クローン技術を利用した動物性蛋白食品の安全性について

文献情報

文献番号
199900048A
報告書区分
総括
研究課題名
クローン技術を利用した動物性蛋白食品の安全性について
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 進(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において、体細胞クローン技術を用いたウシの生産はすでに数十例の成功事例が報告されていることから、今後ますます同技術の普及が計られ、食品として消費者に提供されることが見込まれる。しかし、この技術については科学的に未解明な部分もあり、食品としての安全性についても未検討であった。本研究の目的は、現在までに得られている知見に基づき、クローン技術を用いたウシの食品としての安全性を究明することにある。本研究で得られた成果は消費者等に広く提供することによって、クローン牛の食品としての安全性についての正しい知識を提供する。
研究方法
人工受精から体細胞クローンに至るまでの家畜繁殖技術の歴史、細胞クローン技術における核の初期化と発生異常、クローンウシの生理学的正常性の検査項目、クローン動物の生理と機能、ミトコンドリアが置換されているクローンウシの食品としての安全性に関し、これまでの知見を整理し現状を分析した。
結果と考察
現在までに得られている知見を取りまとめた結果、以下のことが判明した。(1)受精卵クローン牛や体細胞クローン牛においては、流死産や生後直死の発生頻度が従来技術によって生産された牛に比して高い傾向が認められているが、順調に生育する牛も多数存在し、それら個体については調べた限りにおいては各種生理機能を含め特段の異常がこれまで認められていない。(2)植物や微生物、は虫類以下の動物の中には、極めて微量または少数でヒトに対して毒性や病原性を発現し、食品として摂取した場合にヒトに危害を招来するものが少なからず存在するが、ほ乳類や鳥類については、その構成成分であるタンパク質が一部のヒトにアレルギーを招来することはあっても、ヒトが食品として食した場合に、構成成分自体がヒトに毒性や病原性を発現することは知られていない。(3)受精卵クローン牛や体細胞クローン牛において、構成成分として新規に毒性物質や病原物質が生産される可能性を示すような科学的知見は得られていない。以上より、成長した受精卵クローン牛や体細胞クローン牛の両者には本質的な差はなく、現時点で得られている限りの知見からは食品としての安全性を危惧する根拠はないが、より多数のクローン牛について、生理的・機能的データ、乳肉に関するデータをとることによって安全性の裏づけを得ることが望まれる。
結論
受精卵クローン牛や体細胞クローン牛に特有な、食品としての安全性を懸念する科学的根拠はない。しかし今後さらに、クローン牛について、生理的・機能的データ、乳肉に関するデータをとることによって安全性の裏づけを得ることが望まれる。

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