医療担当者のための医薬品適正使用情報活用システムの在り方に関する研究

文献情報

文献番号
199900077A
報告書区分
総括
研究課題名
医療担当者のための医薬品適正使用情報活用システムの在り方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
内山 充((財)日本薬剤師研修センター)
研究分担者(所属機関)
  • 青木誠(国立病院東京医療センター)
  • 久保鈴子((財)日本薬剤師研修センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療関係者は、自らの業務に適切かつ効果的に利用できる情報を手元において、患者に対して副作用情報等の医薬品にかかわる各種の情報を十分に伝え、患者の自己判断を尊重しかつ根拠に立脚した医療を実現していくことが急務とされている。
現在唯一の公的医薬品情報でありすでにデータベース化されている「添付文書情報」及びそれに基づき作成された「医薬品服薬指導情報集」を検索する場合の、事項の組み合わせと優先順位、相関関係などについて、医療関係者から見た利便性、費用対効果の点から研究し、医療関係者自らが必要なデータベースから個人用の情報活用源を作成できるシステムのあり方について検討した。
研究方法
研究分担者を中心として多くの研究協力者の協力を得て、現場における医療担当者の直面する医薬品情報必要度、緊急性、その場合の必要項目、相関性、アウトプットの形式等について調査研究した。研究過程で得られたアイデイアについては、現在入手可能な上記2つの公的情報からそれらを適切に加工して望ましい電子情報として実用化する上での必要なソフトウエアについて、システムエンジニアリングの専門家に委託して、さまざまな角度からフィジビリテイスタデイを実施した。さらに、プロトタイプによる技術的検討もあわせて委託した。
さらに添付文書SGMLデータの読み取りソフトとして市販されたプログラムを利用して、「添付文書情報」の現場での活用利便性を検討し、同情報の内蔵する問題点を知るとともに、本研究における検討結果を生かした読み取りソフトの在り方を考察した。
結果と考察
現在広く配布されまた頻繁に改定されている「添付文書」、ならびに重要品目について詳細に作られた「医薬品服薬指導情報集」のサンプル版を参考として、医療担当者に対する調査研究の結果、診療現場で一番の問題は副作用であり、その情報が視覚的にわかるようなシステムの要望が大きい。また、主として腎障害、肝障害、妊娠への影響が気になることが多いところから、たとえばそのようなキーワードを入力して検索し、その結果が一つの画面に表示されるようなシステムがあると便利であるという意見も多かった。さらに、医療用医薬品と関連のあるOTCの商品名成分名等の情報も必要とされた。
院内で独自に医薬品情報を編纂する必要に迫られる立場からは、相互作用等、処方箋上で疑わしいと思われる事項を、薬品別、薬効別等で検索したい。副作用の予知が可能な表形式の資料を作れるとよい。さらに、一つの薬剤の中で薬効、副作用等を検索するばかりでなく、ある項目を選んで他の医薬品の該当項目を一覧表示できると良いという提案が成されている。
これらをもとにしたフィジビリテイスタデイでは、上記2つの元データの調査分析と末端使用者のプラットフォームの調査分析を行った。またプロトタイプによる技術的検証では、データ加工の検討、末端使用者インターフェイスの検討を行った。プロトタイプの検討の結果をもとに、添付文書情報をデータベース化するためのシステム設計での必要事項、及び服薬指導情報集のデータベース化に際してのDTD設計における留意課題等の整理が行われた。
一方、実験的アプローチとして、添付文書情報から現在重要と思われる医薬品をダウンロードして仮のSGMLサブデータベースをCD-ROM版として試製し、それに既に添付文書情報SGMLデータベース読み取りソフトとして市販されている「ピクセル」を添えて研究分担者及び協力者に配布し、エクセルを受け皿としてどの程度の自己活用ができるか、その利便性と問題点について検討した。その結果、添付文書情報にはいくつかの問題点が指摘されたが、これらは当初より予期されていたことでもあり現在厚生省で改定準備中と聞いているのでその担当部署に提言する。また、サブデータベース及び読み取りソフトについても数多くの知見が得られた。エクセルを受け皿とする方策は適切であるが、検索項目あるいは関連付けについて現場で実際に使用した際の利便性から、改良すべき点が指摘された。これらの指摘は、本研究で得られた検討結果ならびにそれに基づくフィージビリテイスタデイをもとにプログラム設計を行うことにより解決できる問題であり、本研究の成果を生かして次の段階で優れた具体的プログラムが作成されるものと思われる。
結論
医療の現場において、医師が自ら利用しやすい医薬品情報を、公的な情報から検索収集し個人用データベースとして活用するという最終的目標を描きながら、添付文書SGMLデータと医薬品服薬指導情報集を元データとして利用できるか、医療の上でどのような項目、相関検索、関連情報が必要であるかなどを研究した。
医療担当者からの要望を踏まえたフィジビリテイスタデイの結果及びそれに関するプロトタイプによる検証の結果、段階的に計画すれば上記の2つの公的情報は、個人情報源として利用可能であるということが明らかとなった。また、「医薬品服薬指導情報集」のデータベース化推進に必要なDTDに含めるべき検索と表示の一覧を確立することができた。
本研究結果をもとに添付文書情報の整備を進め、医薬品服薬指導情報集の電子化を推進すれば、汎用されているパソコンソフトを受け皿にして、医療担当者各人が利用に便利な医薬品情報データベースを作成する道が開けることが確認された。

公開日・更新日

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