日本におけるヘルスプロモーション展開方法とその発展途上国での適応に関する研究

文献情報

文献番号
199900101A
報告書区分
総括
研究課題名
日本におけるヘルスプロモーション展開方法とその発展途上国での適応に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
岩永 俊博(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 松田正己(静岡県立大学)
  • 塩飽邦憲(島根医科大学)
  • 仲間秀典(信州大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
3,525,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOから提示されたヘルスプロモーションについては、すでに先進各国において、健康づくり活動の中心的戦略として取り組みが行われているが、発展途上国においても、今後そのような取り組みは重要な位置を占めることが予測される。日本においては、欧米で開発された方法の移入ではなく、日本でのコミュニティを基盤として、ヘルスプロモーションの概念を基盤においた保健活動の展開モデルが開発され、行政や住民を交えた取り組みや、住民が中心となった地域での取り組みの例が報告されている。この日本で開発されているヘルスプロモーションの展開モデルは、発展途上国への応用の可能性があると考えられる。本研究では、日本で開発されているヘルスプロモーションの展開モデルについて、実際のフィールド活動も含めて、日本的な行政システムや政策形成モデルの視点から分析するとともに、異なる文化的、政治的、経済的背景を持ついくつかの国での行政システムや政策形成モデルの視点からもあわせて分析することにより、日本でのモデルの発展と発展途上国での応用の可能性や海外での適応の可能性を検討した。
研究方法
研究の経過としては、以下の手順を取った。1.日本型ヘルスプロモーションの展開モデルとして、地域づくり型保健活動(SOJO-Model)について、発展途上国への適応を前提として、展開方法や特徴を検討した。2.発展途上国におけるヘルスプロモーション活動の必要性について検討した。3.これまで、SOJO-Modelを適応してきた福島県大越町、奈良県十津川村、高知県日高村などで住民を交えたワークショップに参加し、展開方法を検討分析した。4.対象となった地域において、専門家や住民を対象として、住民と専門家との関係性や展開方法の困難さなどについて聞き取り調査を行った。5.以上の検討結果を踏まえ、各分担研究者それぞれの視点、各分担研究者のもとに発展途上国から留学している外国人研究者、さらに日本から海外でのプロジェクトにかかわっている実践者などを含めて、発展途上国において適応する場合の問題点やその改善策について検討した。次年度以降において、バングラディッシュ、ブラジルなどで実践的に適応の可能性を検討する予定である。
結果と考察
まず、日本型ヘルスプロモーションモデルとして、地域づくり型保健活動(SOJO-Model)をとりあげ、その特徴を検討した。それはこのモデルが、①欧米型民主主義の発達した地域ではなく旧来型むら社会の人間関係の存在するコミュニティ、②地方分権とはいいつつも中央集権的色彩の強い行政組織、③住民からの行政依存性、政治依存性の傾向が強い地方公共団体と住民との関係などを背景としており、そのような社会的背景をもつプロセスモデルであることが、国により多少の違いはあるものの同様な背景を持つ発展途上国での適応の可能性を検討するに際して、このモデルを「日本型」として検討の対象とした理由である。その特徴として、①保健活動の目的を、地域住民の健康な暮らしの具体的な姿として描くという目的志向的であること、②そこで描いた目的の実現を統合的に志向し、そのための方法を住民や多分野の人たちで一緒に考え決めていくという、住民とのパートナーシップ、③そのような経過をたどって出来た計画書に基づいて活動を始め、途中経過を検討しながら進めていくという展開プロセスを概念化したモデルであることなどがあげられた。発展途上国においてヘルスプロモーション活動を進める条件として、国民生活の安定、既存の保健活動の実践的経験、地方分権や住民参加に対する政策決定者の理解などがあげら、実践に
はさまざまな課題があることが示唆された。しかし、ヘルスプロモーションの実践を目指すことは時代的にも潮流であり、小さなコミュニティからでも試み、課題解決の方法を実践的に検討することの必要性も提示された。次年度以降において、バングラディッシュ、ブラジルなどで実践的に適応の可能性を検討する予定である。
結論
発展途上国においてヘルスプロモーション活動を進める条件として、国民生活の安定、既存の保健活動の実践的経験、地方分権や住民参加に対する政策決定者の理解などがあげら、実践にはさまざまな課題があることが示唆された。しかし、ヘルスプロモーションの実践を目指すことは時代的にも潮流であり、小さなコミュニティからでも試み、課題解決の方法を実践的に検討することの必要性も提示された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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