高齢者虐待の発生予防及び援助方法に関する学際的研究

文献情報

文献番号
199900233A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者虐待の発生予防及び援助方法に関する学際的研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
多々良 紀夫(淑徳大学社会学部社会福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 染谷俶子(淑徳大学社会学部)
  • 田中荘司(東海大学健康科学部)
  • 副田あけみ(東京都立大学人文学部)
  • 萩原清子(関東学院大学文学部)
  • 安梅勅江(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、高齢者虐待の発生につながると思われる危険因子を明らかにしながら、今後必要とされる虐待防止策を策定するために、被介護者の自己決定の阻害に関する事態を把握し、その関係要因を明らかにする。前年度に行なった調査結果に基づいて身体的虐待、世話の放任が発生した家族内のダイナミックスに関係する情報を収集する。
研究方法
本研究は3つの領域からの複合的な展開を意図している。虐待の発生要因を主介護者が異なる場合に影響する要因を多変量解析を用いると同時に事例調査の実施、介護に関する意識についての心理的虐待の一つである「自己決定の阻害」を虐待リスクとしてそれと関連要因分析研究、身体的虐待や世話の放任が発生した家族の諸問題の状況や人間関係のダイナミックスについて「家族チェックリスト」を基に調査研究を行なった。
結果と考察
多変量解析では、要介護者側の要因に有意なものが挙げられ、単変量解析との比較を行ない主介護者を配偶者、子供、嫁に分別し有意差を示した。虐待の種類としては、介護放棄・拒否・怠慢による虐待、身体的虐待、心理的虐待、経済的虐待であった。介護関係において主介護者の役割の期待と自己の感情の不一致が虐待行為を生むといえる。虐待リスクの介護経験による差異では、高年齢者において要介護者のいる家庭ほど、要介護者の自己主張を認めない割合が高く、中年層の女性では、要介護者の我慢を容認するものの割合が高くなった。「家族チェックリスト」を用いた調査の結果「様々な要因の相互作用によって虐待が発生した」と「高齢者と虐待者の不仲」の回答が半数以上を占めた。又、他の家庭内暴力、経済状態との関係性は見出だせなかった。さらに虐待が発生した家族の4分の3は高齢者の介護に関心がないことが明らかになった。
結論
在宅における虐待問題解決の第1歩は、早期発見の方法を見つけ、早期発見につなげていくことである。その際に、「役割関係」=「介護関係」と捉えてはならない。さらに高齢者虐待の発生に関わる要因のうち介護経験、被介護経験や世間体などの社会的な被介護者の自己決定を阻害し、虐待リスクとなりうるという結果から今後さらに地域住民全てを対象として高齢者の自己決定に対する意識の啓発を含んだ虐待予防システムの確立が急務である。アンケート調査と訪問面接調査から約7割の虐待や世話の放任が発生した家族の中のダイナミックスに関する情報を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-