文献情報
文献番号
199900293A
報告書区分
総括
研究課題名
健康志向型による乳幼児健康診査の介入効果(育児不安・育児能力・育児不安軽減・対処行動)に関する対照群を含む追跡研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
星 旦二(東京都立大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
乳幼児健康診査において健康志向型に子育てを支援する介入策を企画・実施し、育児不安および健康診査を受診しての満足度を評価指標としてその介入効果を明らかにする。
研究方法
主として介入実証疫学を活用し、同時に記述疫学・分析疫学を活用する。
Ⅰ 国内外の文献を収集し、健康志向型の子育て支援モデルを設定する。
Ⅱ ①事前調査:4カ月児健康診査の受診1カ月前に郵送する健康診査の案内にアンケート用紙を同封し健康診査当日回収する。この事前調査により介入群前の2群の属性を明らかにし、2群間に差がないことを確認する。健康診査の受診日によって対照群と介入群の2群にわける。②4カ月児健康診査における介入:介入群に対して新しく作成した健康志向型子育て支援マニュアルを用いて実施し、対照群については従来の方法で対応する。③事後追跡調査:健康診査受診1カ月後アンケートによる追跡調査を実施する。
Ⅲ 調査対象地区は都市型として神奈川県2市、人口規模の少ない地区として宮城県登米保健所管内5町である。
Ⅰ 国内外の文献を収集し、健康志向型の子育て支援モデルを設定する。
Ⅱ ①事前調査:4カ月児健康診査の受診1カ月前に郵送する健康診査の案内にアンケート用紙を同封し健康診査当日回収する。この事前調査により介入群前の2群の属性を明らかにし、2群間に差がないことを確認する。健康診査の受診日によって対照群と介入群の2群にわける。②4カ月児健康診査における介入:介入群に対して新しく作成した健康志向型子育て支援マニュアルを用いて実施し、対照群については従来の方法で対応する。③事後追跡調査:健康診査受診1カ月後アンケートによる追跡調査を実施する。
Ⅲ 調査対象地区は都市型として神奈川県2市、人口規模の少ない地区として宮城県登米保健所管内5町である。
結果と考察
①健康志向型の母子保健に関する総合的な文献レビューを行った。
アメリカ合衆国厚生省はこれからの母子保健について従来の病気や病気と関連したリスクを早期に発見するという方法から、もっとポジテイブな発想から特に父親を含めた家庭が子どもと共にどのように成長していくのかを支援する方向性「デイジーズ・オリエンテイド(病気の発見を志向する)」から「ヘルス・オリエンテイド(健康づくりを志向する)」の発想へ転換することを提示した。また病気と関連したリスクを早期に発見するのは専門家だけが中心となるのではなく、毎日接触する両親にもその能力を持たせ、家族や両親のケア能力を向上させていこうとする手法を導入すること、中でも特に父親の役割が大きく評価されている。さらに成長するのは子どもだけでなく家族も楽しく成長していこうという「ファミリー・デイベロップメント」の提案も示されている。カナダでは乳幼児を対象とする発達を検診する「デンバー方式」に効果があるかどうかについて無作為に分けられた追跡調査によって両群に有意な差がみられなかったことが確認されている。さらに「デンバー方式」を実施された群が実施されなかった母親より育児不安度が有意に高かった。
このような結果をもとに②育児不安規定モデルと各変数的指標の検討を行った。育児不安と関連のあるとされる要因を不可逆的要素(個人属性)と介入によって変化させることができる可逆的要素(子育て環境)の二群に大別した。子育て環境要因としてソーシャルサポートと夫のサポート、子育て観、近所の母親友達数、社会活動への参加、対処行動、自己評価をあげた。以上のモデルを検証するために、③健康志向型の子育て支援モデルを作成した。これは直接乳幼児健康診査に携わっているスタッフとの会議を通して理念の共通理解を図り、現在の問題点を検討して健康支援介入マニュアルを共同作業により作成し、乳幼児健康診査の場面において介入群に実施した。知識普及型の講義形式から対話型へ変換させたこの方法によって、母親は自由に日頃の子育ての大変さを交流し、日頃の子育てを振り返る機会となっていた。出産後ほとんど外出できず閉じこもりがちな母親には同じ月齢の子どもや母親に多く出会う機会となり、「仲間」への意識を広げた。また地域母子保健情報や子育てグループ情報はともに自分の住んでいる地域を意識づけることへつながった。この介入効果を疫学的に検討するため④事前・事後調査のアンケートを作成し、宮城県登米保健所管内5町と神奈川県内2市を対象地区として300人を越す対象に追跡調査を行った。
アメリカ合衆国厚生省はこれからの母子保健について従来の病気や病気と関連したリスクを早期に発見するという方法から、もっとポジテイブな発想から特に父親を含めた家庭が子どもと共にどのように成長していくのかを支援する方向性「デイジーズ・オリエンテイド(病気の発見を志向する)」から「ヘルス・オリエンテイド(健康づくりを志向する)」の発想へ転換することを提示した。また病気と関連したリスクを早期に発見するのは専門家だけが中心となるのではなく、毎日接触する両親にもその能力を持たせ、家族や両親のケア能力を向上させていこうとする手法を導入すること、中でも特に父親の役割が大きく評価されている。さらに成長するのは子どもだけでなく家族も楽しく成長していこうという「ファミリー・デイベロップメント」の提案も示されている。カナダでは乳幼児を対象とする発達を検診する「デンバー方式」に効果があるかどうかについて無作為に分けられた追跡調査によって両群に有意な差がみられなかったことが確認されている。さらに「デンバー方式」を実施された群が実施されなかった母親より育児不安度が有意に高かった。
このような結果をもとに②育児不安規定モデルと各変数的指標の検討を行った。育児不安と関連のあるとされる要因を不可逆的要素(個人属性)と介入によって変化させることができる可逆的要素(子育て環境)の二群に大別した。子育て環境要因としてソーシャルサポートと夫のサポート、子育て観、近所の母親友達数、社会活動への参加、対処行動、自己評価をあげた。以上のモデルを検証するために、③健康志向型の子育て支援モデルを作成した。これは直接乳幼児健康診査に携わっているスタッフとの会議を通して理念の共通理解を図り、現在の問題点を検討して健康支援介入マニュアルを共同作業により作成し、乳幼児健康診査の場面において介入群に実施した。知識普及型の講義形式から対話型へ変換させたこの方法によって、母親は自由に日頃の子育ての大変さを交流し、日頃の子育てを振り返る機会となっていた。出産後ほとんど外出できず閉じこもりがちな母親には同じ月齢の子どもや母親に多く出会う機会となり、「仲間」への意識を広げた。また地域母子保健情報や子育てグループ情報はともに自分の住んでいる地域を意識づけることへつながった。この介入効果を疫学的に検討するため④事前・事後調査のアンケートを作成し、宮城県登米保健所管内5町と神奈川県内2市を対象地区として300人を越す対象に追跡調査を行った。
結論
健康志向型の子育て支援介入モデルを作成し、介入マニュアルに沿った介入調査を行った結果、予備調査の結果では介入群に受診満足度が高く、手段的評価の一つである「対処行動」は介入群がポジテイブであった。乳幼児健康診査の機会を活用して「母親同士の交流」の場を設け、育児を負担に感じることなく、子育ての楽しさや母親同士が交流することの楽しさを経験し、困ったときに相談したいという両親のセルフケア能力を高めることを目的とした介入方法が、健康志向型の子育て支援サービスとして有効である可能性が示唆された。
公開日・更新日
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