骨粗鬆症の原因遺伝子に関する遺伝疫学的研究

文献情報

文献番号
199900153A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症の原因遺伝子に関する遺伝疫学的研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
折茂 肇
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木隆雄
  • 江見 充
  • 羽田 明
  • 井上 聡
  • 細井孝之
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症は低骨量にもとづく易骨折性の増大を病態の根本とする疾患である。骨量は複数の環境因子と遺伝的素因によって規定されるため、骨粗鬆症は多因子遺伝病の一つとして考えられる。我々はこれまで、骨代謝関連遺伝子を候補遺伝子としてとりあげ、それらの多型性を骨量との関連を検討することにより、骨粗鬆症遺伝子の探究を行なってきた。近年の骨代謝研究の進歩により、骨形成と骨吸収において中心的な役割をはたす遺伝子群に関する知見がさらに充実している。我々はこれらの研究成果をもとに候補遺伝子のリストを拡充している。これらの遺伝子と骨量、ならびに骨粗鬆症発症との関連を遺伝疫学的手法で検討するとともに、有意な相関をもつ遺伝子多型性の生物学的な意義を追求するために、各種の方法による、一塩基置換多型(single nucleotide polymorphisms, SNPs)
を各遺伝子の転写調節領域ならびにエクソン内に検索し、その意義を検討した。また、多因子遺伝病と考えられる骨粗鬆症における遺伝因子それぞれがもつ寄与率は高いものではないことも示唆されている。むしろ、寄与度が比較的低い遺伝子群の蓄積的な効果によって骨量の遺伝的素因が形成されている可能性がある。そこで、これまで日本人閉経後女性において、低骨量との関連が示されている骨代謝関連遺伝子群の蓄積効果を検討した。さらに、高齢者における骨量の変動について4年間にわたる縦断的調査の結果をまとめ、遺伝子解析結果と合わせて解析する重要な形質の一つとして把握した。
研究方法
対象は大きく、3群にわけられる。その一つは秋田県在住の非血縁高齢者女性群、第2は群馬県在住の姉妹例、第3は長野県在住の非血縁健康閉経後女性群である。これらの対象者からインフォームドコンセントのもとに静脈血を採取した。骨代謝関連遺伝子の中で、osteoprotegerin、aromatase、PPARγ、estrogen receptorβ(ERβ)、p57Kip2、tumor necrosis factor α (TNFα)、interleukin 6(IL6)、vitamin D receptor (VDR)、parathyroid horomen(PTH)、apolipotrotein E (ApoE)、methylene tetrahydrofolate reductase (MTHFR)を取り上げた。これらの遺伝子についてmicrosatellite markerやrestriction fragment length polymorphysm (RFLP)などの多型性をもちいて遺伝型を決定した。候補遺伝子の近傍に多型性がまだ見出されていないものについてはBAC 1ibraryからのスクリーニングを行ない単離した。
骨量はdual energy X-ray absorptio-metry(DXA) にて、腰椎ならび全身骨または前腕骨遠位端について測定した。
統計的解析は非血縁集団についてはassociation studyを、姉妹例についてはノンパラメトリック連鎖解析を行なった。
結果と考察
非血縁集団におけるassociation studyにおいては ERβ、p57Kip2、PPARγの多型性があたらに骨量と相関を持つ遺伝子群として認識された。姉妹を用いたsib-pair analysisは osteoprotegerin、aromatase、TNFα、IL6について行なわれ、TNFα、IL6について有意な結果が得られた。さらにpolymerase chain reaction single strand conformational polymorphism (PCR-SSCP)法を用いたSNPsの検索では、osteoprote-gerinならびにIL6遺伝子において新たな多型部位がみいだされた。さらに、その中の一つの多型性は非血縁女性集団において、骨量との間に有意な連関をもち、新しい遺伝子マーカーとして注目された。
これまで報告してきた遺伝子型が低骨量と有意な関連をもつことを確認した上で、これらの遺伝的素因の重なりあいが、さらなる低骨量をもたらすことをしめすことができた。
4年間におよぶ骨量の縦断的調査によって、後期高齢者においてもさらなる骨量減少が、比較的急速に進行することが判明した。とくに転子部の低下が著しく、今後の遺伝的素因の解析における新しいターゲットになることが示唆された。
今年度の研究により、新たな骨粗鬆症原因遺伝子群が同定されたと考えられる。次年度以降もこれまでの方針で研究を進めいく価値があるものと考えられた。
結論
骨粗鬆症の原因遺伝子について遺伝疫学的な研究が進められた。

公開日・更新日

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更新日
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