介護支援専門員の介護サービス計画立案を支援するインタラクティブ(双方向)コンピュータシステムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
199900171A
報告書区分
総括
研究課題名
介護支援専門員の介護サービス計画立案を支援するインタラクティブ(双方向)コンピュータシステムの開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
北島 英治(東海大学健康科学部社会福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田進一(大阪市立大学生活科学部)
  • 岡田まり(花園大学社会福祉学部)
  • 西村秋生(国立医療・病院管理研究所)
  • 藤林慶子(北海道女子大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度実施にともない、介護支援専門員は「介護サービス計画」を作成しなければならない。その作成を効率的に行うための支援コンピュータ・エキスパートシステムを開発することが本研究の第一義的目的である。介護保険制度では、要介護判定が行われた後、その高齢者の状況に応じて、「基準サービス種別」から実施可能な各サービスを選択し、頻度と時間を決定し、計画書を作成する。計画作成は介護支援専門員の経験と熟練によって行われる。その専門家(エキスパート)の介護サービス計画作成過程を研究することにより、専門家判断ロジックを分析し、コンピュータ支援エキスパートシステムプログラムを組むこが可能となる。介護支援専門員の介護サービス計画立案を支援するインタラクティブ(双方向)コンピュータシステムの開発が本研究の最終目標となる。
研究方法
平成11年度は、研究班会議を招集し検討を重ね、以下のように研究調査を実
施した。
1)研究調査実施の過程:介護サービス計画を実施する調査対象機関・施設の選定を行った。調査実施施設は、病院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、社会福祉協議会等の31施設・機関となった。介護サービス計画作成にあたる専門家は101名であり、調査対象高齢者は、施設95名、在宅84名、総数179名であった。介護サービス計画を立てるにあたって使用した課題分析(アセスメント)票は、在宅の調査対象高齢者に対しては、MDS-H方式、日本介護福祉士会方式、日本看護振興財団方式、全国社会福祉協議会版居宅サービス計画ガイドライン方式の4方式とした。施設の調査対象高齢者に対して、MDS方式、日本社会福祉士会方式、三団体版包括自立支援プログラム方式の3方式によって行った。研究調査における介護サービス計画は「平成10年度高齢者介護サービス体制整備支援事業実施要綱」に基づく「介護サービス種別」と「介護サービス計画書式(1)(2)」を利用した。
2)介護サービス計画研究調査開始:調査実施施設・機関からの代表者を召集し、調査説明会を開催した。その後、各施設・機関において、以下の「研究調査マニュアル」に則って各種専門家による介護サービス計画作成の実施を行った。
① 調査者の選定:機関・施設内で調査に協力いただける調査者を選定した。調査者の職種、勤務年数、課題分析(アセスメント)実施経験の有無は問わなかった。調査者として、できるだけ1機関・施設で3名以上選定することとした。
② 調査対象高齢者の選定:『課題分析(アセスメント)』、『介護サービス計画(ケアプラン)』の調査対象高齢者は、1調査者あたり2人以上とした。調査対象高齢者はできる限り、調査者間で同じ高齢者を対象とする。1機関で3人の調査者の場合は、3人の調査者が2人の調査対象高齢者に対して、課題分析(アセスメント)と介護サービス計画(ケアプラン)作成を実施することとした。
③ 調査実施期間:平成11年11月中旬から12月の1ヶ月半の間に実施したが、調査票全てが回収されたのは平成12年2月となった。
④ 調査票等:課題分析(アセスメント)票、介護サービス計画(ケアプラン)票は研究者から送付したものを使用した。調査者ごとに封筒に入れた課題分析(アセスメント)票、介護サービス計画(ケアプラン)票等を調査代表者に一括して送付した。
⑤ 調査の実施は、下記の手順で行った。ア)在宅の高齢者を調査する場合は、あMDS-HC方式、日本介護福祉士会方式、日本訪問看護振興財団方式、全国社会福祉協議会版居宅サービス計画ガイドライン方式を課題分析票とし、方式ごとに理想的介護サービス計画と現実的介護サービス計画を作成する。2)施設の高齢者を調査する場合は、MDS方式、日本社会福祉士会方式、三団体版包括的自立支援プログラム方式を課題分析票とし、居宅の場合と同様に方式ごとに理想的介護サービス計画と現実的介護サービス計画を作成した。
3)アンケート調査の実施:「課題分析」「介護サービス計画作成」実施後に、調査対象者にアンケートを実施した。アンケートは職種別に「課題分析」「介護サービス計画作成」等に差異があるかどうかについてと調査者が通常使用している「課題分析」等を確認した上で、今回実施した方式について、記入に要した時間、感想等を調査した。また、各方式の項目ごとに実際に介護サービス計画作成に影響を与えた項目かどうか、その項目は介護サービス計画作成に必要だと思うかについてをチェック項目で聞き取った。
結果と考察
研究研究調査結果は、本研究班が開発依頼したコンピュタ・データベース・システム(Visual BASIC&ACCESSプログラム、ライフネット・エンタープライズ社作成)にデータベース化した。101名の専門家による介護サービス計画事例データベースは、総数179事例となった。その結果から、1)「介護サービス計画」と「介護計画」を混同する傾向が、特に施設において見られた。2)各機関・団体の課題分析方式を利用しての<アセスメント><問題・課題設定><サービス計画立案>という推論過程は、冗長性と非効率性が見られた。3)各機関・団体の課題分析方式の項目の簡易化と、その課題分析項目記入・アセスメント・課題設定・計画作成といった従来の専門家推論過程の再検討の必要性を示唆した。4)アンケート結果からは、もっと簡単で時間がかからないアセスメント方式を望む意見が多かった。また、アセスメント方式が異なっても作成した介護サービス計画が同じという結果が多く生じた。今回の調査で全ての方式を行うことにより、勉強になったという意見も多かった。アンケート結果によりサービス計画作成に必要な項目、ケアプラン作成に必要な項目の区分が可能となるものと考える。上記の結果から、第一に「居宅介護サービス計画」「施設介護サービス計画」「介護計画」「ケアプラン」「訪問介護計画」「訪問看護計画」等の用語の整理の必要性が示唆された。第二に、従来のサービス計画作成に至る推論過程とは異なる方法でサービス計画を策定していると考えられ、推論過程そのものの再検討の必要性をあると考えた。第三に、課題分析票の項目の多さから各種の混乱が生じていると考えられた。第四に、アンケート結果からも項目数の多さが指摘された。また、異なった課題分析票による介護サービス計画の作成を行ったことにより、課題分析票から介護サービス計画の策定を行っているのではないということに気づいたという意見も出され、先にも述べた考察と併せて今後検討を行っていく必要があると考える。
結論
結論と今後の課題=専門家の計画立案は、課題分析項目の簡素化とアセスメント・計画立案といった推論過程への再検討の必要性が示唆された。今後、すでにデータベース化された179のサービス計画事例結果から、必要アセスメント項目と介護サービス計画立案専門家推論ロジックを分析し、人口知能的機能を含めた双方向エキスパートシステム・コンピュータ・プログラム作成を開始する。

公開日・更新日

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