそば、ラーメン、スパゲティナポリタン、食パン(バターロール)、チキンマカロニグラタン、ホットケーキ、コーンフレーク、計23種。<主菜群>はイカリングフライ、エビフライ、鮭バター焼き、鮭塩焼、マグロの刺し身、煮魚(アジ)、小魚(キス)のマリネ、アコウダイの粕漬け、ブリの照り焼き、練製品(さつま揚げ)、ハムソテイ、ウインナーソーセージのソテイ、ハンバーグステーキ、メンチカツ、鶏の照り焼き、鶏唐揚げ、焼肉、肉団子の野菜あんかけ、シュウマイ、餃子、肉・野菜炒め、ロールキャベツ、豚汁、ゆで卵、うずらの卵、目玉焼き、厚焼き卵、オムレツ、スクランブルエッグ、茶わん蒸し、厚揚げの野菜あんかけ、凍り豆腐の卵とじ、納豆、麻婆豆腐、冷奴、五目煮豆、牛乳、ヨーグルト、チーズ、おでん、水炊き(鴨鍋,蟹鍋含)、計41種。<副菜群>は青菜のお浸し、かぼちゃ煮物、青菜のごま和え、ピーマンのソテイ、プチトマト、茹でいんげんのしょうゆかけ、茹でブロッコリーのソースかけ、茹枝豆、にんにくの茎と肉のソテー、きゅうり・キャベツの塩もみ、野菜炒め、根菜の煮物(大根他)、レタスのサラダ、コールスローサラダ、レタス、生野菜 (レタス・トマト・キュウリ)、線キャベツ、野菜スープ、コーンスープ、クリームシチュー、ポテトコロッケ、フライドポテト、ポテトサラダ、里芋の煮物、肉じゃが、さつま芋とりんごの甘煮、れんこんのきんぴら、マカロニサラダ、うずら豆の甘煮、きのこの蒸し焼きレモン風味、ひじきの煮物、わかめの酢の物、果物ヨーグルトかけ、計33種。<もう一品群>は汁、漬物、飲料、果物、菓子等33種。
結論
130料理の抽出並びにその栄養素レベル,食材料レベル,食器や盛り付けを含めた料理レベル、食事レベル等のデーターベース化が可能になったので、平成12年度に実施する、幼児、養育者、保育士、栄養士等を対象とする介入研究の準備が整った。その成果でさらに修正を加えて、幼児期の特殊性をふまえた「料理選択型食教育の枠組み」の構築とその食教育マニュアルとしての具体化が可能になる。

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