文献情報
文献番号
199900097A
報告書区分
総括
研究課題名
統計情報のマルチデータリンク法、マルチデータメタ分析の研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長)
研究分担者(所属機関)
- 堀口裕正(九州大学医療システム学教室)
- 松本邦愛(国立医療・病院管理研究所医療政策研究部協力研究員)
- 近藤久禎(国立医療・病院管理研究所医療政策研究部協力研究員)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
マルチデータリンク法やマルチデータメタ分析法の手法を開発発展させることにより、全国や地方レベルにおける保健医療福祉の実態を総合的かつ詳細に把握する手法を開発することを目的とする。この研究により、また国立医療・病院管理研究所は国立公衆衛生院と統合され、保健医療福祉分野を連携してとらえる研究を推進していくことが予定されており、この研究は新たな研究所構想に資すると考えられる。
研究方法
以下のような研究方法で行った。
Iマルチデータリンク法
1.国民生活基礎調査と栄養調査のリンク
1)血圧と受診状況の分析
平成8年度の国民生活基礎調査及び栄養調査を県、地区、単位区、世帯、IDを揃え、更に個人は生年月日でリンクした。栄養調査からは血圧値、降圧剤の服用、BMIなどの変数を抜き取り、国民生活基礎調査からは年齢、性、自覚症状、通院状況、特に高血圧並びにその関連の脳卒中や循環器の傷病状況、通院先、かかりつけ医の有無、ストレスの有無や数並びにその原因、健康診断の有無、日々実行している生活改善の事項を抽出した。これらの変数を用いて、かかりつけ医の有無、通院の状況を栄養調査における血圧や降圧剤の使用との関係を分析した。
2)家計支出と健康リスク分析
昭和61年度と平成8年度の国民生活基礎調査の世帯表と栄養調査を世帯IDでリンクした。世帯表の家庭支出と健康リスク、すなわち喫煙と肥満について分析した。家庭支出を10分位に分け、収入10分位における喫煙ならびに肥満の割合を性別に年齢調整をして算出した。さらに昭和61年度から平成2年度への変化の度合いを収入10分位毎に分析した。
2.患者調査の退院表と入院表、及び病院報告の比較分析
1)専門病院分析
専門病院の患者特性を分析するため、医療施設調査と患者調査の退院表をリンクした。まず医療施設調査で、専門病院として最も数が多いと思われる整形外科を選び、医療施設調査で入院患者のうちに整形外科の患者が占める割合を40%、50%、66%、80%の分節点で、5群に分類した。患者調査の退院患者表からは手術の有無、入院前の自院外来以外、退院後の自院外来以外を示す変数を抽出した。患者調査を基本に施設IDによって医療施設調査の情報をリンクした。手術や連携の有無などについて、整形外科の患者集中度に従って分析した。
2)平均在院日数と看護婦投入の分析
また投入看護婦数と平均在院日数との相関につき、同等の投入で平均在院日数の短い施設の特徴を抽出するため、医療施設調査の各施設の毎の一般病床の平均在院日数を計算し、さらに病床あたりの病床利用率を計算した。
Ⅱデータ・メタ分析による研究
1.医療施設調査・患者調査・社会診療行為別調査・医療保健事業年報によるメタ分析
1)外来患者の時代推移
日本には総合的外来患者数の統計はなく、欠点と利点の存在するさまざまな統計が外来患者を取り扱っている。例えば、医療施設調査は、病院の側の患者数は正確に把握しているものの、診療所では、一定時期にかぎられたり、患者調査はサンプル調査としての限界があったりする。そこで、1984、1987、1990、1993、1996年の各調査のデータと特徴を並べて、総合的にメタ分析した。
2)がん手術数
がん手術数について、同様の分析を行った。
2.患者調査と人口動態統計のメタ分析
平成8年度の患者調査の手術死亡数と人口動態統計の死亡者のうち手術をうけたことのあるものをがん患者によって抽出・分析した。
Ⅲマルチデータプール法
健康日本21など新しい健康政策の基礎資料として県別の健康状態の分析が必要である。しかし、一般に調査は全国レベルで展開されており、そこで栄養調査の個票を10年プールすることにより、血圧、体重、飲酒、喫煙などの生活習慣、健康状態の変数を県別に比較・分析した。
Iマルチデータリンク法
1.国民生活基礎調査と栄養調査のリンク
1)血圧と受診状況の分析
平成8年度の国民生活基礎調査及び栄養調査を県、地区、単位区、世帯、IDを揃え、更に個人は生年月日でリンクした。栄養調査からは血圧値、降圧剤の服用、BMIなどの変数を抜き取り、国民生活基礎調査からは年齢、性、自覚症状、通院状況、特に高血圧並びにその関連の脳卒中や循環器の傷病状況、通院先、かかりつけ医の有無、ストレスの有無や数並びにその原因、健康診断の有無、日々実行している生活改善の事項を抽出した。これらの変数を用いて、かかりつけ医の有無、通院の状況を栄養調査における血圧や降圧剤の使用との関係を分析した。
2)家計支出と健康リスク分析
昭和61年度と平成8年度の国民生活基礎調査の世帯表と栄養調査を世帯IDでリンクした。世帯表の家庭支出と健康リスク、すなわち喫煙と肥満について分析した。家庭支出を10分位に分け、収入10分位における喫煙ならびに肥満の割合を性別に年齢調整をして算出した。さらに昭和61年度から平成2年度への変化の度合いを収入10分位毎に分析した。
2.患者調査の退院表と入院表、及び病院報告の比較分析
1)専門病院分析
専門病院の患者特性を分析するため、医療施設調査と患者調査の退院表をリンクした。まず医療施設調査で、専門病院として最も数が多いと思われる整形外科を選び、医療施設調査で入院患者のうちに整形外科の患者が占める割合を40%、50%、66%、80%の分節点で、5群に分類した。患者調査の退院患者表からは手術の有無、入院前の自院外来以外、退院後の自院外来以外を示す変数を抽出した。患者調査を基本に施設IDによって医療施設調査の情報をリンクした。手術や連携の有無などについて、整形外科の患者集中度に従って分析した。
2)平均在院日数と看護婦投入の分析
また投入看護婦数と平均在院日数との相関につき、同等の投入で平均在院日数の短い施設の特徴を抽出するため、医療施設調査の各施設の毎の一般病床の平均在院日数を計算し、さらに病床あたりの病床利用率を計算した。
Ⅱデータ・メタ分析による研究
1.医療施設調査・患者調査・社会診療行為別調査・医療保健事業年報によるメタ分析
1)外来患者の時代推移
日本には総合的外来患者数の統計はなく、欠点と利点の存在するさまざまな統計が外来患者を取り扱っている。例えば、医療施設調査は、病院の側の患者数は正確に把握しているものの、診療所では、一定時期にかぎられたり、患者調査はサンプル調査としての限界があったりする。そこで、1984、1987、1990、1993、1996年の各調査のデータと特徴を並べて、総合的にメタ分析した。
2)がん手術数
がん手術数について、同様の分析を行った。
2.患者調査と人口動態統計のメタ分析
平成8年度の患者調査の手術死亡数と人口動態統計の死亡者のうち手術をうけたことのあるものをがん患者によって抽出・分析した。
Ⅲマルチデータプール法
健康日本21など新しい健康政策の基礎資料として県別の健康状態の分析が必要である。しかし、一般に調査は全国レベルで展開されており、そこで栄養調査の個票を10年プールすることにより、血圧、体重、飲酒、喫煙などの生活習慣、健康状態の変数を県別に比較・分析した。
結果と考察
以下のような結果と考察が得られた。
Iマルチデータリンク法
1.国民生活基礎調査と栄養調査のリンク
1)血圧と受診状況の分析
国民栄養調査の個表と国民生活基礎調査の現行表では、世帯番号までは一致するものの個人のIDの一致を見ず、生年月によるリンクを試みた。個人レベルでは数%リンクすることができなかった。平成9年の患者調査及び人口動態統計より、患者調査では9月1ヶ月間に手術を受けて死亡した退院患者数を、人口動態統計からは手術による死亡の数を抽出し、がんの種類毎、十分類で比較検討した。従来、栄養調査の薬剤服用葉患者の数と患者調査や国民生活基礎調査による受診患者数の間にはずれがあり、国民生活基礎調査のデータを用いると数百万人多く成形される。その理由は、国民生活基礎調査における薬剤が「降血圧剤」や「心臓病の薬」などと広く定義されているからと考えられ、今回の分析では高血圧と自覚していないもの、このグループが非高血圧者薬剤投与分の非高血圧者である可能性を示唆しており、国民生活基礎調査を用いて服薬分を高血圧患者に定義した場合、真の値より約10.9%と多く推計される可能性が示唆された。
2)家計支出と健康リスク分析
支出がすなわち所得と考えられる。がん十分類と血縁の関係では、男女とも明らかな傾向は見られず、かつ昭和61年から平成8年への変化も特に傾向は認めらない。肥満においては第4分位と最高位にピークを持ち、昭和61年から平成8年への変化を見ると、男性では低所得者層に肥満が増加している傾向が認められ、女性では逆に高所得者層に肥満が増加している傾向が認められた。
2.患者調査の退院表と入院表、及び病院報告の比較分析
1)専門病院分析
整形外科専門病院の場合も退院患者の診療科を分析すると、内科が多く、また、手術件数は40%から60%を占めていた。入院前、約半数が退院科からの移行患者であるが、退院後は、80%以上自院に通院し、専門病院の場合には特に、紹介後自院通院の割合が高いことが判明した。
2)平均在院日数と看護婦投入の分析
同等の投入看護婦数に比して、平均在院日数が短い施設は、術前術後共に在院日数が短く、紹介率も高い特徴を示した。
Ⅱデータ・メタ分析による研究
1.医療施設調査・患者調査・社会診療行為別調査・医療保健事業年報によるメタ分析
1)外来患者の時代推移
どの調査もそれぞれ欠点と利点を有するが、病院に関しては医療施設調査が全数で比較でき正確と考えられ、これをベースに計算すると、昭和50年以降、日本の外来患者は人口割りにしてほぼ一定と考えられる。
2)がん手術数
がんの手術数を患者調査の九月分を12倍した数と人口動態統計を比べてみると、人口動態統計は105771で患者調査では33799とほぼ人口動態統計の3分の1であった。ただ、胃や結腸と部位別の分布は、いずれも似たパターン示した。この差は、人口動態統計の場合、複数回の入院のうち一度でも手術をした場合に手術とされr、患者調査の場合は、入院中に限られるので起きていると考えられる。
2.患者調査と人口動態統計のメタ分析
患者調査による手術入院回数が、その他の調査の数よりも多く推計された。とくに社会診療調査の場合、かなり少なく見積もられて、すべての手術を網羅していないからだと考えられる。一方、医療施設調査は、特定のがんに限られた資料しかなく、低い値を示した。平成8年の医療施設調査では、全がんの手術件数を調査しているが、これも医療施設調査が患者調査の方よりも低く、患者調査の場合には、がんの手術以外の手術も含まれているということが示唆される。
Ⅲマルチデータプール法
平成3年から平成7年までのプールデータを用いた県別の分析では、喫煙が多いのは北海道、飲酒が多いのが青森であった。ともに少ないのは徳島であった。健康日本21で行われている、若年者(25-45歳)の喫煙率と肥満率を県別に調べると、女性の喫煙率では北海道が多く、男女共に肥満では沖縄が例外値であった。
Iマルチデータリンク法
1.国民生活基礎調査と栄養調査のリンク
1)血圧と受診状況の分析
国民栄養調査の個表と国民生活基礎調査の現行表では、世帯番号までは一致するものの個人のIDの一致を見ず、生年月によるリンクを試みた。個人レベルでは数%リンクすることができなかった。平成9年の患者調査及び人口動態統計より、患者調査では9月1ヶ月間に手術を受けて死亡した退院患者数を、人口動態統計からは手術による死亡の数を抽出し、がんの種類毎、十分類で比較検討した。従来、栄養調査の薬剤服用葉患者の数と患者調査や国民生活基礎調査による受診患者数の間にはずれがあり、国民生活基礎調査のデータを用いると数百万人多く成形される。その理由は、国民生活基礎調査における薬剤が「降血圧剤」や「心臓病の薬」などと広く定義されているからと考えられ、今回の分析では高血圧と自覚していないもの、このグループが非高血圧者薬剤投与分の非高血圧者である可能性を示唆しており、国民生活基礎調査を用いて服薬分を高血圧患者に定義した場合、真の値より約10.9%と多く推計される可能性が示唆された。
2)家計支出と健康リスク分析
支出がすなわち所得と考えられる。がん十分類と血縁の関係では、男女とも明らかな傾向は見られず、かつ昭和61年から平成8年への変化も特に傾向は認めらない。肥満においては第4分位と最高位にピークを持ち、昭和61年から平成8年への変化を見ると、男性では低所得者層に肥満が増加している傾向が認められ、女性では逆に高所得者層に肥満が増加している傾向が認められた。
2.患者調査の退院表と入院表、及び病院報告の比較分析
1)専門病院分析
整形外科専門病院の場合も退院患者の診療科を分析すると、内科が多く、また、手術件数は40%から60%を占めていた。入院前、約半数が退院科からの移行患者であるが、退院後は、80%以上自院に通院し、専門病院の場合には特に、紹介後自院通院の割合が高いことが判明した。
2)平均在院日数と看護婦投入の分析
同等の投入看護婦数に比して、平均在院日数が短い施設は、術前術後共に在院日数が短く、紹介率も高い特徴を示した。
Ⅱデータ・メタ分析による研究
1.医療施設調査・患者調査・社会診療行為別調査・医療保健事業年報によるメタ分析
1)外来患者の時代推移
どの調査もそれぞれ欠点と利点を有するが、病院に関しては医療施設調査が全数で比較でき正確と考えられ、これをベースに計算すると、昭和50年以降、日本の外来患者は人口割りにしてほぼ一定と考えられる。
2)がん手術数
がんの手術数を患者調査の九月分を12倍した数と人口動態統計を比べてみると、人口動態統計は105771で患者調査では33799とほぼ人口動態統計の3分の1であった。ただ、胃や結腸と部位別の分布は、いずれも似たパターン示した。この差は、人口動態統計の場合、複数回の入院のうち一度でも手術をした場合に手術とされr、患者調査の場合は、入院中に限られるので起きていると考えられる。
2.患者調査と人口動態統計のメタ分析
患者調査による手術入院回数が、その他の調査の数よりも多く推計された。とくに社会診療調査の場合、かなり少なく見積もられて、すべての手術を網羅していないからだと考えられる。一方、医療施設調査は、特定のがんに限られた資料しかなく、低い値を示した。平成8年の医療施設調査では、全がんの手術件数を調査しているが、これも医療施設調査が患者調査の方よりも低く、患者調査の場合には、がんの手術以外の手術も含まれているということが示唆される。
Ⅲマルチデータプール法
平成3年から平成7年までのプールデータを用いた県別の分析では、喫煙が多いのは北海道、飲酒が多いのが青森であった。ともに少ないのは徳島であった。健康日本21で行われている、若年者(25-45歳)の喫煙率と肥満率を県別に調べると、女性の喫煙率では北海道が多く、男女共に肥満では沖縄が例外値であった。
結論
患者調査と医療施設調査のごとく、IDが明確にユニークな場合は、リンクは可能で、リンクによって単一調査ではわからない特徴が浮かび上がり、詳細な分析が可能となった。しかし、一定の共通のIDを有する分の細部まで当初からリンクを想定せずに行われた調査、例えば国民生活基礎調査と国民栄養調査では、完全に一致することがなく、生年月日等を用いて試みる必要があった。しかし、リンク不能例は、それほど多くなく、二つの調査のリンクによって従来不明であったことが明らかとなった。データプール法やリンク法では、それぞれのデータの抽出の手法にも問題があり、全国的な分析として使用可能かどうか分析を要する。メタ分析の手法は、それぞれの調査の特徴や限界を浮き彫りにするには有用な手法であり、かつ、真の値への傍証として有効であることが明らかになった。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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