原因不明の疾病あるいは死亡例の発生に対するサーベイランス手法及び早期対応に関する研究

文献情報

文献番号
199900046A
報告書区分
総括
研究課題名
原因不明の疾病あるいは死亡例の発生に対するサーベイランス手法及び早期対応に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
井上 栄(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田毅(国立感染症研究所)
  • 増田和茂(国立感染症研究所)
  • 岡部信彦(国立感染症研究所)
  • 宮村達男(国立感染症研究所)
  • 渡辺治雄(国立感染症研究所)
  • 谷口清洲(国立感染症研究所)
  • 大山卓昭(国立感染症研究所)
  • 高橋央(国立感染症研究所)
  • 大日康史(大阪大学経済研究所)
  • 井伊雅子(横浜市立大)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疾患名によるサーベイランスでは、未知の疾患或いは診断が難しいものについてはその発生状況などを把握することは原則的には不可能であり、特に早期に死に至る疾患の場合には不明のまま放置され、問題が大きくなるまで探知できない恐れがある。本研究は、未知の疾患或いは既知の疾患であっても非常に稀有であるためその診断に時間がかかり、対応が遅れた場合には大きな問題になる恐れのある疾患について、有効なサーベイランス体制とその対応のためのネットワークを構築することを目的とした。
研究方法
①米国、カナダ、ヨーロッパ諸国における不明疾患に対する対応状況を調査した。詳細なマニュアルを作成してているところについては、外国の研究者との協力により、各国のマニュアルを調査し内容を検討し、本邦において実行可能なサーベイランス手法について検討した。②地域で中心的な役割を果たしていると思われる、発生動向調査の基幹病院定点を中心にネットワークを構築し、必要な体制、サーベイランス手法、対象とする疾患概念のクライテリア等を検討した。具体的なマニュアル作成にあたっては諸外国のものを参照し、本邦の実情に合わせた対応マニュアルを作成し、内容は、総論、医学的側面、微生物学的側面、サーベイランス手法、実地調査手法、実地対策、予防、治療とし、各専門家に検討を分担させた。不明疾患のひとつとして、天然痘、炭疽、ボツリヌス毒素など一般になじみがなくバイオテロによるものも想定される疾患についても検討を行った。③ 米国の122都市死亡システムのような、死亡数を迅速に把握するシステムの作成が本邦で可能かどうかを検討した。④上記により検討されたネットワークおよびマニュアルを実用性の検討のため、本邦の保健医療従事者や海外の専門家とともにワークショップを開催し、discussionを行った。⑤最終的に作成した対応マニュアルを感染症発生動向調査基幹病院定点に配布し、同時にサーベイランスと早期通報のためのネットワーク構築の可能性を検討し、パイロット調査を行った。地域ごとの基幹病院定点を中心に不明疾患に関する情報を集約できるような体制を構築した。
結果と考察
包括的な感染症情報システムの構築について、いかに海外での感染症情報を効果的に収集・評価・広報できるか、あるいは地方衛生研究所とのネットワーク構築について研究してきた。また、諸外国でのサーベイランス体制を調査し検討するとともに、米国CDCとの協力により122都市死亡数報告システムに関する情報を収集し、検討をおこなった。国際保健規則の改定に伴う症候群方式によるサーベイランスの導入にあたり、全国13府県において、症候群アプローチの得失について検討した。またサーベイランス手法については、これまで国内外のサーベイランス体制、感染症情報収集、あるいは解析方法について研究を行い定点サーベイランスにおける定点設定或いは警報発生システムについての提言を行ってきた。
結論
診断名をつけることができない疾患について、サーベイランス手法、問い合わせに対する支援方法、対策を立案しこれをマニュアル化して、地域の基幹病院に配布、啓蒙することにより、一般には知られていない疾患の発生を早期 に探知し、問題が大きくなる前に対策を講じることが可能になると期待される。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)