ME機器の進歩に基づく新しい診断法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
199900127A
報告書区分
総括
研究課題名
ME機器の進歩に基づく新しい診断法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
森山 紀之(国立がんセンター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田茂昭(国立がんセンター東病院)
  • 大山永昭(東京工業大学工学部)
  • 向井清(東京医科大学)
  • 牛尾恭輔(国立病院九州がんセンター)
  • 落合淳志(国立がんセンター研究所支所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 がん克服戦略研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
92,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医療診断用ME機器の開発を行い、これらの開発された機器を用いた新しいがん診断法の確立を行うこと、がん診断画像情報転送についての管理、運営効率の良いシステム化の構築を行うこと、新しく開発された診断方法と総合画像管理システムの体系化によって臨床画像、病理画像のレファレンス化を行うことによって、画像診断における画像診断の精度・効率の向上を目指すものである。
研究方法
01)ヘリカルCTを用いた肺がん検診の継続と検診内容の解析を行った。解析内容は検診結果、胸部X線写真とヘリカルCT画像との対比、ヘリカルCTによってのみ発見可能であった病変の病理学的所見と画像との比較、経過症例についての経時的な画像所見の変化である。
02)本研究で開発されたヘリカルCTによる肺がん検診システムによる肺がん検診を米国においてメイヨークリニックとの協同で開始した。
03)ヘリカルCTの肺病変画像データをコンピューター支援自動診断システムを用いて診断を行い、このデータと画像診断専門医による読影データとの比較検討を行った。
04)ヘリカルCTを肺がん検診に導入した後に発見された肺がん群の5年生存率の算出を行い、ヘリカルCT導入前の5年生存率との比較を行った。
05)分光内視鏡システムを用い、上部消化管病変と正常部における分光スペクトルの解析を行った。
06)ネットワーク上で転送・保管されるデータについてのセキュリティに関する研究を行った。
07)がん画像データベースの構築を行うためのシステム開発を行った。
08)乳がん病理に対するコンピューター支援自動診断装置の開発を行った。
結果と考察
A)結果01)ヘリカルCTによる肺がん検診によって従来は発見不能な早期の肺がんが数多く存在し、これらの肺がんはCT画像上淡い影として見られ、治療後の予後が良いことが判明した。
02)メイヨークリニックとの協同研究によりヘリカルCTによる肺がん検診が米国において実際に開始された。
03)ヘリカルCT画像のコンピューター支援自動診断システムの開発を行い、診断医と同等、または、これを上回る診断能を有するシステムの開発に成功した。
04)検診にCT導入後5年生存率は82%であり、導入前の5年生存率48%に比して有意に良好であった。
05)上部消化管に対する分光内視鏡検査の結果、正常部とがん部とでは分光スペクトルが異なることが証明された。
06)医療データのセキュリティを保持するためのICカードの鍵システムの開発を行った。
07)がん画像レファレンスデータベースの構築を行い、インターネット上に公開した。
08)乳がん病理ミクロ像に対するコンピューター支援自動診断装置の開発を行い良好な結果が得られた。
B)考察01)早期の肺がんは肺胞上皮に沿ってがんが広がって病変内に含気が多く、従来の胸部X線検査では発見不能と考えられた。
02)肺がんは世界中でも最も普遍的ながんであり、米国メイヨークリニックと協同研究を行うことは国際的な視野からも有用と考えられた。
03)ヘリカルCTの画像を精度の高いコンピューター支援自動診断システムを用いて処理することは精度の高い肺がん検診を能率よく行う上で重要と考えられた。
04)肺がん検診にヘリカルCTを用い、より早期の肺がんを発することによって肺がんの治療成績を向上させることが可能であることが証明された。
05)分光内視鏡装置による正常部とがん部との分光スペクトルの解析からがん病変部を認識することは新しいがん診断法として有用と考えられた。
06)医療情報のセキュリティ保守は大切なことであり、精度の高い保守システムを構築することはがん診療上有用と考えられた。
07)がん画像レファレンスシャルデータベースを広くインターネット上に公開することはグローバルな観点から見てがん診療上有意義なことと考えられた。
08)病理画像に対するコンピューター支援自動診断装置を利用することによって病理診断の精度は向上するものと考えられた。
結論
01)ヘリカルCTによる肺がん検診によって治療後の予後良好な早期肺がんが数多く発見できることが確認された。
02)メイヨークリニックと協同でのヘリカルCTによる肺がん検診が米国で開始された。
03)ヘリカルCTの画像情報データを対象にコンピューター支援自動診断システムの開発を行い、画像診断医と同等、または同等以上の診断能を有するシステムの開発に成功した。
04)肺がん検診にCTを導入することによって肺がんの治療後の予後延命を改善させることが可能と考えられた。
05)胃病変に対して分光内視鏡による分光測定を行い、正常粘膜、腺腫、びらん、過形成ポリープ、進行胃がん、胃潰瘍との間で有意な分光スペクトルが存在することが確認された。
06)医療情報に対する秘密鍵情報を安全に管理するためのシステム、および原本性保証電子保存システムの開発を行った。
07)がん画像データベースの構築を行い、これをインターネット上で国内外に公開した。
08)乳管内病変に対するコンピューター支援病理自動診断システムの開発をおこない、このシステムの有用性を証明した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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