精神医療における看護ケア必要度に関する研究

文献情報

文献番号
199900280A
報告書区分
総括
研究課題名
精神医療における看護ケア必要度に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
池上 直己(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
看護ケアの効率的かつ適正な提供を進めるには、その基盤として、看護ケアの必要度を把握する方法の確立が求められている。その方法としては、看護ケア等の必要度を反映し、且つ臨床的にも意味のある状態像で構成される分類方法(ケースミックス分類)が有用である。臨床的にも意味のある分類とすることで、各分類毎にケアの内容を検討することができ、ケアの標準化にも資することが期待できるからである。主任研究者らは、平成5年度に単科精神病院における看護ケア等の実態についての調査を実施し、患者特性に基づくケースミックス分類を開発してきた。本研究では、第一に、同分類が臨床現場の感覚から見て妥当であるか検証する。具体的には、様々な看護形態や経営主体を含むように選ばれた調査対象病院の入院患者に対して、ケースミックス分類を構成する患者特性のアセスメントを実施する。そして、分類結果をフィードバックして、臨床像とケアの必要度の両面で、臨床現場の看護婦や医師の感覚と対応しているか評価を求め、同分類を日常の臨床場面で利用することが可能であるか検討する。第二に、ケアの必要度について、相対的に捉えるだけでなく絶対量としては、ケアの質の面から見てどの程度のケアが必要とされるかを検討する。具体的には、上述の平成5年度の研究で調査した患者について、各調査病院で前回調査後の経過についての調査を実施し、配置された看護人員数などによるケアの提供量の相違がアウトカム(ケアの転帰)で見たケアの質にどのように影響しているか分析する。研究スケジュールとしては、第1年度目である本年度は主に調査とデータベースの作成が中心であり、第2年度目の平成12年度には、データベースの完成とその分析が中心となる。
研究方法
1.ケースミックス分類による分類結果の妥当性についての検証 19の単科精神病院(自治体立病院5、民間病院14)を調査対象病院として選び、各病院の代表的な閉鎖病棟・開放病棟の入院患者を対象に、ケースミックス分類に必要な患者特性のアセスメントを主治医並びに病棟婦長が実施した。また、ケースミックス分類を構成するアセスメント項目について、看護職員間並びに看護職員・医師間での評価者間信頼性の検証を、1大学病院の精神科病棟入院患者78人を対象に実施した。 2.ケアのアウトカムに関する分析 上記19の単科精神病院中、平成5年度の調査対象でもある18病院については、その際の調査対象患者について、10月1日時点での追跡調査を行った。まず、現在も入院を継続しているか否かを把握し、既に退院した患者については、退院日を調査し、当該病院に入院を継続している患者と退院後も当該病院外来に通院している患者については、BPRS(簡易精神症状評価尺度)、WHO/DAS(精神医学的能力障害評価面接基準)、GAF(機能の全体的評価)等を使用して、現在の状態を包括的に調査した。なお、以上の調査は、各患者に対して本研究の趣旨等を説明し同意を得た上で実施した。加えて、対象患者には調査固有のID番号を付け、患者のカルテ番号等をデータベースに含まないようにするなど、データベース構築・解析時のプライバシーの保全にも万全を期すと共に、本研究の成果は、いかなる状況でも個人を特定できないよう留意して、集積データの統計的な分析結果として発表する。
結果と考察
1.ケースミックス分類による分類結果の妥当性についての検証 19の単科精神病院の代表的な閉鎖・開放各1病棟の入院患者について、ケースミックス分類に必要なアセスメントを実施することができた。このアセスメントデータから得られる分類結果を、担当の病棟婦長及び主治医に提示して、分類結果が実際の臨床像とケアの必要度を適切に反映しているか評価
を求めるが、その集計分析が次年度の課題であり、この分析から、ケースミックス分類の日常の臨床現場への応用可能性並びに改良すべき箇所などが明らかになることが期待される。また、1大学病院の精神科病棟で行われたアセスメント項目の評価者間信頼性の検証のための調査データからは、看護職員と医師との間での評点の異同の分析を通して、精神科医が評価すべきアセスメント項目と看護職員が評価すべきアセスメント項目が明らかにされることが期待される。 2.ケアのアウトカムに関する分析 上記19の単科精神病院中、平成5年度の調査対象でもある18病院での追跡調査を終え、ケアのアウトカムの分析に必要なデータベースの構築作業に入ることができた。次年度には、この調査データを平成5年度の調査データと併合し、平成5年度時点でのケアの提供量ならびに看護職員などの人員配置と追跡調査で把握されたアウトカムの関係を分析することによって、ケアの必要量について、アウトカムの面から見ての最適水準が明らかにされることが期待される。
結論
本研究の初年度である平成11年度には、本研究の目的であるケースミックス分類による分類結果の妥当性の検証ならびにケアのアウトカムに関する分析の為に必要な基礎的調査を遅滞なく実施し、データベースの構築作業に入ることができた。本研究の最終年度である平成12年度には、このデータベースの完成と分析を通して、上述の目的についてそれぞれ検証結果を示すことができよう。

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