高齢大腿骨頸部骨折患者の寝たきり防止に関する研究

文献情報

文献番号
199900247A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢大腿骨頸部骨折患者の寝たきり防止に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
岩谷 力(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木堅二(帝京大学市原病院)
  • 関直樹(東京都多摩老人医療センター)
  • 中村利孝(産業医大)
  • 星野雄一(自治医大)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢大腿骨頸部骨折患者の骨折前の生活状況、治療経過、帰結、転帰に関する多施設調査により機能低下(寝たきり)の原因因子、病態を解明し、機能的予後の向上、効率的治療法の確立をはかること。
研究方法
東北、関東、東京都下、北九州の10医療施設において1996年12月から1998年11月末日間での一年間に治療した60歳以上の大腿骨頚部骨折患者220名のカルテより入院前の生活環境、機能的状態、受傷時状況、治療歴、退院時の機能的状態、退院先を調査した。
退院後の機能生活状況は郵送アンケートにより調査した。統計処理:記述統計量、項目観測値を求めた上で、主成分分析を行い、抽出された変数により退院時の機能、在院日数、帰結を表す変数を目的変数としてロジステック回帰分析し、予後予測を行った。記述統計量と治療転帰については昨年報告した。主成分分析により抽出された変数は受傷前の生物学的特性、ADL遂行能力、社会背景、骨折時の状況、治療と帰結でこれらと退院時の歩行機能及び退院先の関連をロジステック回帰分析により解析した。
結果と考察
そのうち欠損値のない64歳以上の患者193名(男性33,女性160例、平均年齢82.2±7.6歳)を対象とした。退院時歩行機能に関連する要因は受傷前の歩行及びADL能力、痴呆であった。受傷前に屋外歩行が可能である程度良好な身体機能であったか否かが退院時歩行の可能性に強く関連していた。受傷前の屋外歩行が可能であったものは不可能であったものに比して退院時に歩行可能となる可能性は21.8179倍高く、的中精度は0.8であった。退院先に関連する要因は自宅居住者では受傷前及び退院時の歩行、ADL能力であった。自宅退院の可否は退院時歩行機能に強く関連した。退院時歩行可能者は不可能者に比して自宅退院できる可能性は8.7207倍(的中精度:0.765)高かった。施設入居者が施設に戻ることができるか否かは受傷前の併存症の数、受傷前及び退院時の歩行状態が関連した。併存症が一つ増えると施設へ退院できる確率は0.2907倍(的中精度:0.735)になった。
結論
高齢大腿骨頸部骨折患者が受傷前の居住地に戻ることができるか否かは退院時の歩行能力に強く関連していた。退院時の歩行能力は受傷前の歩行、ADL能力に規定されていた。受傷前に併存症が多かった施設入所者は骨折を機会に医療管理を必要となる確率が高い。

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