障害者福祉における医療ケアと施設の役割に関する総合的研究

文献情報

文献番号
199900275A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者福祉における医療ケアと施設の役割に関する総合的研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 康之(東京小児療育病院)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木康之(東京小児療育病院)
  • 諸岡美知子(旭川療育センター)
  • 難波克雄(広島県立わかば療育園)
  • 安川雄二(共同作業所全国連絡会)
  • 山田美智子(神奈川県立こども医療センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害が重度化している。その本態は医療的ケアの要求度によっている部分が大きい。通園事業でも濃厚な医療的ケアが求められ、設備とスタッフの整備が急務である。そこで、呼吸管理や経管栄養など医療的介護が、障害児者の生活にどのようにあるべきかを検討した。また要医療的ケアの超重症児やその周辺障害(準超重症児)などの実態を明らかにし、今後の保険診療や福祉システムを探ることを目的とした。障害児者ニードに基づき、医療型、生活型、折衷型と分化すべき現状を明らかにする。同時に、これらの障害の病態を解明し、今後の療育の向上に寄与すると共に、そのあり方をインフォームドコンセントのあり方を含めて提言する。
研究方法
1,重症児施設のみどり愛育園118名の超重症児スコアー、年間点滴日数、経管栄養日数、レスピレーター、導尿、呼吸器感染日数などを調べ、スコアー毎に、25点以上、24点未満・10点以上、10点未満(超重症、準超重症、一般重症)の3群に分けて比較した。またこの基準で、全国重症児施設入所分布を、日本重症児福祉協会の資料を分析した。
2,全国重症心身障害児通園事業A型、B型、及び東京都の重症児通園事業、計76事業所における超重症、準超重症、一般の重症児の割合と、医療スタッフの構成や介護スタッフの関わりなど、医療的ケアを必要とする障害児の受け入れとその問題を調査した。
3,無認可の小規模作業所などでも医療ケアを必要とする重度障害児者が、地域通園を進めている。医療体制を欠いた作業所に、なぜ要医療の重度障害児者が通うのか、全体的な経過を作業所連絡会の資料からまとめ、いくつかの事業所を選んで実際例の調査を行った。
4,要医療の重度障害児者が増加し、重症児施設及び国立療養所重心病棟では多数の該当児者を受け入れている。今後の対応・スタッフや必要設備の現状につき、全国重症心身障害児施設86カ所、国立療養所重心病棟64カ所からの回答を得て調査した。
5,より高度な医療処置を必要とする場合、インフォームドコンセントがどのように進められているのか、現在の施設での実態を全国重症児施設へのアンケートで調査した。
6,重度障害児の病態について、超重症児その他各群の死因調査、経管栄養剤の長期使用の問題点、胃食道逆流(GER)の増悪因子としての評価、重度障害における睡眠と呼吸障害との関連性、定期検診におけるコレステロール分画から動脈硬化指数を調査、またこれらの予防と機能改善のためのリハビリテーション、重症児各群における訓練課題の分布を調査した。
結果と考察
1,準超重症児の概念設定の根拠を明らかにした。呼吸器感染症は準超重症児で高頻度であり、点滴など医療処置の頻度は、超重症児、準超重症児、その他の順で高かった。準超重症児になると約3年弱で超重症児に移行し、超重症児になれば治療すべき合併症は少なくなる。準超重症児は通常の管理とは異なる配慮を要する障害群であることを実証できた。
2,重症児者通園事業は88カ所を越え、うち76カ所から回答を得た。超重症児が56名、準超重症児が140名も在籍している。レスピレーター管理も17名に達し、今後増加が予想される。ただ、医療援助体制も様々であり、多くの場合専門職以外の職員が医療的ケアに関わっている。一方で、要医療児の受け入れに2分化がみられた。重症児施設の2極化、つまり生活型と医療型の分化が通園でも始まっているといえる。
3,医療専門職のいない小規模作業所などに重度重複障害者の受け入れが進んでいる。小規模作業所206カ所の平均では、1.7人であった。そのうち、気管切開をし、吸引を要する障害者が重症児通所では受け入れられずに、作業所に通うに至った経過、実態などを調査し、職員研修や医療指導援助の必要性をまとめた。
5,全国の重症心身障害児施設と国立療養所重心病棟では、利用者14,766名の内、超重症、準超重症は382名,707名(重症児施設)、387名,494名(国療)を受け入れていた。半数以上が今後も受け入れ可能であるとしているが、ここでも医療型と生活型の2分化が進んでいる。
6,インフォームドコンセントは、気管切開や呼吸器導入などで一般化しており、高度医療の導入へは不可欠の事項になっているといえる。
7,重度化の医療管理として、経管栄養剤の不備が示された。重度障害児者が長期に安定して使える市販栄養剤の開発と、薬価登録の栄養剤の適応拡大が急務である。またGERや睡眠時無呼吸の予知と対策、リハビリ、脂質管理などの検討を行った。
結論
医療ニードにより、超重症の他に準超重症が別の概念で存在しうる。要医療の濃淡により、生活型、医療型と施策が別に必要であり、医療型施設は専門職による援助を地域的に行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-