文献情報
文献番号
199900253A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄神経障害性運動麻痺のリハビリテーション技術の開発研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 英雄(国立身障者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 君塚 葵(心身障害児総合医療センター整肢療護園 園長)
- 中村太郎(太陽の家 理事)
- 熊倉伸宏(東邦大学医学部公衆衛生学教室 教授)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脊髄神経性運動麻痺を来した障害の代表的障害である脊髄損傷者および脊髄性小児麻痺者の麻痺障害の実態を調査して、運動障害の進行を評価し、2次障害の発生および障害の進展を予防するリハビリテーション技術について研究を行う。同時に、研究は運動生理学、臨床医学及びリハビリテーション科学および行政における障害評価に貢献することを目的とする。
研究方法
1)脊髄反射弓の生理学的解析班、脊髄損傷者の臨床調査班、脊髄性小児麻痺者の臨床調査班、疫学調査と解析班の4班構成で、全国任意の施設および団体の代表者(医師)の協力を得て疫学調査に耐える母集団を集めて障害の実態について基礎的な統計的解析を行う。2)次ぎに、脊髄反射機能の評価法と社会生活の評価法を研究して2次障害との関係を調べる。3)これらの調査結果から2次障害発生を予防するリハビリテーションの技術の研究を行う。
結果と考察
結果:
① 脊髄損傷者751名、脊髄性小児麻痺者662名のアンケート調査をKaplan-Meyer法で解析すると、脊髄損傷者は受傷後経過年数を経るに従い有訴率からみた2次障害の累積発生率は直線的に増加し、脊髄性小児麻痺者は40年経過後から急速の増加した。
② 同母集団をVASTで解析すると2次障害が発生した後は障害が進展する傾向を示した。
③ 脊髄機能が全廃していると目される脊髄損傷者に装具で擬似歩行など運動訓練を行わせると脊髄が活動して麻痺領域の筋肉に健常者の歩行にみるような筋活動電位が出現するEvidenceが明らかとなった。
④ H-反射(H-波の積分量)の解析結果から、水中での立位姿勢は重力環境下の陸上での立位姿勢のときより増大した。しかし、重力は全く加わらない臥位姿勢を3週間とった被験者の前後ではH-反射は低下した。
考察:
① 脊髄神経性運動麻痺者の障害の慢性的経過において障害が重度化する可能性があり、今後本障害者が高齢化に向かう時代にあって新たな対策が必要となることが明かにされた。
② 脊髄神経性運動麻痺者の障害の慢性的経過において、現在行われている障害の評価法を再検討し、事後重症の評価を行うべき時期を含めて評価法の検討が行政上求められると考えられる。
③ 脊髄神経性運動麻痺者の代表的障害である脊髄損傷と脊髄性小児麻痺では2次障害の累積発生率、特に受傷後経過年数における累積発生率のパターンが異なり、その相異の原因について自律神経障害などの他、障害の自己認識の相異、社会生活上の環境の問題など関係する因子の検討が必要となった。
④ 脊髄損傷者の2次障害発生予防のリハビリテーション技術の研究のためには、ここで明かとなったEvidenceをもとに装具を使った擬似歩行訓練の適性な量および実施する時期の検討が必要となった。
⑤ 擬似歩行における筋活動電位の消長、重力環境とくに弱重力環境とH-反射の関係を追跡から、脊髄機能を賦活するリハビリテーション技術の方法を追跡するとした当初の研究計画が妥当であったと判断できた。
⑥ 健常者および脊髄損傷者でH-反射(H-波の積分量)の評価を使って、脊髄性小児麻痺者を調べる。従来、脊髄性小児麻痺の急速な重度化の現象は主に筋肉の疲労など筋肉生理学から追跡されてきたが、本研究では脊髄の機能から重度化の評価を行う事を可能とする基礎的資料が整備されたと理解される。
⑦ 本研究は、3年間の研究として設計されているが、研究の途中における諸発表は関係研究機関、団体、及び障害者に大きな反響を与えた。研究協力者である北海道のグループの研究報告は、札幌NHK、及び全国NHKの放送に取り上げられた。また、複数のポリオ、脊髄損傷の研究団体から本研究に参加したい旨、申し入れを受けた。
⑧ 厚生統計協会から当協会の定期刊行物である「厚生の指標」に掲載するため「ポリオ、及び脊髄損傷者の社会参加」のタイトルで2個の原稿依頼を受け、現在投稿中である。本研究資料は行政に貢献する意義があると認められた結果である。
① 脊髄損傷者751名、脊髄性小児麻痺者662名のアンケート調査をKaplan-Meyer法で解析すると、脊髄損傷者は受傷後経過年数を経るに従い有訴率からみた2次障害の累積発生率は直線的に増加し、脊髄性小児麻痺者は40年経過後から急速の増加した。
② 同母集団をVASTで解析すると2次障害が発生した後は障害が進展する傾向を示した。
③ 脊髄機能が全廃していると目される脊髄損傷者に装具で擬似歩行など運動訓練を行わせると脊髄が活動して麻痺領域の筋肉に健常者の歩行にみるような筋活動電位が出現するEvidenceが明らかとなった。
④ H-反射(H-波の積分量)の解析結果から、水中での立位姿勢は重力環境下の陸上での立位姿勢のときより増大した。しかし、重力は全く加わらない臥位姿勢を3週間とった被験者の前後ではH-反射は低下した。
考察:
① 脊髄神経性運動麻痺者の障害の慢性的経過において障害が重度化する可能性があり、今後本障害者が高齢化に向かう時代にあって新たな対策が必要となることが明かにされた。
② 脊髄神経性運動麻痺者の障害の慢性的経過において、現在行われている障害の評価法を再検討し、事後重症の評価を行うべき時期を含めて評価法の検討が行政上求められると考えられる。
③ 脊髄神経性運動麻痺者の代表的障害である脊髄損傷と脊髄性小児麻痺では2次障害の累積発生率、特に受傷後経過年数における累積発生率のパターンが異なり、その相異の原因について自律神経障害などの他、障害の自己認識の相異、社会生活上の環境の問題など関係する因子の検討が必要となった。
④ 脊髄損傷者の2次障害発生予防のリハビリテーション技術の研究のためには、ここで明かとなったEvidenceをもとに装具を使った擬似歩行訓練の適性な量および実施する時期の検討が必要となった。
⑤ 擬似歩行における筋活動電位の消長、重力環境とくに弱重力環境とH-反射の関係を追跡から、脊髄機能を賦活するリハビリテーション技術の方法を追跡するとした当初の研究計画が妥当であったと判断できた。
⑥ 健常者および脊髄損傷者でH-反射(H-波の積分量)の評価を使って、脊髄性小児麻痺者を調べる。従来、脊髄性小児麻痺の急速な重度化の現象は主に筋肉の疲労など筋肉生理学から追跡されてきたが、本研究では脊髄の機能から重度化の評価を行う事を可能とする基礎的資料が整備されたと理解される。
⑦ 本研究は、3年間の研究として設計されているが、研究の途中における諸発表は関係研究機関、団体、及び障害者に大きな反響を与えた。研究協力者である北海道のグループの研究報告は、札幌NHK、及び全国NHKの放送に取り上げられた。また、複数のポリオ、脊髄損傷の研究団体から本研究に参加したい旨、申し入れを受けた。
⑧ 厚生統計協会から当協会の定期刊行物である「厚生の指標」に掲載するため「ポリオ、及び脊髄損傷者の社会参加」のタイトルで2個の原稿依頼を受け、現在投稿中である。本研究資料は行政に貢献する意義があると認められた結果である。
結論
① 脊髄神経性運動麻痺である脊髄損傷者および脊髄性小児麻痺者は受傷後経過年数を経るに従い2次障害の累積発生率(有訴率)が増加する。
② 脊髄損傷者と脊髄性小児麻痺者では2次障害の累積発生率のパターンに相異を認めた。この原因について研究が必要となった。
③ 脊髄神経性運動麻痺者の2次障害発生予防の対策となるリハビリテーション技術の研究のため必要なヒトの脊髄神経生理学上の新たなEvidenceを得た。
④ これら神経生理学上のEvidenceと社会的環境因子がどの程度関与するのか2次の社会生活調査、医学的臨床調査の結果を踏まえて、各領域の研究成果を総合的に照合する研究が必要となった。
② 脊髄損傷者と脊髄性小児麻痺者では2次障害の累積発生率のパターンに相異を認めた。この原因について研究が必要となった。
③ 脊髄神経性運動麻痺者の2次障害発生予防の対策となるリハビリテーション技術の研究のため必要なヒトの脊髄神経生理学上の新たなEvidenceを得た。
④ これら神経生理学上のEvidenceと社会的環境因子がどの程度関与するのか2次の社会生活調査、医学的臨床調査の結果を踏まえて、各領域の研究成果を総合的に照合する研究が必要となった。
公開日・更新日
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