在宅介護者のストレス自己診断テストおよびストレス・マネジメント・プログラムの開発(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900226A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅介護者のストレス自己診断テストおよびストレス・マネジメント・プログラムの開発(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 昌久(早稲田大学)
研究分担者(所属機関)
  • 児玉桂子(日本社会事業大学)
  • 小林能成(上智大学)
  • 城 佳子(早稲田大学)
  • 椎原康史(群馬大学)
  • 藤原真理(国立精神・神経センター・精神保健研究所)
  • 田中まり子(財団法人パブリックヘルスリサーチセンター、ストレス科学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ディケアセンターや在宅介護支援センターを利用する在宅高齢介護者に、環境条件、要介護者の状態を含め、介護者のストレスに関する面接調査を行い、介護に携わる過程で生じるストレスの内容や程度を、自分で把握でき、かつそれに対する対処方法を指示できる自己診断テストを作成した。このテスト結果に連動する在宅高齢介護者用のストレス・マネジメント・プログラムの開発を試みた。ストレスー反応過程の第一の刺激次元に関するマネジメント法として、児玉らの研究(児玉・筒井,1993,児玉他,1994,児玉・児玉1995)に基づく環境調整による効果の検討を行った。ストレス-反応過程の第二段階である、主として認知評価次元におけるストレス・マネジメント手法として、城・児玉(1998)による情動調整による効果を検討した。ストレス-反応過程の第三段階である対処次元は、セルフマネジメントの手法が比較的困難なので、プログラムでは省略した。第四の即時的反応次元では自律神経系活動のリラクセーション手法として呼吸調整法を、体性神経系活動のリラクセーション法として筋緊張の調整法を、バイオフィードバックあるいは漸進的筋弛緩法などの観点から、自分自身での実施容易性を検討した。ストレス-反応過程の最後の長期的反応次元では生活習慣の改善に結びつけやすい軽運動を用いた運動調整法を検討の対象とした。これらの検討は前年度に引き続いたもので、セルフマネジメントとして、より容易に行える方法、より大きな効果が期待できる方法を探索し、その効果を検証した。
研究方法
とりあげられた在宅介護者用 ストレス・マネジメント各手法は、1)先行研究からマネジメントに有効で、かつ、在宅介護者が自宅で独力実践することの可能な方法を抽出する文献研究、2)面接あるいは質問紙による問題点抽出の調査研究、3)実施による実行、継続可能性の検討、4)マネジメント効果の測定、のプロセスを通してプログラム化を試みた。
結果と考察
ストレス・マネジメント・プログラムを構成する諸方法として選択された技法に関する研究の進捗状況は、以下のとうりである。
1) 環境調整によるストレス・マネジメントの基礎資料として、在宅介護者の居住環境とストレス反応との調査を行い、介護者にとってストレスと関連する環境条件の抽出が前年度の成果であった。これらの調整により期待できるストレス反応の軽減の確認が、今年度の課題として行われた。
2) 情動調整によるストレス・マネジメントは、Reversal Theory に基づく情動調整のマネジメント効果の、在宅での実行可能性についての検討が前年度の課題であった。今年度は実践可能な調整法試案について、マネジメント法としての効果検証、他の方法との優位性の検討が行われた。
3) 呼吸調整によるストレス・マネジメントは、すでに定評を得ているリラクセーション法である。自宅で容易に継続実行できるプログラムにまとめられるか否かがこの研究の課題である。基礎的な実験データはすでに得られていたので、今年度は在宅介護者を対象としての検証を行った。
4) 緊張調整によるストレス・マネジメントの手法としてすでに評価を得ているものには、バイオフィードバック法と、漸進的筋弛緩法とがある。Jacobsonによって提唱された漸進的筋弛緩法は簡便で容易な優れた方法であるが、自身での効果の確認が、ことに開始期には困難である。この点で優れているバイオフィードバック法は、器具の使用、操作の習熟が必要である点が在宅介護者にとっての問題点である。前年度に行われたこの問題の解明と、両方法の連携についての研究に引き続き、本年度は介護者自身のみならず、介護者が要介護者に対して緊張調整を行うことにより、介護者のストレス軽減に有効となるかについても検討した。さらに、体性神経系活動ばかりでなく自律神経系活動を含めて、マネジメント手法としての有効性の検討を行い、在宅での実行可能性を検討した。
5) 運動が気分の転換やストレスの解消、体力、健康の増進に有効であることはすでに明らかであるが、個人が自宅で、ことに多忙な在宅介護者が生活様式を変えて継続することは大変困難である。日常の介護活動の合間に短時間で行える、簡便有効なプログラムを設定できるかが、この研究の狙いであった。前年度は北欧で開発、普及している体操を部分的に修正したものを用い、在宅介護者の反応を測定したところ.運動そのものの効果は確認されたが、実施に協力した在宅介護者は、自発的に参加した高動機群であるため、継続容易性までは検討できなかったので、今年度は前年度とは異なる体操種目を交えて検討するとともに、継続容易性に考察を加えた。 
結論
1.在宅介護者のストレス源となる環境要因が抽出され、改善によってストレスが明確に軽減されることが確認された。2.在宅介護者の気分の切り替えによるストレスマネジメント法が提案された。3.呼吸調整のストレス軽減効果が確認され、在宅介護者用のプログラムとしてマニュアル化された。4.筋電図など体性神経系活動のバイオフィードバック法および漸進的弛緩法の在宅介護者に対する適用可能性が検討され、同時に効果が確認された。さらに、自律神経系活動についてもセルフマネジメント法としての有効性が確認され、実施可能と判断された。6.在宅介護者用の難易度別の軽運動プログラムが作成され、実施の結果効果が確認され、利用者の選択、組み合わせで実践可能となった。

公開日・更新日

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