軟骨・骨の加齢変化とホルモン・サイトカインによる組織修復能の再活性化

文献情報

文献番号
199900219A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨・骨の加齢変化とホルモン・サイトカインによる組織修復能の再活性化
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
池田 恭治(長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 開 祐司(京都大学再生医学研究所)
  • 加藤茂明(東京大学細胞分子生物研究所)
  • 川口 浩(東京大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軟骨・骨の退行性変化を基盤として発症する変形性関節症・骨粗鬆症に焦点を当て、これらの疾病における軟骨・骨の修復能の低下を、ホルモン・サイトカインによって自己の再生・修復能力を活性化することで予防・治療に役立てるための基盤研究を行った。本年度は、関節軟骨の再生に関しては、in vitroおよびin vivoの実験系を用いて、副甲状腺ホルモンおよび関連ペプチド(PTH/PTHrP)とBMTによる軟骨分化の制御機構を検討した。骨組織修復機能の活性化に関しては、加齢に伴う骨代謝の変化に大きく関わるエストロゲンとホルモン型ビタミンDに着目し、エストロゲンの骨作用の分子基盤と活性型ビタミンDによる骨吸収抑制のメカニズムについて検討した。さらに、抗老化遺伝子として注目されるKlothoのヒトにおける遺伝子多型と骨粗鬆症との関連について臨床的調査研究を行った。
研究方法
1.軟骨の再生
1)マウス胚性腫瘍由来ATDC5細胞培養系の軟骨マーカー遺伝子の発現パターンを指標に、軟骨初期分化から後期分化に至るin vitro多段階軟骨分化系を確立した。まず、未分化ATDC5細胞を、10μg/mlインスリンと5%FBSを含むDME/F-12培地にてコンフルエントに達するまで3日間培養した。さらに、Bone Morphogenetic Protein-4(BMP-4)を添加して、type Ⅱ collagen mRNAの発現をNorthern blot解析した。細胞分化による軟骨結節の形成をAlcian Blue染色によって可視化した。軟骨初期分化に対するオートクリンBMTシグナルの役割を明らかにする目的で、未分化ATDC5細胞にドミナントネガティブ型のBMT type IA受容体(DN-BMPR-IA)コンストラクトとリポフェクション法により導入した。導入細胞クローンを薬剤耐性により分離して、その軟骨分化能を検討した。これと並行して、可溶性BMT受容体(sBMPR)を培養系に添加して、内因性BMT-4によるシグナルを阻害する試みも行った。2)成熟ウサギの大腿骨膝蓋窩に軟骨下骨に達する間接軟骨全層欠損を作成して、関節軟骨の再生修復をin vivoにおいて検討した。すなわち、成熟家兎の大腿骨膝蓋窩表面から電気ドリルで深さ4mmの円柱状の穴を開けて軟骨下骨に達する関節軟骨全層欠損を作成した。直径が3mm以下の欠損では、欠損内に遊走した未分化細胞は2週間ほどで軟骨細胞に分化して、欠損深部から骨に置換されていく。ところが直径が5mmを越える欠損では軟骨分化が誘導されない。従って、欠損部は線維性組織で充填されるが、軟骨形成はおこらない。本研究では、オスモティックポンプを使って欠損部中央から組み換えヒト PTH(1-84)(25ng/hr)を持続的あるいは10時間ごとに間欠的に注入した。欠損部の組織修復をsafranin-O染色により組織科学的に検索した。修復組織に遊走した細胞のPTH応答能を抗PTH/PTHrP受容体抗体を用いた免疫組織染色により評価した。
2.活性化型ビタミンDと骨
破骨細胞分化系の実験がマウスを用いて行うため、まず卵巣摘除マウスを用いて、ラットの時と同じく、in vivoにおける活性型ビタミンDとエストロゲンの効果を調べた。
第一群:sham、
第二群:OVX,
第三群:OVXマウスにalfacalcidol
(0.05 μg/kg)投与、
第四群::OVXマウスにalfacalcidol
(0.2 μg/kg)投与、
第五群::OVXマウスに17β-estradiol
(20 μg/kg)投与、
の5群の実験グループを作成し、BMT、μCT、骨代謝の生化学マーカーを測定するとともに、骨代謝動態を骨形態計測法を用いて詳細に解析した。各群マウスの頸骨からRNAを抽出し、ODF/RANKL mRNAレベルをNorthern blotで解析した。また、各群のマウスから採取した骨髄細胞をsODFとM-CSFの存在下で4日間培養し、破骨細胞の形成能をTRAP染色で評価した。同じく各群のマウスから搾取した骨髄細胞を、96-well plateのST-2ストローマ細胞layerの上に、1、15、50細胞/wellずつ播き、活性型ビタミンDとdexamethasoneの存在下で7日間培養し、TRAP染色した後、TRAP陽性細胞が存在するwellの数から計算により、もともと骨髄中に存在していた破骨細胞の前駆細胞のfrequencyを求めた。
3.骨特異的エストロゲン作用の分子基盤
Ser118がMAPキナーゼによりリン酸化されたER A/B領域蛋白を作成し、この蛋白をプローブに用いてFar western法による相互作用因子の検出を試みた。エストロゲン作用の認められる、COS-1、MCF-7、HeLa細胞の核抽出液よりhERαAF-1領域相互作用因子の検出を行った。これにより取得した候補因子群については、ルシフェラーゼアッセイにより、hERαの転写活性化能に対する効果を検討した。この結果、有望であった因子についてはin vivoおよびin vitroにおける相互作用実験も行った。
4.Klotho遺伝子多型と骨粗鬆症
1)cSNPsの検索
健常人、骨粗鬆症、OPLL患者を含む115例(男性56例、女性59例、平均年齢64.0才)よりインフォームドコセントに基づいて採取した末梢白血球からDNAサンプルを抽出した。これらの全サンプルについて、ヒトklotho遺伝子の全5つのexonとexon1の上流600bpを網羅する23組のpremerを作成、direct sequence法を用いて全塩基配列を決定し、点変異を検索して多型分類を行った。
2)Association study
骨粗鬆症との関連については閉経後女性215例(平均73.2才)の前腕の骨密度をDXAを用いて測定した。OPLLとの関連についてはOPLL患者73例(平均63.7才)の単純レントゲン像における骨化椎体数を測定した。全症例の末梢白血球からDNAを抽出し、SSCP法またはdirect sequence法にて上記4ヶ所のcSNPについて遺伝子型分類を行い、それぞれの表現型との相関を検討した。
結果と考察
1.軟骨の再生
1)ATDC5細胞は内因性のBMP-4を未分化段階から発現していたので、BMP-4がオートクリン/パラクリン形式の分化シグナルとなっていることが示唆された。コンフルエントに達した未分化細胞のDNA合成は、FGF-2によって促進された。これに対して、BMP-4は培養系のDNA合成には作用しなかった。しかし、type Ⅱ collagen mRNAの発現は特異的に誘導され、培養系に軟骨分化が誘導されたことは細胞形態やAlcin Blue染色からも確認できた、すなわち、BMT-4は、細胞凝集領域の形成を経ることなく軟骨前駆細胞のtype Ⅱ collagen mRNAを発現する増殖軟骨細胞への分化を誘導した。このために、培養系内には軟骨結節ではなく単層の軟骨細胞シートが形成された。このように、BMT-4は前駆細胞からの軟骨初期分化を誘導する分化シグナルとして作用していた。そこで、培養系内で産生される内因性BMT-4の作用を明らかにする目的で、コンフルエントに達したATDC5細胞に可溶性BMT受容体(sBMPR)を添加して軟骨初期分化の誘導を評価した。その結果、sBMPRは用量依存性に軟骨分化を阻害し、軟骨結節の形成は300ng/mlから1000ng/mlのsBMPRの添加によってほぼ完全に阻害されることが判明した。しかし、軟骨分化に先立つ細胞凝集領域の形成には影響を与えなかった。次に、ドミナントネガティブ型のBMT type IA受容体(DN-BMPR-IA)を発現させたATDC5細胞クローンを分離し、得られたDN-BMPR-IA導入細胞株をインスリンを含む通常の分化培地で培養を行った。その結果、細胞は親株と同様に増殖してコンフルエントに達するものの、軟骨分化は著しく阻害された。しかし、細胞凝集領域の形成は、sBMPRの添加実験と同様に阻害されなかった。一方、我々は既に、PTHが細胞凝集領域の形成と共に発現するPTH/PTHrP受容体を介して、軟骨分化に負のシグナルを伝達する事を明らかにしている。PTHを添加すると、PTH/PTHrP受容体の発現する前の段階(すなわち、単層の未分化細胞の段階)で細胞分化は停止した。その分化抑制作用は可逆的で、培養系へのPTHの添加を停止すると軟骨結節の形成は、時間的に遅延するものの再び誘導された。
2)ウサギ大腿骨膝蓋窩に作成した関節軟骨全層欠損は、関節軟骨の自然治癒が誘導される直径3mmの系における修復組織のPCNA陽性細胞率は高値を示したのに対して、軟骨修復が誘導されない直径5mmの欠損においては有意に低値を示した。直径5mmの欠損においてもFGF-2の投与により軟骨修復が誘導される実験条件では、PCNA陽性細胞率は直径3mmの欠損と同様の高値を示した。このように、関節軟骨全層欠損における軟骨組織修復能は、欠損分に遊走する軟骨前駆細胞の増殖維持と相関することが明らかとなった。これに対して、軟骨の自然修復が誘導されるはずの直径3mmの欠損であっても、PTHを投与すると修復組織内における軟骨分化誘導が著明に阻害されることが明らかとなった。このとき、修復組織のPCNA陽性細胞率は高値を示し、PTH/PTHrPシグナルがin vivoにおいても前駆細胞の増殖ではなく分化進展に対しての負のシグナルとして機能することが示唆された。次いで、PTH/PTHrPシグナルによる分化抑制と脱抑制による修復機序の活性化を試みた。即ち、自然修復出来ない直径5mmの欠損に遊走した未分化細胞に対して、PTHの間欠投与の効果を検討した。その結果、欠損作成時から骨髄由来未分化細胞の遊走から軟骨分化の誘導に至る2週間にPTHの間欠投与(10時間毎)を行った後、脱抑制することにより、直径5mmの大きな欠損においても軟骨分化が誘導され、欠損部は軟骨組織によって再生修復されることが明らかとなった。ATDC5細胞培養は、通常、コンフルエントに達すると接触阻害により増殖を停止する。その後、増殖を停止した細胞は、一定の確率で細胞形態を一層紡錘形に変化させる。この細胞を起点に細胞凝集領域が出現し、この領域内で軟骨分化が進行する。一方、凝集領域外では逆に軟骨分化の進展が停止する。このために、培養系は不均化して、軟骨結節とこれを囲む線維芽細胞のシートが形成される。前年度までに、軟骨前駆細胞の凝集領域の形成に続くtype Ⅱ collagen発現を特徴とする増殖性軟骨細胞の出現(軟骨初期分化)に対する分化促進シグナルとして、BMP-2が作用することが明らかとなった。FGFが軟骨前駆細胞の増殖能維持細胞の形質発現を選択的に促進した。BMP-4がBMP-2と同様にコンフルエントに達した未分化ATDC5細胞をtype Ⅱ collagenを発現する軟骨細胞に転換することは、BMP-4の添加によって軟骨細胞シートが培養系に短時間で出現したことで明らかであった。本年度は、特に、ATDC5細胞が内因性に産生するBMP-4が軟骨分化の進展を支えるオートクリン分化因子であることを、DN-BMPR-IAの遺伝子導入とsBMPRの添加実験によって明らかにした。BMP-4の発現レベルは、ATDC5細胞の初期分化・後期分化に際して重大な変動を示さなかった。従って、細胞分化段階の進展に伴って新たに発現してくるBMP-6、BMP-7も加わることによって、インスリン添加培地におけるATDC5細胞の自立的な軟骨多段階分化の進展が支持されているものと推察された。興味深いことにDN-BMPR-IAの発現とsBMPRによって、軟骨前駆細胞の分化パターンを作り出す細胞凝集過程が、BMTシグナルとは独立に制御されていることが明らかとなった。一方、PTH/PTHrPシグナルは、軟骨初期分化及び後期分化いずれの分化段階においても分化抑制シグナルとして作用し、軟骨分化を負に制御するシグナルとなっている。ウサギ関節軟骨全層欠損の再生モデルによって、PTH/PTHrPシグナルがin vivoにおいても軟骨幹細胞の分化に阻害的に作用することが明らかとなった。欠損作成後2週間に亘ってPTH(1-84)を間欠的に投与することにより、通常は関節軟骨が自然修復されない直径5mmの欠損においても関節の軟骨再生修復が誘導された。この事実は、PTHがその分化進展阻害作用によって、欠損部内に集積したPTH/PTHrP受容体陽性軟骨前駆細胞の機能的散逸を抑制したことを示している。軟骨分化抑制からの脱抑制によって、軟骨再生を誘導する新しい技術となる可能性を示している。
2.活性型ビタミンDによる骨吸収抑制メカニズム
1)マウスにおいても、卵巣摘除によって減少した骨量を、高カルシウム血症を怠起しない薬理量の活性型ビタミンDが、用量依存的に回復させることを確認した。活性型ビタミンDの効果は、エストロゲンとほぼ同程度であった。以上から、活性型ビタミンDの骨粗鬆症に対する治療効果は、ラットとマウスモデルにおいて保存されていること、マウスにおいても、エストロゲンを比較の対照として用いることができることが示された。
2)骨におけるODF/RANKL mRNAの発現は、OVX後2週間目に解析したところ、軽度上昇する傾向は認められたものの、大きな変動はなく、活性型ビタミンDおよびエストロゲンの投与によってもほとんど影響を受けなかった。in vitroにおいては、高用量(10-8M以上)の活性型ビタミンDがストローマ細胞におけるODF/RANKL mRNAレベルを上昇させることが報告されているが、動物の血中濃度は10-10Mオーダーであり、血清カルシウム濃度を正常に保つ程度の薬理量の活性型ビタミンDは、in vivoにおいてはあまりODF/RANKL発現を上昇させないことが明らかになった。
3)OVX後活性型ビタミンDを投与したマウスの骨髄細胞は、in vitroでの破骨細胞形成能が活性型ビタミンDの用量依存性に抑制されていた。抑制の程度は、エストロゲン投与群とほぼ同程度であった。この結果は、十分量のODFとM-CSFが存在する環境においては、言い換えると、破骨細胞の形成を支持する因子がrate-limitingでない条件では、破骨細胞形成能は、その前駆細胞の数に依存すること、間接的に、in vivoで活性型ビタミンDを投与しておくと、骨髄中の破骨細胞前駆細胞の数が減少することを意味する。
4)以上の結果に基づき、実際にfrequency解析を行って、骨髄中の前駆細胞の数を評価したところ、in vivoで活性型ビタミンDを投与したOVXマウスでは、OVX対照群と比較して、前駆細胞のfrequencyが用量依存性に減少することが示された。
3.骨特異的エストロゲン作用の分子基盤
Ser118がリン酸化されたhERαA/B領域蛋白をプローブとしたfar western法による解析の結果、COS-1、MCF-7、HeLa細胞で発現が異なるものの各々の細胞に68、72,120kDaの分子量の相互作用因子を検出した。far western法やYeast two-hybird法による検索の結果、72kDaの分子はp68と相同性が高く同じDEAD-box proteinの1種であるp72である可能性が示唆された。ルシフェラーゼアッセイにより、p72のhERαの転写活性化能に対する効果を検討したことろ、p72はhERαの転写活性化能を亢進した。また、この効果はhERαAF-1に特異的であることが判明した。さらに、最近明らかとなった、PR、ERなどのAF-1の転写活性化能の亢進を行なうRNA分子であるSRAとp72の協調効果を検討したところ、これらは協調的にhERαAF-1の転写活性化能を亢進した。またSRAとp72のin vitroにおける直接の相互作用も確認した。さらにp72とhERαの細胞内極在を検討したところ、p72とhERαはリガンド添加時に局在が一致した。また免疫沈降法によりp72とhERαの細胞内での相互作用も確認した。以上の結果より、p72がhERαの転写共役因子として機能することが明らかとなった。p72はRNA helicase p68と高いホモロジーを持つが、これまでの報告ではRNA helicase活性は認められていない。従ってp72によるhERαAF-1の機能亢進がどのような分子機構により発揮されるのか不明である。これまでの解析から、p72の転写共役因子としての働きはSRAと協調的であることが示唆されている。今後、骨組織においてp72が如何にAF-1活性が発揮されるときに形成される転写共役因子複合体について興味がもたれる。現在hERαAF-1領域Ser118のMAPキナーゼによるリン酸化依存的に形成される複合体の解析を行なう目的で、この複合体の精製を進めている。この複合体の性状解析を行うことがhERαAF-1の転写活性化機構解明には必須の課題であると考えられる。
4.Klotho遺伝子多型と骨粗鬆症
1)cSNPsの検索
Exon1の上流に1ヶ所(G/G78.8%、G/A14.2%、A/A7.1%)、exon3に1ヶ所(C/C92.6%、C/T7.4%)、exon4に2ヶ所(C/C60.0%、C/T30.6%、T/T9.4%、およびC/C54.1%、C/T37.8%、T/T8.1%)の、計4個のcSNPsを特定した。
2)Association study
骨粗鬆症との関連については閉経後女性215例(平均73.2才)の前腕の骨密度をDXAを用いて測定した。OPLLとの関連についてはOPLL患者73例(63.7才)の単純レントゲン像における骨化椎体数を測定した。全症例の末梢白血球からDNAを抽出し、SSCP法またはdirect sequence法にて上記4ヶ所のcSNPについて遺伝子型分類を行い、それぞれの表現型との相関を検討した。その結果、閉経後の女性全215例においてはどのcSNPsも骨密度と有意な相関を示さなかった。しかしながら、症例を年齢の平均値を境にして若年群(119例)と老年群(96例)に分けて解析したところ、老年群においてexon4の1ヶ所のcSNPsと骨密度の間に有意な相関が認められた。OPLLについては、全症例でも年齢別でも、どのcSNPsとも有意な相関は認められなかった。本年度の検討で、klotho遺伝子座多型のうち、その機能への関与が不明のままであるCAリピートによるマイクロサテライト多型のみならず、機能に直接関わるcSNPsが高齢者の骨量減少に関与している可能性が示された。若年群には見られず老年群においてのみ有意な相関が認められたのは、閉経という内分泌環境の影響が小さくなった老年群でklothoの関与が強く出たため予測される。事実、我々は変形性関節症患者を対象としてマイクロサテライト多型との関連を検討したが、本疾患の場合は若年群のみに有意な相関が認められた。これは、変形性関節症患者においては加齢とともに、力学的負荷の蓄積が増え環境因子の関与が大きくなるためと予測される。
結論
1)軟骨の分化が、BMTとPTH/PTHrPによる正負のオートクリンシグナルバランスによって制御されていること、PTH/PTHrPシグナルが間欠的に加わることによって軟骨前駆細胞の再生場からの散逸を抑制し軟骨再生を誘導しうることを明らかにした。
2)骨吸収と骨形成の修復過程において、ホルモン型ビタミンDが骨吸収を抑制すること、そのメカニズムとして、in vivoではODF/RANKL発見はあまり変化せず、むしろ骨髄における破骨細胞前駆細胞の数が減少することを見いだした。
3)エストロゲン受容体(ER)のN末端側の転写促進領域(AF-1)に結合する蛋白p68をクローニングした。p68は、RNAヘリケースの1種で、核内ホルモン受容体のなかでもERαに特異的であることが判明した。
4)抗老化遺伝子として注目されるklotho遺伝子座に4つのcSNPを同定し、高齢女性において骨密度と相関することを明らかにした。

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