医療機関における看護職の夜勤の実態に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900073A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における看護職の夜勤の実態に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
山口 桂子(愛知県立看護大学)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤美智子(帝京平成短期大学)
  • 市村久美子(茨城県立医療大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
目的の第一は、医療の安全性や看護の質向上及び専門職者である看護婦の労働条件・健康等に影響する夜間勤務の一般的実態を、病棟の特殊性に着目して明らかにすることである。
第二は、看護ケアの必要に応じより質の高い看護サービスを提供する為に論議されている看護度に応じた看護職員配員に関し、その基礎的情報の一つとなる現状の夜間勤務における看護婦配置数が病棟の看護必要度を反映しているかどうかを把握することである。
研究方法
研究1:医療機関における看護職の夜勤の実態に関する研究
1)対象病院の概要・・対象病院選択は、国内全体の実態に近似の状況を把握する為、北海道、東北、関東、中部、近畿、四国、九州の7地区から地区毎に1~2県を無作為抽出、その県内全病院を調査対象とし、合計13都道府県下の3,965病院に調査票を郵送した。
2)対象病院での病棟数の決定と選択・・対象病院の回答病棟数は、病院の病床総数に応じ最大5病棟~最少1病棟と指定して依頼した。病棟選択は、当該施設の総婦長・看護部長に、病棟の看護業務量・患者重症度・看護必要度・勤務形態の違いを考慮するよう依頼した。
3)調査項目・・看護部長には、病院名、病院における看護婦の勤務背景、稼働率、平均在院日数、年休消化率、勤務形態別看護単位数とした。病棟婦長には、①患者の特徴:病棟名(病床の種類)・患者重症度と看護必要度、②勤務者の特徴:職種・人数・勤務形態の種類・一回の夜勤人数とその職種・一ヶ月間の夜勤回数・各勤務帯における勤務者構成・日勤準夜深夜勤のローテーション頻度と方法など12項目とした。
4)調査実施時期・・平成11年10月より平成12年1月までとした。
5)配付・回収・報告・・調査票を施設毎に看護部責任者宛に一括送付し、看護部の協力・承認を得た後、看護部責任者から病棟婦長へ配付し、施設毎に郵送回収した。今後、報告書作成と関係機関への配付、調査回答者等へ結果報告でフィードバック予定である。
6)データ分析・・分析は、統計プログラムSPSS10jを用いてデータ入力・解析を行い、得られた結果の検討にあたっては労務管理、看護管理の専門家を交えて行った。
研究2:アメリカ西海岸で交代制勤務をしている看護婦からの聞き取り調査
1)調査方法・・サンフランシスコ・ロスアンジェルスの近郊の病院で働いている看護婦2名と看護管理者1名から病棟で働く看護婦の24時間の交代制勤務について聞き取り調査を行った。看護婦には労働の現状特に病棟の状況に応じた夜勤の実態について、看護管理者にはシフトワークを行っている看護婦に対し果たしている管理者の役割について調査した。
2) 分析経過・・面接聞取り調査内容について、以下の2点に集約し分析、検討した。
(1)病院で働く看護婦と交代制勤務の現状
(2)夜勤・交代制勤務の適応に関する諸側面
結果と考察
研究1:医療機関における看護職の夜勤の実態に関する研究
病棟看護婦の勤務体制の実態を知るために、病棟管理者を対象にアンケート調査を行った。調査票郵送は13都道府県下の3,965病院に行い、1,236病院、4,112病棟から回答が得られ(回答率31.2%)、以下のことが明らかになった。
1.回答が得られた病院・病棟の特徴は、病院規模 平均235.2床、1病棟の平均病床数49.6床、稼働率85.6%、看護婦数18人で補助者3人、クラーク0.3人であった。病棟の種類では一般病棟が4020病棟(97.8%)、ICUなどのユニット系病棟が92施設(2.2%)であった。
2.夜勤の勤務形態では、8時間三交代制を採用している施設が52.3%と最も多く、ついで8・16時間二交代制の34.2%、変則三交代制の10.0%の順であった。またユニット系では95%以上が8時間三交代制であり、各勤務帯ともほとんど同数の勤務者数で、重症度の高い患者の看護を行なっていることが明らかになった。
3.一夜勤帯の勤務者数は2~4人であるが、一ヶ月の夜勤回数は8時間三交代制を採用している施設の内の一般病棟では準夜勤・深夜勤各4~6回であったのに対し、ICUなどのユニット系では各々6回以上であった。また、8・16時間二交代制を採用している施設でもほぼ4~6回であった。
4.夜勤帯の勤務者数はICUでは常時観察が必要な人の数や常に寝たままの人の数と高い相関を有しており、その傾向は三交代制を採用している施設よりも二交代制の施設においてより強く見られた。一方、一般病棟では夜勤帯の勤務者数と高い相関が見られたのは正規職員である看護婦数のみであった。
研究2:アメリカの西海岸で交代制勤務をしている看護婦からの聞き取り調査
面接による聞き取り調査の結果、以下のことが明らかになった。
1.病院で働く看護婦と交代制勤務の現状・アメリカでは病院で働く職員の31.3%が何らかのシフトワークについているといわれているが、そのシフトシステムは施設の状況により様々である。・毎日のスケジュールについては、ユニットマネージャーが入院患者の病状などの状況により必要看護婦数を割り出し、勤務帯ごとの調整をこまめに行っている。・働く個人がそれぞれの理由でシフトシステムを選択できる余地が十分にある。
2.夜勤・交代制勤務の適応に関する諸側面・アメリカではシフトワークへの参加とシフトの選択が自己決定される点がまずは働きやすさにつながっていると考えられるが、管理者は環境の整備の他、物的・精神的・時間的調整を積極的にされていることが伺われた。
結論
今回把握した我が国における夜間勤務の一般的実態とアメリカにおけるシフトワークの概要の結果は、看護職員の効率的な勤務配置へ活用することができる。
結果からは、ICU系病棟では患者状況に適した看護提供に必要な勤務者数を、全勤務帯で確保する努力がみられたが、一般病棟の夜間勤務者数には必ずしも患者状況や看護必要度が充分に反映していない、または反映し難い状況がみられた。
これらは、①看護職員の限られたマンパワーを効果的に十分に発揮させるためには、勤務配置を病院全体として有効に行なうことが重要で、その看護チーム編成では、病棟一律よりも、例えばPPC方式のような患者重症度・看護必要度に応じた配置またはその時点における状況の変化へ柔軟な対応変更が可能な体制を検討し、きめ細かい人員配置を実施する必要があること、②①を達成するためには、現行の患者重症度・看護度算定方式よりも、実態を反映し且つ簡潔な算定方式の開発が急務であること、を示していよう。

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