知的障害を持つ人達の健康障害の実態と対策に関する研究

文献情報

文献番号
199900261A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害を持つ人達の健康障害の実態と対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 正高(社団法人 日本知的障害福祉連盟)
研究分担者(所属機関)
  • 原仁(国立特殊教育総合研究所)
  • 馬場輝実子(国立療養所長崎病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各年齢の知的障害者の疾病、死亡率の高い原因、および、その対策の立案を目的とする。本年度は、特に、障害児の長期的な生命予後、知的障害学童の死亡の全国調査、青壮年期の突然死の原因、高度肥満の治療と予防の指針、成人の専門医療への障壁に関する情報の収集を企画した。
研究方法
障害児の生命予後は、大学病院小児神経科で診断され、その地域で医療を受けた約1万人の小児の長期の情報を集めた。鳥取、島根両県の病院の記録を参考とした。学童生徒については全国の知的障害養護学校在籍者の死亡調査であり、一定期間の死亡例と死因について調査用紙によるアンケート調査を行った。その他の資料は、研究協力者の自験例または施設または家庭訪問によるききとり調査によった。
結果と考察
確認された障害児の死亡は約3%であった。死亡例の基礎疾患は重症心身障害児と進行性変性疾患・代謝疾患が、約70%、奇形症候群13%、ダウン症候群4%であった。養護学校では対象5万人中、調査期間中に129名、0.25%が死亡した。死亡例の55%は重度重複障害児であり、運動障害軽度例に比して著しく高い死亡率であった。死因のなかでは、学校外の事故死28名、てんかんをもつ4名の溺死などが注目された。東京都の訪問看護事業の調査によれば、1-50歳の在宅重症心身障害児者の死亡率は5歳以下が年平均10%を超え、年長化と共に漸減したが、一般人口の約100倍と算定した。27名の死因は約半数が自宅での急変で、85%は経菅栄養を受けていた。知的障害施設の青壮年の急性死亡の背景としては、20-29歳の男子で、てんかん、肥満、不整脈等が一部に見られたが、特に行動障害を持つ例が多くそれに多数の向精神薬の投与が高率であった。死病の状況は、重症児のそれとことなり健常人に突然死と類していた。以上の調査から、障害児では重い疾病により現在の医療の限界と思われるものが多い。一方、運動障害の少ない例の死亡は、事故やリスク徴候から予測が可能で避けることもできるのではないかと推察した。肥満は小学校高学年から中学校で明らかになり、卒業後在宅または通所のうちに高度化することが多かった。長期になると糖尿病、肝障害等の合併症が目立った。入院して食事や生活の変更により減量と共に合併症も改善する例が大多数であった。学齢期から生活習慣の形成を家族と共に協力することが重要と考える。知的障害者で特に行動上の問題を併う例は入院医療で断られることが多い。また、緊急の入院も重症例を紹介すると断られる実状が報告された。内科、精神科、の受診に比して、外科系を含む専門診療科へのアクセスは施設や地域による格差が多い。
結論
知的障害を持つ人達は、小児から初老期にいたるさまざまな場面で疾病にかかりやすく死亡の危険も高い。「避けられる死」への対策は緊急性があり、特に学童期の事故と青壮年の急性死亡を指摘した。また、頻度の高い高度肥満とその合併症は生活習慣病として予防治療指針が重要と考えた。知的障害者が専門治療を受けることを難しくしている障壁については複数の要素がからみ、それぞれを念頭において包括的解決に努力する時と考える。

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