精神障害者の人権擁護に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900267A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の人権擁護に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 二郎(東邦大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木二郎(東邦大学医学部)
  • 山崎敏雄(山崎病院)
  • 川副正敏(福岡県弁護士会)
  • 益子茂(東京都立多摩総合精神保健福祉センター)
  • 北村俊則(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 山上皓(東京医科歯科大学難治疾患研究所社会医学研究部門)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者基本法の施行、精神保健福祉法改正の方向にもかかわらず、現実には精神障害者の人権擁護は十分に果たされているとはいいがたい。前年度はこれがどのような要因によるのか関連する医療保健の諸制度や対施上の問題点を検討したので、本年度は解決の方策を解明することとした。このため前年度同様下記の6項目の分担研究を構成し、具体的に研究した。(1)精神保健指定医の生涯教育と指導医制に関する研究(分担研究者:鈴木二郎)(2)精神医療審査会の運営の適正化に関する研究(分担研究者:山崎敏雄)(3)精神障害者のための当番弁護士制度の研究(分担研究者:川副正敏)(4)精神障害者の受診の促進に関する研究(分担研究者:益子茂)(5)精神科医療における情 報開示と自己決定権に関する研究(分担研究者:北村俊則)(6)精神障害者のための成年後見制度の研究(分担研究者:山上皓)
研究方法
A.総括研究:各分担研究を統合するため、常時緊密に連絡を取り合った。さらに、合同のシンポジウムを開催して意見交換を行い、それぞれの研究に反映させた。B.各分担研究:(1)精神保健指定医の生涯教育と指導医制に関する研究(分担研究者:鈴木二郎)前年度の報告、改正精神保健福祉法、さらに指定医マニュアルを有する40施設へのアンケ-ト調査を基にして、検討を行い、指定医のマニュアル作成を行った。(2)精神医療審査会の運営の適正化に関する研究(分担研究者:山崎敏雄)全国の精神医療審査会の活動実態や意識調査を踏まえて、審査ガイドライン、患者向けリ-フレットの作成をおこなった。また審査会事務局マニュアルの作成のため、59自治体の事務局の調査を行った。(3)精神障害者のための当番弁護士制度の研究(分担研究者:川副正敏)福岡県弁護士会および同会の当番弁護士制度と同様の制度を持つ弁護士会の事例の検討から、精神保健当番弁護士活動実践モデルおよび同マニュアルを作成。さらにシンポジウム、講演会を開催した。(4)精神障害者の受診の促進に関する研究(分担研究者:益子茂) 首都圏A、B県,首都圏以外の政令指定都市Cの精神保健福祉センタ-、保健所等の聞き取り調査および昨年度の本研究のアンケ-ト結果、厚生省「移送に関するガイドライン」等の検討により結果を得た。(5)精神科医療における情報開示と自己決定権に関する研究(分担研究者:北村俊則)国立国府台病院、東京歯科大市川総合病院の入院患者計103名を対象に告知内容調査表による調査をおこなった。(6)精神障害者のための成年後見制度の研究(分担研究者:山上皓)最高裁の「新しい成年後見制度における診断書・鑑定書作成の手引き」作成に協力,T家庭裁判所における禁治産鑑定の現状調査、全国精神科教授のアンケ-ト調査などによる検討を行った。
結果と考察
A.総括研究:精神保健指定医、精神医療審査会、精神保健当番弁護士など、それぞれの活性化が重要であり、具体的にそれぞれにマニュアルが作成されたことは極めて意味が深い。また精神保健福祉法改正と成年後見制度施行にあたり現実に生じる困難な事態(移送、インフォ-ムドコンセント、診断,鑑定等)への方策を提示した。精神障害者の人権擁護にかかるこうした問題は極めて重要であり、ある程度の貢献となれば幸いである。 
結論
1999年の精神保健福祉法の改正、成年後見制度の制定に続く、2000年度の実施にあたって、精神障害者の人権擁護のための本研究から、いくつかの重要な提言やマニュアルあるいはガイドラインが提案された。すなわち、精神保健指定
医マニュアル、精神医療審査会の審査ガイドライン、患者向けのリ-フレット、精神保健当番弁護士活動モデル・マニュアル、精神障害者受診移送の基準に関する意見、「新しい成年後見制度における診断書・鑑定書作成の手引」への貢献などである。さらに本研究によって多くのデ-タや見解が蓄積され、今後の精神保健福祉施策へ有用な方向性を提示しているということができる。この研究によるこれらのマニュアル、ガイドラインその他の提言が、精神障害者の医療、福祉の向上、人権擁護に十分活用されることを期待するものである。

公開日・更新日

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