シーティングクリニックの開発

文献情報

文献番号
199900255A
報告書区分
総括
研究課題名
シーティングクリニックの開発
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
廣瀬 秀行(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋功次(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
-円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成10年度障害者白書において、リハビリテーション医療の充実は障害の軽減と自立の促進と位置つけ、自立の促進の上で重要な役割を果たす福祉機器は障害の特性に合わせて供給すべきであると述べている。特に重度な障害であれば、その障害に適合した機器の選択、適合、操作熟達は重要な要素である。日本の肢体不自由者用機器の適合は業者任せになっている。しかし、障害が重度であればあるほど、医療との接点は必要となり、既存のリハビリテーションセンターの機能での視点は重要となる。当センター病院でも重度障害者の増加と車いす長時間使用者の増加による二次障害の予防、機能向上等、機器の適合の専門チームが必要になってきた。このような背景から
昨年度はシーティングクリニックを実施しながら、その有効性について検討した。今年度はクリニック運営における問題を検討した。検討課題として、サービスの対応が複数の職種が関わり、その効率化、最適化を含めて検討する必要があったこと、運営での費用をある程度見積もる必要があった。また、福祉機器供給のなかで、当センターの役割についても検討した。
研究方法
機器供給の臨床サービスを実施しながら問題点を検討する手法をとった。
結果と考察
1.運営手法の検討
クリニックでの活動の文書化
下記の8点の文書化を行い、1)から4)までの機器・供給確認に関して実際に施行し、有効性を確認した。1)最終チェックリスト2)適合評価表3)機器貸出表4)物品管理表5)電動車いす対応チャート6)手動・電動車いすトレーニングガイド7)電動車いす技能テスト8)座位保持フローチャート
2.供給の問題点
二つの検討課題があった。一つは本人のニーズと機器の安全性である。調節式車いすを選択し、実際車いすを調整しながら対応してきた症例である。車いすのアームレストを現状より低い位置を希望した。その高さは製造者指定よりも低く、業者は難色を示した。アームレストなどは新たな作成が必要であった。また、アームレスト上に座って物をとるなどの動作もしており、クリニックで新たにアームレストを製作することは破損および転倒などの危険性を持っている。消費者保護法の制定により機器による事故もこのクリニックで念頭に入れる必要がある。使用者に合わせることだけでなく、安全性をも含めて検討していきたい。
次に、症例は途中で機器製作中止となった。対応だけで11日間となった。機器に関わる費用の算出は当然それらの合算となる。それらを機器および製作費用として、請求することになる。これに関しては今後の課題であるが、今回は機器が供給されないで終了した。この場合、実際に施行された場合、問題となる。対応として、1回ごとにそれぞれの費用を請求する方法もこの対応の一つである。
3.機器供給体制
背景
福祉機器の重要性が叫ばれているが、肢体不自由者の機器の供給体制は業者中心である。それは身体障害者福祉法での厚生相談所判定が本人と業者での申請、それを判断する所長、主として医師であり、機器適合・製作時、リハ側は費用を受け取れないシステムとなっている。
福祉機器は障害と残存機能の把握、ニードの把握、そして機器情報の把握がまず考えなければならない点である。使用者がその機器を長時間使用した時、どのようなことが起こるのか十分予想できるべきである。褥瘡に対するリスク、脊柱変形の予防などの生理的、日常生活やQOL活動を行う上での機能など検討する必要がある。これは障害が軽度であれば、介護ショップでの対応がある。しかし、より重度であれば、リハ専門職の相談、専門業者との相談などの対応が求められる。今回のクリニックはさらにその上の障害またはニードに対応するものである。
対象患者の紹介状況
1)国リハ他理学療法士からの紹介
2)他施設理学療法士からの紹介
3)車いす・座位保持業者との協同製作と紹介
まとめ
これらより、機器供給過程で、国リハシーティングクリニックがすべてを対象とするわけではなく、他での対応が困難な例の場合、紹介などを通してシーティングを検討することが重要であることが認識された。これにより、既存の事業体をなんら犯さないで国リハにおけるシーテイングの存在を示すことが可能である。
結論
クリニック運営のため業務とその費用、そして機器供給システムにおけるセンタークリニックの位置について検討した。業務に関して、文書化は継続すべきであり、サービスの均一化、リスク管理、費用の軽減をも考え有効である。また、安全性とニード、費用は検討課題である。最後に機器供給システムにおいて、昨年度電動車いすでの適合を目的として入院した症例を報告したが、より困難な例を対象にして進める必要がある。

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